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動物たちの言葉がわかる獣医と動物たちの楽園  作者: 1010
第2章 「おはようございます」が言える当たり前な日々

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「隙間で、まだ動けないデグー」 第1話(朝)「今日は、まだ動けないです」

「おはようございます!」


ミナの声が——診察室に——響いた。


「おはよう」


サクラギ先生は——コーヒーを——置きながら——穏やかに——返した。


今日の——朝は——少し——静かだった。


扉が——開いた。


若い——男性が——入ってきた。


キャリーケースを——持っていた。


でも——ケースの——扉が——開いていた。


中に——何も——いなかった。


「あの——すみません」


男性が——困った顔をした。


「ケースから——出てしまって」


「どこへ——行きましたか」


「……たぶん——そこに」


男性が——壁と——棚の——隙間を——指さした。


ミナが——覗いた。


暗かった。


でも——何かが——いた。


小さくて——丸い——目が——見えた。


デグーだった。


「こんにちは」


ミナが——小さく——言った。


デグーは——動かなかった。


先生が——隙間の前に——しゃがんだ。


「こんにちは」


デグーが——少し——動いた。


「……こんにちは」


小さな——声だった。


「そこに——いるんですね」


「……います」


「出てきますか」


「……今日は——まだ——動けないです」


先生が——静かに——聞いた。


「まだ——動けない——ですか」


「……はい」


「体が——痛いですか」


「……痛くないです」


「怖いですか」


「……怖くは——ないですけど」


「でも——動けない——ですか」


「……動けないです」


先生が——穏やかに——頷いた。


「動けなくて——いいですよ」


デグーが——少し——止まった。


「……動けなくて——いいですか」


「いいですよ」


「……出てこなくて——いいですか」


「今日は——いいですよ」


「……そこに——いていいですか」


「いていいですよ」


ミナが——先生に——小声で——聞いた。


「何て——言ってるんですか」


「今日は——まだ——動けないと——言っています」


「動けない——ですか」


「体は——大丈夫そうですよ」


「でも——動けないんですね」


「そうです」


ミナが——また——隙間を——覗いた。


小さな——丸い目が——こちらを——見ていた。


怖そうでは——なかった。


ただ——動けなかった。


「先生——動けない時って——ありますよね」


「ありますよ」


「体は——大丈夫なのに——動けない時って——ありますよね」


「ありますよ」


男性が——心配そうに——言った。


「いつも——こんな感じで——困ってて」


「突然——動けなくなって——隙間に——入ってしまって」


「そうですか」


「どのくらい——続きますか」


「……その時によって——違うんですけど」


「今日みたいな日は——半日くらい——そこに——いることも——あって」


先生が——穏やかに——言った。


「半日——いていいですよ」


男性が——少し——驚いた顔をした。


「……いいんですか」


「いいですよ」


「……無理に——出さなくて——いいですか」


「いいですよ」


「……そこに——いさせてあげて——いいですか」


「いいですよ」


男性が——少しだけ——安心した顔をした。


「……ありがとうございます」


「無理に——出そうとしていたから」


「そうですか」


「……出てこないのが——心配で——つい——引っ張り出そうとしてしまって」


先生が——静かに——言った。


「出てくるまで——待っていいですよ」


「……待っていいですか」


「いいですよ」


デグーが——隙間の中から——男性を——見た。


「……待っていてくれますか」


先生が——デグーに——向けて——言った。


「待っていてくれますよ」


「……出てこなくても——ですか」


「出てこなくても——待っていますよ」


デグーが——また——小さく——丸まった。


隙間の中で——静かに——いた。


動かなかった。


でも——ちゃんと——いた。


ミナが——隙間を——もう一度——見た。


暗かった。


でも——小さな——丸い目が——見えた。


まだ——動けない。


でも——ちゃんと——いる。


それだけで——十分だった。

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