表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
動物たちの言葉がわかる獣医と動物たちの楽園  作者: 1010
第2章 「おはようございます」が言える日々

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

126/153

「離しちゃダメな子」 第3話(夜)「一人っ子には、分からない世界」

片付けをしながら——


ミナは——今日のことを——


思い返していた。


ドリちゃんと——ブロちゃんのことが——


頭から——離れなかった。


数分——離れるだけで——体調を——崩してしまう。


ずっと——一緒にいた——二匹。


一人の——自分が——分からない——二匹。


「先生」


ミナが——モップを——止めて——言った。


「はい」


「今日の——ドリちゃんと——ブロちゃんのことなんですけど」


「はい」


「数分——離れるだけで——体調を——崩すんですよね」


「そうですよ」


「それって——どういうことなんですかね」


先生が——カルテを——閉じながら——言った。


「ずっと——一緒にいたから——一人の——自分が——分からないんだと——思いますよ」


ミナが——少し——黙った。


「一人の——自分が——分からない——か」


「そうです」


「先生——二匹——何て——言ってましたか」


「ブロがいると——全部——分かると——言っていました」


「全部——分かる——ですか」


「そうです」


「一緒にいると——全部——分かるんですね」


「そうですよ」


ミナが——窓の外を——見た。


「先生——私——一人っ子なんですよ」


先生が——ミナを——見た。


穏やかな——目だった。


「そうですか」


「だから——今日の——二匹が——なんか——不思議で」


「不思議——ですか」


「数分——離れるだけで——体調を——崩すって——私には——分からなくて」


「そうですか」


「一人でいることが——当たり前だったから」


「はい」


「誰かと——ずっと——一緒にいることが——どういうことか——分からなくて」


先生が——穏やかに——聞いた。


「一人でいることは——どうですか」


ミナが——少し——考えた。


「……慣れてます」


「慣れている——ですか」


「一人が——当たり前だったから」


「でも——寂しくなかったですか」


ミナが——少し——間を——置いた。


「……寂しかった時も——ありましたよ」


「そうですか」


「でも——一人でいることが——普通だったから——寂しいと——気づかなかった時も——あって」


「そうですか」


「ドリちゃんと——ブロちゃんは——逆なんですよね」


「どういうことですか」


「一緒にいることが——普通だったから——一人が——分からない」


「私は——一人が——普通だったから——一緒が——分からない時が——あった」


先生が——静かに——頷いた。


「正反対ですね」


「正反対ですよ」


「でも——どちらも——自分の——当たり前ですよね」


「そうですよ」


ミナが——また——モップを——動かし始めた。


しばらく——静かだった。


「先生」


「はい」


「二匹——一人の——練習を——するって——言ってましたよね」


「そうですよ」


「一緒に——一人の練習を——するって——言ってましたよね」


「そうですよ」


「なんか——かわいいですよね」


「そうですね」


「一人じゃないから——一人の練習が——できるんですよね」


「そうですよ」


ミナが——小さく——笑った。


「私——逆の練習が——必要ですかね」


「逆の練習——ですか」


「誰かと——一緒にいる——練習」


先生が——穏やかに——笑った。


「そうかもしれませんね」


「でも——ここに——来てから——少しずつ——できてきた気がしますよ」


「そうですか」


「先生と——毎日——おはようございますって——言えてるから」


「そうですね」


「それが——一緒にいる——練習でしたかね」


先生が——静かに——笑った。


「そうかもしれませんよ」


ミナが——また——窓の外を——見た。


「先生——ドリちゃんと——ブロちゃん——また——来ますかね」


「来ると——思いますよ」


「一人の練習——できるように——なりますかね」


「少しずつ——なると——思いますよ」


「でも——ずっと——一緒にいても——いいですかね」


先生が——穏やかに——言った。


「いいですよ」


「一緒にいることが——二匹の——形ですから」


「一人の練習も——しながら——でも——一緒にいてもいいんですね」


「そうですよ」


ミナが——小さく——笑った。


「私も——一人でいながら——でも——誰かと——一緒にいていいですかね」


「いていいですよ」


「一人が——当たり前だったけど——誰かと——一緒にいることも——覚えていいですかね」


「覚えていいですよ」


診察室の——電気を——消した。


今日も——終わった。


ミナは——扉を——閉めながら——思った。


一人が——当たり前だった。


でも——ここに——来てから——毎日——おはようございますを——言える人が——いた。


それが——一緒にいることの——始まりだったのかもしれない。


ドリちゃんと——ブロちゃんとは——全然——違う形だけど。


それが——私の——形だった。


「おつかれさまでした」


「おつかれさまです」


二人の声が——夜の——駐車場に——響いた。


今日も——一人だった何かが——少しだけ——一緒に——なった日だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