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今年の秋  作者: 紫丁香
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12/16

謎解き

「ヘタレ」


いや、


「何のための 囮作戦だよ」


一語一句 漏らすなというから、

記憶 捻り出したらこれだよ。


「なんちゅうか こう、」

「寝技で 情報取ってこいよ」


寝返っていいなら。


どこぞの007みたいな技、

持ってません。


結局、

報告はすることにした。


そしたら、

何故か 山田さんがいる…


「はじめちゃんは」

「経費精算だもんね」


神楽さんが お茶出してくれた。

地味に初めてかも。


はじめちゃん?


「この間の H市行き、」

「ずいぶん かかってるよねぇ」


所長が ため息をつく。


はい 稼がせてもらいました。


「待たせたかな」


書類棚の隙間から覗く、

道仁さん。


怖いわ その絵面。


てか、

みんな暇?


さて、


と道仁さんも交えて 検証する。


「怖いわねぇ」


神楽さんが お盆を抱えながら、


「全部 見られてるねぇ」


その通り。

出たワードは、


剣山

H市

伝言

結界


今頃 大変

望みは叶わない

…


「連れてくりゃ よかったんだよ」

「今度こそ…」

「確実に 心臓抜いてやる」


いやぁ…


「ここ アジト的な意味合い、」

「あったりしません?」


「まぁ 入れないよね」

「一応は 閉じてるよ うん」


と所長。


「場所はオープンだけどね」


ゆるい…


「千歳殿の言う通りだな」

「我々は 情報の扱いが雑だ」


山田さんが そっぽ向きながら、


「そんな なぁ、」

「スパイみたいな やり方」

「本部で たくさんなんだよ」


あれ?反省 どこに行った?


「本部は、」

「諜報機関の一種だと、」

「自分達を位置付けてるよ」


と所長。


「社外秘あるじゃん うちだって」


そうだよね。

何も 教えてもらえなかった。


「それは ど素人に教えても、」

「しゃーないからだろ?」


「混乱を避けるため だよ」


「この世の理を、」

「ほとんどの国民は知らん」

「知らせずに、」


「護ってきたんだ」



俺は この組織の歴史を知らない。


名前も、

「調査会社」としか 聞かされてない。


いつの間にか「うち」なんて、

一員になったつもりでいたけど、


俺は まだまだ「ゲスト」だ。


「こんにちは?」


千歳が書類棚の隙間から覗く。


彼女の方が「一員」っぽい。


「緊急というから…」

「どんな感じですか?」


道仁さんが、

そそくさ と椅子を用意する。


この人の 千歳への敬意って、

いったい…


ここまでの流れを 簡単に説明。

二の腕をつねられる。


「わかるのよ」

「その時 周がドギマギしてるの」


で、何に誘われたんですって?


無実です。

勘弁してください。

俺は 踏みとどまったんです。


これが いかんのか?


「確実に ここ最近の話ですよね?」

「失敗と言われてるのは」


千歳が切り替える。


神楽さんは 高速電卓に戻る。

そのビートは刻めない…


「でもよ、」

「剣山と H市…『津曲神社』か?」

「接点って 何?」


「琥穴だな」


今の所、

それしか連想できないですよね。


「今頃、大変…なのは どこですか?」


「さあ?」


首を捻る山田さん。


「遊びやがって…」


「剣山では 瘴気が漏れてるのは、」

「見えました」


千歳が 専門用語?


「『お墓の結界』から、」

「漏れてる感じでした」


「最悪は どういう想定ですか?」


「百鬼夜行だねぇ」


所長軽い。


え?イメージが湧かない。

バイオハザード?


