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動物たちの言葉がわかる獣医と動物たちの楽園  作者: 1010
第2章 「おはようございます」が言える日々

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「迷い込んだキツネ」 第3話(夜)「遠回りが、その子の近づき方」

片付けをしながら——


ミナは——今日のことを——


思い返していた。


あのキツネのことが——


頭から——離れなかった。


朝——扉の前で——何度も——止まっていた。


入ってきた時も——壁沿いに——遠回りして——来た。


でも——昼には——少しだけ——真正面から——来られた。


その変化が——なんとなく——胸に——残っていた。


「先生」


ミナが——モップを——止めて——言った。


「はい」


「今日の——キツネのことなんですけど」


「はい」


「朝——扉の前で——何度も——止まってましたよね」


「そうですよ」


「入ってきた時も——遠回りして——来ましたよね」


「そうですよ」


「でも——ちゃんと——来ましたよね」


「来ましたよ」


先生が——カルテを——閉じながら——聞いた。


「何か——気づきましたか」


ミナが——少し——考えてから——言った。


「遠回りしても——来たことは——来たんですよね」


「そうですよ」


「真正面からじゃなくても——来たんですよね」


「そうですよ」


「それが——その子の——近づき方だったんですよね」


「そうですよ」


ミナが——窓の外を——見た。


「先生——キツネさん——何て——言ってましたか」


「遠回りが——自分の——近づき方だと——気づいたと——言っていました」


ミナが——止まった。


「遠回りが——近づき方——ですか」


「そうです」


「近づきたいのに——真正面から——行けなくて——恥ずかしかったんですよね」


「そうです」


「でも——遠回りしながらも——近づきたいという——気持ちは——本物だったんですよね」


「そうですよ」


ミナが——少し——俯いた。


「……分かる気がします」


「何がですか」


「私——最初——ここに——来た時——先生に——なかなか——話しかけられなかったんですよ」


「そうですか」


「動物の言葉が——聞こえないから——何か——言ったら——迷惑かなって——思って」


「はい」


「だから——なるべく——後ろの方で——作業してたんですよ」


「そうでしたね」


「でも——それが——遠回りでしたかね」


先生が——穏やかに——笑った。


「そうかもしれませんね」


「話しかけたかったのに——話しかけられなくて——後ろで——作業してた」


「でも——ちゃんと——ここに——いましたよね」


「いましたよ」


「それが——私の——近づき方でしたかね」


「そうかもしれませんよ」


ミナが——また——モップを——動かし始めた。


しばらく——静かだった。


「先生」


「はい」


「遠回りでも——近づこうとしていれば——いいですかね」


「いいですよ」


「真正面から——行けなくても——いいですかね」


「いいですよ」


「その子の——近づき方が——あるんですよね」


「ありますよ」


「キツネさんの——近づき方は——遠回りで」


「そうですよ」


「私の——近づき方は——後ろから——少しずつで」


「そうかもしれませんよ」


ミナが——小さく——笑った。


「どちらも——近づいていますよね」


「近づいていますよ」


「近づき方が——違うだけですよね」


「そうですよ」


ミナが——また——窓の外を——見た。


「先生——キツネさん——また——来ますかね」


「来ると——思いますよ」


「また——遠回りして——来ますかね」


「来るかもしれませんよ」


「でも——今日より——少しだけ——真正面に——近い——遠回りで——来ますかね」


先生が——穏やかに——笑った。


「そうかもしれませんよ」


「遠回りが——その子の——近づき方だから——ですかね」


「そうですよ」


「遠回りしながら——少しずつ——真正面に——近づいていくんですよね」


「そうですよ」


ミナが——また——小さく——笑った。


「私も——少しずつ——真正面に——近づいていきますね」


「いいですよ」


「遠回りしながら——ですけど」


「いいですよ」


「それが——私の——近づき方ですから」


先生が——静かに——笑った。


「そうですよ」


診察室の——電気を——消した。


今日も——終わった。


ミナは——扉を——閉めながら——思った。


遠回りしても——近づこうとしていれば——いい。


真正面から——行けなくても——いい。


その子の——近づき方が——ある。


私の——近づき方も——ある。


遠回りしながら——少しずつ——真正面に——近づいていく。


それで——いいんだ。


今日——キツネが——教えてくれた。


「おつかれさまでした」


「おつかれさまです」


二人の声が——夜の——駐車場に——響いた。


今日も——遠回りしながら——少しだけ——近づいた日だった。

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