「離しちゃダメな子」 第2話(昼)「一緒にいると、全部わかる」
ブロが——
いた。
それだけで——
よかった。
ブロが——隣に——いると——何でも——大丈夫だった。
ブロが——いないと——全部——不安だった。
生まれた時から——一緒だった。
最初の記憶から——ブロが——いた。
寒い時——くっついて——温まった。
怖い時——くっついて——安心した。
嬉しい時——一緒に——走り回った。
全部——一緒だった。
だから——ブロがいない時間が——分からなかった。
ブロがいない自分が——分からなかった。
今日——少しだけ——離れた。
ほんの——少しだけだった。
でも——怖かった。
体が——震えた。
お腹が——痛くなった。
食欲が——なくなった。
それが——三日前からだった。
ブロと——離れる時間が——少しずつ——増えていたから。
昼過ぎ——
二匹は——診察台の上に——くっついていた。
先生が——来た。
「どうですか——二匹とも」
ドリが——先に——言った。
「……ブロがいると——大丈夫です」
「大丈夫——ですか」
「……ブロがいると——全部——分かります」
「全部——分かる——ですか」
「……ブロがいると——怖くない」
「……ブロがいると——寒くない」
「……ブロがいると——何でも——大丈夫です」
ブロが——続けた。
「……私も——同じです」
「同じですか」
「……ドリがいると——全部——大丈夫です」
「二匹とも——同じですね」
「……同じです」
先生が——静かに——聞いた。
「一人でいる時間は——ありますか」
二匹が——顔を——見合わせた。
「……ないです」
「ずっと——一緒ですか」
「……ずっと——一緒です」
「一人でいると——どうなりますか」
ドリが——少し——俯いた。
「……怖いです」
「怖い——ですか」
「……体が——震えます」
「お腹が——痛くなります」
「……食欲が——なくなります」
先生が——穏やかに——聞いた。
「一人でいることが——怖いのは——なぜですか」
ドリが——少し——考えた。
「……一人の——自分が——分からないから——だと——思います」
「一人の——自分が——分からない——ですか」
「……ブロと——一緒の——自分しか——知らないから」
「一人の——自分が——どんなものか——分からなくて」
「だから——怖いんですよね」
ブロが——ドリに——くっついた。
「……私も——そうです」
「二匹とも——同じですね」
「……同じです」
「ずっと——一緒だったから」
「……ずっと——一緒だったから——分からないんですよ」
先生が——静かに——言った。
「一人でいることを——少しずつ——練習してみませんか」
二匹が——また——顔を——見合わせた。
「……練習——ですか」
「そうです」
「……一人でいる——練習ですか」
「そうですよ」
「……怖いです」
「怖くていいですよ」
「……少しだけ——ですか」
「少しだけで——いいですよ」
ドリが——ブロを——見た。
ブロが——ドリを——見た。
「……一緒に——練習しますか」
「……一緒に——練習しましょう」
「一緒に——一人の練習を——するんですね」
先生が——穏やかに——笑った。
「そうですよ」
ミナが——遠くから——二匹を——見ていた。
言葉は——聞こえなかった。
でも——二匹が——顔を——見合わせて——何かを——決めた顔が——見えた。
「先生——二匹——何か——決めましたか」
「一緒に——一人の練習を——することに——したそうです」
ミナが——少し——笑った。
「一緒に——一人の練習——ですか」
「そうです」
「なんか——かわいいですね」
「そうですね」
「一人じゃないから——一人の練習が——できるんですね」
先生が——穏やかに——頷いた。
「そうかもしれませんね」
ミナが——また——二匹を——見た。
くっついたまま——でも——少しだけ——離れようとしていた。
少しだけ——離れて——また——くっついた。
また——少しだけ——離れて——また——くっついた。
それが——練習だった。




