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動物たちの言葉がわかる獣医と動物たちの楽園  作者: 1010
第2章 「おはようございます」が言える当たり前な日々

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「一匹でいるのが好きなスノーレオパード」 第1話(朝)「寄ってこないんです」

「おはようございます!」


ミナの声が診察室に響いた。


「おはよう」


サクラギ先生はコーヒーを置きながら穏やかに返した。


今日の朝は少し静かだった。


扉が開いた。


中年の男性が入ってきた。


キャリーケースを持っていた。


中から出てきたのは大きな猫だった。


白くて灰色の模様が美しかった。


スノーレオパードだった。


「珍しいですね」


ミナが思わず言った。


「そうなんですよ」


男性が苦笑いした。


「体は大丈夫そうなんですけど」


「はい」


「なんか気になることがあって」


「どんなことですか」


男性が少し考えてから言った。


「この子——寄ってこないんですよ」


「寄ってこない——ですか」


「そうなんです——呼んでも来なくて」


「はい」


「なでようとすると——よけて」


「よけるんですか」


「そうなんです——嫌われてるのかなって」


スノーレオパードが診察台の上に乗った。


でも端の方だった。


先生から——遠い方だった。


「こんにちは」


先生が穏やかに言った。


スノーレオパードが先生を見た。


でも近づかなかった。


端の方に座ったまま見ていた。


「こちらに来ますか」


スノーレオパードが少し間を置いた。


「……今はここにいます」


「ここにいますか」


「……ここから見ていたいんです」


「見ていたい——ですか」


「……近づかなくても——ここにいていいですか」


先生が穏やかに言った。


「いていいですよ」


スノーレオパードが少し耳を動かした。


「……近づかないのは——嫌いだからじゃないですよ」


「そうですか」


「……一匹でいるのが好きなだけで」


「一匹でいるのが好き——ですか」


「……そうです——でも」


「でも——ですか」


「……寂しいと思われるのが嫌で」


先生が静かに聞いた。


「寂しいと思われるのが嫌——ですか」


「……一匹でいると——寂しそうって言われることがあって」


「そうですか」


「……寂しくないんですよ」


「寂しくないんですね」


「……一匹でいるのが好きなだけで」


「好きなだけで——寂しいわけじゃないんですね」


「……そうです」


ミナが先生に小声で聞いた。


「何て言ってるんですか」


「一匹でいるのが好きなだけで——寂しいわけじゃないと言っています」


ミナがスノーレオパードを見た。


端の方に座っていた。


でも診察室の中にいた。


遠くにいるけど——ちゃんといた。


「先生——端にいるけど——ちゃんといますよね」


「そうですよ」


「近づかないけど——いるんですよね」


「そうです」


「それで——いいんですよね」


「いいですよ」


ミナがスノーレオパードに向けて小さく言った。


「そこにいていいですよ」


言葉は届かないかもしれなかった。


でもなんとなくそう言いたかった。


スノーレオパードがミナを見た。


近づかなかった。


でも——見ていた。


それが返事のように見えた。

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