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動物たちの言葉がわかる獣医と動物たちの楽園  作者: 1010
第2章 「おはようございます」が言える当たり前な日々

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「隙間で、まだ動けないデグー」 第3話(夜)「まだ動けないだけで、ちゃんとここにいる」

片付けをしながら——


ミナは——壁と棚の——隙間を——


何度も——見ていた。


デグーが——まだ——いた。


朝から——ずっと——いた。


動かなかった。


でも——ちゃんと——いた。


夕方——飼い主の——男性が——迎えに——来た。


「出てきましたか」


「……まだです」


「そうですか」


男性が——隙間を——覗いた。


「ただいま」


デグーが——少し——動いた。


「……おかえり」


「出てこられそうですか」


「……もう少し——だけ」


「いいよ——待ってるよ」


男性が——椅子に——座って——待ち始めた。


しばらくして——デグーが——隙間から——出てきた。


ゆっくりと——出てきた。


男性の——膝の上に——乗った。


「……出てこられました」


「出てこられましたね」


「……ありがとうございました」


先生が——穏やかに——笑った。


「また——動けない日が——来たら——来てください」


「……来ていいですか」


「いいですよ」


二人が——帰っていった。


診察室が——静かになった。


ミナが——壁と棚の——隙間を——見た。


もう——誰も——いなかった。


でも——なんとなく——まだ——誰かが——いる気がした。


「先生」


ミナが——モップを——止めて——言った。


「はい」


「デグーさん——帰りましたね」


「そうですね」


「一日中——隙間に——いましたよね」


「そうですよ」


「でも——なんか——ここに——残ってる気がして」


先生が——カルテを——閉じながら——聞いた。


「何が——残っていますか」


ミナが——少し——考えてから——言った。


「安心感——ですかね」


「安心感——ですか」


「動けなくても——ちゃんと——ここにいると——いう感じが——残ってて」


「そうですか」


「動かなかったのに——ちゃんと——いたんですよね——あの子」


「そうですよ」


ミナが——また——隙間を——見た。


「先生——デグーさん——何て——言ってましたか」


「動ける体なのに——動けない自分が——恥ずかしいと——言っていました」


ミナが——止まった。


「恥ずかしい——ですか」


「そうです」


「動ける体なのに——動けないから——恥ずかしいと——思っていたんですね」


「そうです」


「でも——先生は——何て——言ったんですか」


「動ける体と——動けない気持ちは——別だと——言いました」


ミナが——少し——俯いた。


「……分かる気がします」


「何がですか」


「私も——動けない日が——あるんですよ」


「そうですか」


「体は——大丈夫なのに——なんか——動けない日が——あって」


「はい」


「そういう日は——情けないと——思っていたんですけど」


「はい」


「動けない日も——必要なのかもしれないですね」


先生が——穏やかに——頷いた。


「そうかもしれませんよ」


「動けない日が——あるから——動ける日が——ありがたいですよね」


「そうですよ」


ミナが——また——モップを——動かし始めた。


しばらく——静かだった。


「先生」


「はい」


「デグーさんが——一日中——隙間に——いたのに——診察室の——空気が——変わらなかったんですよ」


「そうですね」


「動かなかったのに——ちゃんと——ここにいた気がして」


「そうですよ」


「まだ——動けないだけで——ちゃんと——ここにいるって——感じで」


先生が——静かに——言った。


「そうですよ」


「まだ——動けないだけで——ちゃんと——いるんですよ」


「動けないことと——いないことは——違いますよ」


ミナが——止まった。


「……動けないことと——いないことは——違う——ですか」


「そうですよ」


「まだ——動けないだけで——ちゃんと——いる——ですか」


「そうですよ」


ミナが——小さく——笑った。


「私も——動けない日は——まだ——動けないだけで——ちゃんと——いていいですかね」


「いていいですよ」


「動けなくても——ちゃんと——ここにいていいですかね」


「いていいですよ」


ミナが——また——隙間を——見た。


誰も——いなかった。


でも——安心感が——残っていた。


まだ——動けないだけで——ちゃんと——ここにいる。


その感覚が——診察室に——残っていた。


「先生——デグーさん——また——来ますかね」


「来ると——思いますよ」


「また——隙間に——入りますかね」


「入るかもしれませんよ」


「でも——今日——動けなくても——いいと——分かりましたかね」


「分かったと——思いますよ」


「次は——少しだけ——早く——出てこられるかもしれませんね」


先生が——穏やかに——笑った。


「そうかもしれませんよ」


「動けない日が——あっても——いいと——知っているから——ですかね」


「そうですよ」


ミナが——小さく——笑った。


診察室の——電気を——消した。


今日も——終わった。


壁と棚の——隙間が——暗かった。


でも——なんとなく——温かかった。


まだ——動けないだけで——ちゃんと——ここにいる。


その感覚が——まだ——残っていた。


「おつかれさまでした」


「おつかれさまです」


二人の声が——夜の——駐車場に——響いた。


今日も——動けなかった何かが——ちゃんと——ここにいた日だった。

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