「『地獄の釜が開く』というやつだ」

「わかりやすい現象だけ言うと、」

「乱世になるだろう」


わかりやすくない。


「『瘴気』ってのは、」

「なんかイメージ湧くだろう?」

「『悪い気』だ」


「主に『人の精神』を蝕む」

「『意』の理が崩れる」


だから、わかりやすくないってば。


千歳は納得してる…


「あの時、」

「『山ごと結界だ』と」

「言ってましたよね?」


「うむ、」

「あの結界が綻びたところで、」

「放置しなければ大事はない」


「そういう仕掛けだ」


「放置したら?」


「…酷く濃くなり、」

「やがて山も破る」


「それじゃないですか?」


それ?

どれ?


「『津曲神社』よ」


なんで?


「剣山の結界破りは、」

「言わば あちらの失敗」


「でも、」

「対処されるのは わかった上での」

「嫌がらせな感じ」


「いい見立てだな」


「こちらが『失敗してる可能性』は、」

「津曲神社」


と 千歳。


でも、結界はできたよ?

清々しくなったし。


山田さんが 難しい顔してるじゃん。


「所長よ」

「津曲神社の周辺地図とかねぇ?」


大捜索になった。


目隠しとしか思ってなかった、

書類棚が主役だ…



出てきたのは「古地図」だ。


全員、半信半疑だが…

紐綴じの破れそうなそれを、

慎重に開いてみる。


地形はそれっぽい。


側面の鳥居を抜け、

L字に参道を曲がり、


高台の、

第二の鳥居に向かう。


高台は意外と広い境内で、

奥に本殿があった。


その通りの地図だ。


「あん?」


と本殿の裏を指差す。


「ここ 書き方おかしくね?」


見ると、

本殿の裏が なんというか、

明確な境界なく 山に繋がる。


「本殿の裏に 何かあるのう」


「道仁は知らないのか?」


「済まぬ。ここまで把握しとらん」


想像するに、


「もしかしたら…」


「あん?」


「入口 塞いじゃっただけ?」


「入口 塞ぎに行ったんだよ」


「じゃなくて」

「ほら」

「さっき道仁さんが…」

「放置したら山も破られるって」


「だから、塞いだろ」


「塞いだから ダメなんですよ」


「『今頃、大変』…」


千歳が呟く。


「だから、」

「この奥に『元栓』があるんじゃ?」


全員の目が合う。


「符合するな」



想像でしかないけど。


つまり、


「津曲神社」は二重結界。


どこかに「元栓」と言える穴があって、

神社の構造で さらに塞ぐ。


剣山と同じ…


「…何日前だ?」


「十日くらいは経ってます」


ちっ!と 山田さん。


「何が親切心だよ」

「バカにしやがって」


「かなり 不味いな…」


「だねぇ」


「やり直したらいいのでは?」


素朴な疑問。


「簡単にいかねぇよ」


「塞いだのが仇になった」


またまたまた、

よく わかってない。


「濃くなってるのよ」


なんで千歳の方が理解あるのか…


「開けたら 大変…」


素朴な疑問 その二


「開けなきゃ 元栓閉められない、」

「ですよね?」


「だから難儀だと言ってる」


そういうの、

八方塞がりって言わない?


「はなちゃん 行くぞ」


「今からですか?!」


「待て待て」

「少し段取り組むぞ」


「だね 二人じゃ無理だよ」


「テメェのケツくらい拭くぜ」


「その段階ではない」

「落ち着け」


何より、


「この奥、みなさん知ってるんで?」


素朴な疑問 その三。


静まる。


「つまり、」

「謎のダンジョン?」


「そのゲーム脳 なんとかしろ」


「言ってる事は間違いではない」

「奥が どうなってるのか、」

「わからん…」


「なにせ、」

「歴史で言えば、」

「『剣山』より 少し若いくらいだ」


「これよ、」

「会社の調査不足じゃね?」


「面目ない」


あっさり?


「なんにせよ、」

「備えよう」

「大仕事になる」


千歳が手を上げる。


「同行できます?」


え?


「願ったりだが…」

「本職はいいのか?」


「今日…」


「長期休暇出してきました」


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