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今年の秋  作者: 紫丁香
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14/16

地獄の釜

全ては「意(イ)」のままに。


「意思(イシ)」あるところに 力あり。


結果を望め。


………



千歳が手を握る。

握りしめる。


視界があの時のように変わる。


空間が拡がり、

レイヤーが増える。


街灯なんかない。

手持ちのライトしかない。


でも、見える。


遠目に、

山田さんが 本殿の扉を


…破壊するのが見える。


壊しちゃだめだろ。


あ 突入した。


!!


これが「噴き出す」か。


黒い煙だ。

粘った黒い煙だ。

煙の端から…何かに変わる。


ヤバくね?


「ヤバいのよ!」

「早くやって!」


お怒りだ……。


鳥居に線を引く……

どうやって?


「バリア!」

「もう境内ごとバリア張って!」


そういう事か。


なんというか、

包むイメージをしたら…

シャボン玉になった。


頼りないけどできた…かな?


「こっちのバリア消えた!」


へ?

あ、俺たちの周り?


必死で 周りを囲む…

イメージ…


スノードームの中?

みたいな感じ?


また シャボン玉が揺らぎそう。


「見えてるよね?」


「はい 見えます。」


「今のところ 防げてるけど…」

「私たち…」

「攻撃手段 ないよね?」


攻撃?


「このままだと…」

「結局 溢れる」


あの 猫又、

そこまで考えてないな…


「山田さんが、」

「さっさと」

「封印したら済む話?」


「そうだけど…」

「深い…」


穴の場所が遠いってこと?


「そう、」

「感じないかな?」


そういえば、

なんとなく地形が…


イメージ的に、

この 奥底の真っ黒い感じが

穴?


これは遠い。


「あ、あった」


「何が?」


「攻撃手段」

「『祓(ハライ)』の御札がある」


嫌な予感がする。


「何枚くらい?」


「二枚」


「…えーっと、」

「威力とか 火力とか、」

「言ってた?」


「『周囲の邪を祓う』って」


アバウト。


「……一枚」

「 いってみるか?」


俺の手を握りながら、

ポケットから御札を掴み、

何やら念を送ってる。


御札が 光る?


そして ポイっと。


スノードームをすり抜けて、

外の黒い煙に触れた途端、


ピシ


なんか空間に、

ヒビ入らなかった?


黒い煙が 煤になって落ちる…


「粗方 消えたねぇ」


「消えたなぁ」


思いのほかの威力。


本殿の入り口から、

さっきより濃い煙が噴き出す。


千歳が もう一枚を取り出す。


「待った!」


それ 切り札!


取っとけ!


キリがねぇ。

口調も荒くなるよ。


あんな 真っ黒の中、

山田さん 大丈夫なの?


「こりゃ持久戦だわ」


俺は 外側のシャボン玉に、

意識を向けてみる。


水風船程度には 厚くなったか?


スノードームも補強しなくちゃ。


見えるって素晴らしい。


…。


前言撤回。


怖いんだよ この煙。


なんで齧ってくんの?

なんなんだよ その顔。

生きてて 見た事ねぇよ。


スノードームの周り、

無数の顔だらけなんだけど…


「訊いていい?」


「何?」


「いつも こんなの見てるの?」


「こんなホラー映画みたいなの…」

「ないよ……」


涙目である。


「『光(コウ)』ってのもあるけど、」

「これは『怯ませる』だけみたい」


意味ねぇ。


「他に預かってない?」


「『封(フウ)』が二枚」

「『結(ケツ)』が三枚」


被ってんですよ。

俺と。


ねーこーまーたー!!


齧る顔が 凶悪さを増していく。

爪も生えた?


「うぅ」


千歳が口を押さえた。


「どうした?」


「濃くなってるの…」


確かに。

水墨画みたいだったのに、

ベタになってきた。


ガキン!


ビックリする。


え?刀 持った骸骨に、

斬り付けられてるんですけど。


スノードームに弾かれたみたい。


濃くなると、

この手の奴ら 具現化するの?

そんなの有り?


これは 不味い。


立て籠もってたって、

ジリ貧じゃないか。

…。


結果を望め…か。


試しに。

骸骨の腰骨辺りに、

指で線を引いてみる。


何もないわな…。


あ、

バリアのイメージか、


球だ。


骸骨の上半身を球で包む、


上半身が外れて、

下半身がこちらにぶつかってきた。

上半身がガシャンと落ちる。


いける!


けど、

死なねーじゃん。


スケルトンには意味ねぇ…。


「ぬらりひょん…」


どうした 千歳?


「ぬらりひょん みたいにして」


いや 本当にどうした?


真っ赤な目で見つめる。


「…『界』で、」

「包んで、」

「縮めて」


手をギュッと握って見せる。


縮める?

そんなことできるの?


「包んで、」

「包んだ方を消すの」


「あの時 やろうとしてた」


そうか、

分けて……消す。

なら、

骸骨全体を包む。


で、


「消滅」を、


望む。


縮んで消えた。

消えてしまった…


「まだ いる」


千歳の促すまま、

骸骨を包む。

包み続ける。


やっぱりキリがない。

体力じゃなく、


何かが減る。


「持たないよ、山田さん…」




おぉん!!




地響きが鳴る。


空間にヒビが入り、

黒い煙が煤になる…


具現化した化物も、

塵になる。


「もう『界』を解いてよいぞ」


鳥居に何やら貼りながら、


道仁さんが言う。


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