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三十三歳、イケメン男子にご飯を奢るのが趣味になりました。  作者: 小笠原ゆか


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7/21

それはそれ、これはこれ

翌週は、二十二歳の男の子とスープカレーを食べに行った。

辛さを選ぶところで二人とも迷い、結局、私は無難な辛さにして正解だった。向かいの彼は汗をかきながら、それでもおいしそうに完食していた。


その次の土曜日は、大学時代からの友達とランチの約束があった。二年前に結婚している友達だ。


「この間さ、夫が急にカーテン洗い始めて」


パスタを巻きながら、彼女が言った。


「カーテン?」

「そう。天気いいからって。私、洗えることすら忘れてた」

「わかる。ずっと掛かってるものだと思ってる」


二人で笑った。洗濯が終わったら一枚だけ縮んでしまい、二人で交代しながら引っ張ってみたけれど、どうにもならなかったという。結局、その日は新しいカーテンを買いに行ったらしい。


「見慣れると気にならないよって言うんだよ。裾が浮いてるのに」

「言い出した本人が?」

「そう」


彼女は呆れたように笑い、パスタを口に運んだ。私は水を飲みながら、休日にカーテンを洗い、失敗して二人で買いに行くところを思い浮かべた。


話の中では大変そうだったけれど、何だか、いいなと思った。


「真帆は、最近どう?」

「元気だよ。仕事もまあまあ」

「恋愛のほう」


私はフォークを置いた。


「そっちは、特に」


答えてから、少し考えた。食事に行く男の子はいる。でも、彼女が聞いているのは、そういうことではない。


「誰か探したりは?」

「してないなあ」


彼女は頷いた。


「私も、会うのは会社の人ばっかりだった。紹介してもらわなかったら、たぶん今もそのまま」

「そうだよね。急に知り合いが増えたりしないものね」


ここ数年の自分を思い返す。仕事をして、友達と会って、一人で好きなことをする。最近は、若い男の子との食事という楽しみもできた。


特に、不満はない。でも、このまま過ごしていたら、来年もきっと同じことを言っている気がした。


「……私も、ちょっと探してみようかな」

「うん。いいんじゃない」


彼女は大げさに喜ぶでもなく、そう答えた。それからデザートのメニューを開く。


「私、チーズケーキにする。真帆は?」


私は反対側から覗き込んだ。


「ちょっと待って。プリンもある」

「さっき入口で見てたもんね」

「見てた」


ひとまず、目の前の二択から決めなくては。



*



帰宅して、お湯を沸かした。買ってきたお菓子を一つだけお皿に出し、ソファに座る。


スマホでマッチングアプリを検索すると、思っていたよりたくさん出てきた。違いがよくわからないので、いくつか説明を読み比べてから、一つ入れてみる。


生年月日、住んでいる地域、仕事。入力欄を順番に埋めていくうちに、結婚への意思を尋ねる項目が出てきた。


私は少し指を止めた。結婚式がしたいとか、何歳までに結婚したいとか、そういう希望はあまりない。


ただ、今日聞いたカーテンの話を思い出した。何でもない休日に、一緒に困ったり、笑ったりする相手。そういう人がいたら、嬉しいと思う。


私は、いい人がいれば結婚したい、という項目を選んだ。


写真を探すのには時間がかかった。料理だけの写真や旅行先の風景ばかりで、友達と撮ったものには、たいてい誰かの顔が近くにある。


ようやく一枚選び、プロフィールを読み返したところで、蓮くんから通知が来た。


『おねーさん、来月の最初の土曜は?』


カレンダーを開く。そこは、まだ空いている。


『大丈夫だよ』


返すと、すぐに次が来た。


『じゃあ、ご飯行こう』


私は笑って、予定を入力した。


蓮くんと食事。


それからアプリの画面に戻り、残っていた自己紹介文を考えた。


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