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動物たちの言葉がわかる獣医と動物たちの楽園  作者: 1010
第2章 「おはようございます」が言える当たり前な日々

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「山に帰れない熊」 第3話(夕方)「いつか、山に帰る日のために」

夕方だった。


楽園の——


空が——オレンジ色に——なっていた。


熊は——楽園の——真ん中に——座っていた。


足を——伸ばして——空を——見ていた。


サクラギ先生が——来た。


「足を——診せてもらえますか」


「……どうぞ」


先生が——丁寧に——足を——診た。


「少しずつ——よくなっていますよ」


「……そうですか」


「時間は——かかりますが」


「……山に——帰れますか」


先生が——穏やかに——言った。


「帰れますよ」


「……本当ですか」


「本当ですよ」


熊が——低く——うなった。


「……よかった」


しばらく——静かだった。


熊が——楽園を——見回した。


亀が——いた。


うさぎが——いた。


タヌキが——顔を——出していた。


鳥が——翼を——動かしていた。


「……ここは——不思議な場所だ」


先生が——聞いた。


「どう——不思議ですか」


熊が——少し——考えた。


「……檻が——ない」


「そうですね」


「……来た時——てっきり——檻に——入れられると——思っていた」


先生が——静かに——聞いた。


「なぜですか」


「……人間に——捕まると——檻に——入れられることが——多かったから」


「……山を——下りてきた時——また——そうなると——思っていた」


「でも——檻は——なかった」


「ありませんよ」


熊が——また——楽園を——見回した。


「……いつでも——外に——出られますか」


先生が——穏やかに——言った。


「出られますよ」


「……ケガしていても——ですか」


「ケガしていても——出られますよ」


「……ケガが——治っても——治らなくても——ですか」


「どちらでも——出られますよ」


熊が——低く——うなった。


「……檻じゃないんですね」


「違いますよ」


「……ここは——閉じ込める場所じゃないんですね」


「そうですよ」


熊が——また——空を——見た。


「……外に——いつでも——出られる場所で——休んでいていいんですね」


「いていいですよ」


「……それが——すごく——安心しました」


ミナが——隣で——聞いていた。


熊の言葉は——聞こえなかった。


でも——熊が——楽園を——見回す目が——さっきと——違った。


緊張が——抜けた目だった。


「先生——熊さん——何て——言ってましたか」


「檻じゃないと——分かって——安心したと——言っていました」


ミナが——止まった。


「……檻じゃないと——分かって——ですか」


「そうです」


「来た時——檻に——入れられると——思っていたそうです」


ミナが——少し——俯いた。


「……そうですよね」


「人間に——捕まると——そうなることが——多いから」


「そうですね」


「でも——ここは——違う」


「そうですよ」


「いつでも——外に——出られる」


「そうです」


ミナが——また——熊を——見た。


大きな体が——オレンジ色の——光に——照らされていた。


足を——伸ばして——空を——見ていた。


緊張していなかった。


「先生——楽園って——そういう場所なんですね」


「どういうことですか」


「閉じ込める場所じゃなくて——いつでも——出られる場所」


「そうですよ」


「だから——安心して——いられるんですね」


「そうですよ」


亀が——熊に——近づいた。


「今日も——いい天気でしたね」


「……そうだな」


「明日も——いい天気だと——いいですね」


「……そうだな」


「足が——治るまで——ゆっくりしていてくださいね」


熊が——低く——うなった。


「……ありがとう」


「……ここは——いつでも——出られるんですよね」


亀が——ゆっくりと——頷いた。


「そうですよ」


「……でも——しばらく——いてもいいですか」


「いていいですよ」


「……山に——帰れるようになっても——また——来ていいですか」


「来ていいですよ」


熊が——小さく——息を——吐いた。


長い——息だった。


山から——下りてきた時から——溜めていたものが——少しずつ——出ていくような——息だった。


檻じゃない。


いつでも——出られる。


それだけで——十分だった。


ミナが——その息を——聞きながら——思った。


閉じ込めない場所だから——安心して——いられる。


いつでも——出られるから——いていられる。


それが——楽園の——本当の意味なのかもしれない。


「先生」


ミナが——小さく——言った。


「はい」


「楽園って——いつでも——出られる場所だから——楽園なんですね」


先生が——穏やかに——笑った。


「そうかもしれませんね」


楽園が——静かになった。


熊が——楽園の——真ん中で——空を——見ていた。


大きな体が——そこにあった。


檻じゃない場所で——足を——伸ばしていた。


それだけで——十分だった。


「おつかれさまでした」


「おつかれさまです」


ミナと——先生の——声が——楽園に——響いた。


熊が——低く——うなった。


それが——お疲れ様に——聞こえた。

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