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今年の秋  作者: 紫丁香
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7/10

報連相

「報連相、」

「わかるか?」


睨まれている。


「背反行為である」


処分されかけてる。


「で、何が失敗なの?」


わかりません……


要するに、


「上津絵里」に出くわしたことを、

黙っていたのを 責められているのです。


「修行が足りねぇんじゃねぇか?」


「滝壺にでも突っ込むか」


武闘派は怖い……


「まぁ 当面の課題は、」

「『何が』失敗なのか?だね…」


「それしか、」

「言ってなかったのかい?」


傍の千歳に訊く。


小さく頷く。


一応は お泊まりして、

次の日に訪ねたのだが、


関係者 全員集めての、

深夜の再集結となった。


明日はシフトなんだけど。

千歳は貴重な休みなんだけど……


「当事者意識が足りんな」


「ヤベェ奴とは思ってたけど、」

「ほんとにヤベェ」


「話をまとめると」

「上津さんに惚れられちゃったの?」


そんなわけない、と思いたい。


千歳はブンブン首を縦に……


「本音はともかく、」

「目をつけられたのは確かだな」


「貴方達っつったんだよな?」


山田さんが凄む。


「俺が絡んでることなんて」

「…あの土地くらいしか」


「多分それではない」

「入れてくれ、」

「ということは、」

「手を出せないということだ」


「それが故、」

「揺さぶってる可能性は、」

「否めないがな」


「千歳を揺さぶる意味が、」

「わかりません」


「単に男湯に入れなかったとか」


所長…

まぁ 有り得るんだけど。

招かれないと入れない、ならね。


「最近の案件を検討し直すか」


「貴方達」が、

どこまでの範囲なのか。


「調査会社」全体を指すのか、

俺が絡んだものを指すのか。



「河童の里は、」

「ご苦労さまだったね」


何故か千歳に言う。


「里を救う、」

「は 仕事じゃないんですね」


「依頼があれば、だね」

「正直 何ともできないけど」


「で、どう?」

「まだこの会社 嫌いかな」


「社会の一員としては、」

「見過ごせないことも、」

「多々ありますけどね」


あるある。

どれだけ道を踏み外したか。


「犯罪組織じゃないことだけは、」

「わかりました」


「わかられた」


山田さんが笑う。


山田さんと千歳は、

あまり接点が無い。


「そこらのハンシャより、」

「ヤバい事するよ?」


「ええ、」

「今度はエージェントとして、」

「関わりたいです」


ええ!!!


何があった?

百八十度?


「周が関わるなら、」

「私も加わる」


「それに、」

「私も役に立てると思う」


「それはありがたいね」


「うむ、千歳殿の異能も稀有だからの」


だから 何で「殿」?


「それに、」

「……あの女近づけたくない」


!!


「それは当然」


「化かされっぱなしで、」

「腹立つしな」


山田さんが手をポキポキ鳴らす。


上津さん嫌われすぎでしょ……


「花畔が関わった案件、」

「と 限定するなら……」


「最近だと、正三さんと、」

「『津曲神社』?」


「河童の里が、」

「失敗と言われるとしたら、」

「どうなった時ですか?」


千歳がキリッとしてる。


「遺体を残せなかった、」

「が失敗じゃないかねぇ」


と所長。

なら それは除外ですね。


「なら、」

「神社かよ?」


「封印できたよな?はなちゃん」


「と、思います」

「鈍い俺でも 空気が変わったくらいは」


「オヌシに書かせた護符は、」

「間違いがない」

「書き損じてなければな」


そこは自信ないです。


「自信持てよ、」

「俺は目視で確認してる」


ただの猫又じゃなかった。



あ、と 千歳が手を上げる。


「アプリ」

「入れてもいいですよね?」


「それはもちろん」


と所長。


「こちらからお願いするよ」


……なんだろう。

この千歳のVIP待遇……


「当然だ」


「オヌシのように、」

「扱いにくい異能ではない」


「この仕事をするなら、」

「無限大の相性だ」


毎度ながら、

俺だけがわかってない。


「エンパスは強いよ」

「俺みたいな物理じゃないからな」


物理?

ああ、ぶん殴る系?


「私も『花畔さま』って言われた」


嬉しそう。


もしかして、

アプリも「いいなぁ」って、

思ってたとか?


うん。

千歳もわからない。

女心と秋の空。


長年一緒にいたけど、

アクティブな性格だとは思ってたけど、

こんなにノリノリ?


……有能さで負けそう。


「だがそれなら、」

「話が振り出しに戻るぞ?」


「だねぇ。失敗ねぇ」


「言っても、」

「『敵』の言うことですから……」


「だから、」

「真面目に考えてるんだよ」


と、山田さん。


「あいつみたいなのはな、」

「混ぜっ返して楽しんでるんだ」

「で、こいつに伝えてるんだよ」


と、千歳を指差す。


「操れない奴に、」

「わざわざ」

「情報流してるんだ」


「情報自体は本物なんだよ」


「そして、」

「対応してるこっちを、」

「観察してるんだ」


操れない?


「少なくとも、」

「彼女は操る事はあっても、」

「操られはしない」


「そういう能力だ」


ああ、わからん。

俺の嫁が遠くに行く……



……………………



全ては「意」だ。


「意思」あるところ、力有り。


結果を望め。


それが異能の使い方だ。


道仁さんが再三教えてくれた。


例えば、

「棒」で藪を開墾するのも、


物理じゃない。


道仁さんの、

『意』のまま になった結果だ。


俺の「意」のままとは?

千歳の「意」のままとは?


「周は『境界』を引いてるの」

「主に 自分の周りに」


千歳は、

俺のことがわかるらしい。


それが能力なのだろう。



……………………




「空転だな」


「うん、全然わかんないね」


「『調査会社』のやってる事が、」

「失敗って意味だったり?」


「あの人、壊したい願望あったし」


「いやピンポイントで、」

「やらかしてる事があるんだよ」


「わからんけどな」

「イライラするわ」


爪を噛む山田さん。

子供っぽいんだよな。


「最近は、」

「河童の里以外の、」

「死亡 ロンダリングあります?」


「ロンダリングじゃないってば」


「花畔と上津の邂逅 以降なら、」

「無いな」


「通常の手続きで入居している、」

「『感染者』ならおるぞ?」


「それはリストください」


それは大丈夫なの?


「予定待ち なだけだ」


予定。

前にも聞いた。


不穏な意味だと悟る。


「ケアしてるとは 思いますが、」

「通常の介護で 大丈夫なんですか?」


「予定待ちは『有料施設』に入ってる」

「迷惑はかけんよう、」

「監視してる」


それが嫌で、

怖いと、

言ってたんだけどな。


「仕組みがわかったなら、」

「積極的に関わった方が安心する」


そんなものなのか…


「封じが間に合っていないところで、」

「何かないのか?」


「今の所 大事にはなってないけどね」

「『賽の河原』はお手上げだけど」


所長が肩をすくめる。


「あそこは、」

「行かなきゃいいだけだぜ」


禁足地。


知らないだけで、

行っちゃいけないところって、

あるもんなんだな。


と、


また 心臓に悪いマナーモードが響く。


五人分。


誰かがアプリ入れると、

鳴る仕様なのか?


「決壊しただと?」


「決壊?」


「封じてたものが、」

「ダメになったと言う事だ」


「これ…」


アプリが示す地図を見て、

千歳が青ざめた。


「剣山温泉…」


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