↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ばぐらび! from Bug&Lavi Project  作者: るーと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/91

断章

雨だった。


彼女は、走っていた。


傘もささずに、夜の街を。息が喉で焼けて、足がもつれる。それでも、止まれなかった。止まったら、追いつかれる。背中のすぐ後ろまで来ている、何かに。


崩れていく音が、する。


積みあげてきたものが、端から、ぼろぼろと。あんなに長い時間をかけて、信じて、疑いもしなかった、「うまくいくに決まってる」が。いま、音を立てて、崩れ落ちていく。


——うそだ。こんなの、うそだ。


濡れたアスファルトに、ネオンが、ぐにゃりと溶けてにじむ。赤も、青も、ぜんぶが流れて、形をなくしていく。世界が、まるで溶けていくみたいだった。それとも、溶けているのは、自分のほうだろうか。


それでも、手のなかには、ひとつだけ残っていた。


ちいさな、あの子。


長い夜をいくつもかけて、すこしずつ、かたちにしてきた、あの子。この子のことを思っていると、胸の奥があたたかくなった。——けれど。


会わせて、あげられなかった。


みんなに囲まれて、笑いかけられて、愛されて。そんな日が、当たり前に来ると、信じていた。約束した。きっと、みんな、好きになるよ、と。


なのに、その日は、来なかった。来る前に、ぜんぶ終わってしまった。この子は、だれにも知られないまま。生まれたのに、どこにも行けないまま。


「……ごめん、ね」


声が、雨にかき消される。


頬をつたうものが、雨なのか、そうでないのか。自分でも、もう、わからなかった。


彼女は、走る。あの子の顔から。果たせなかった約束から。崩れていく、自分の世界から。——逃げて、逃げて。


——その時。


行く手の闇が、ふいに、まばゆく白んだ。


何かが、まっすぐに、彼女へ向かってふくれあがる。逃げ場のない、純白の、ひかり。


それが、世界を、呑みこんで——


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本作はBug&Lavi Projectという創作群の一環として制作しています。 詳しくはこちら→Bug&Lavi Project公式サイト 関連する楽曲なども公開しております。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。