表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
動物たちの言葉がわかる獣医と動物たちの楽園  作者: 1010
第1章 はじまりの時期 ミナ登場

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/141

第100話「ここが、いつもの場所」

 朝はいつも通り。


「おはようございます」


 ミナが扉を開ける。


「おはよう」


 サクラギ先生もいつも通り。


 診察室は変わらない。


 棚の位置も、窓の光も、静かな空気も。


 でも、今日は少しだけ特別だった。


「先生、今日で100回目ですよ」


 ミナが少しだけ興奮気味に言う。


「そうか」


 サクラギ先生は淡々と答える。


 でも、目が少しだけ細まっている。


 最初の患者は、小さなフェレット。


 いつものように飛び回る。


(……たのしい!!)


「また暴れん坊だ」


 ミナが追いかける。


 サクラギ先生は静かに診る。


 次は老猫。


(……ここ、しってる)


 安心したように目を閉じる。


 続いてハムスター、インコ、犬。


 珍しい動物も普通の動物も。


 みんな、少しずつ違和感を持って来て、少しずつ解決していく。


 フェネックは砂を欲しがり、

フクロモモンガは高い場所を求め、

ミーアキャットは見張りを休みたがり、

カメレオンは色を決めかね、

ハチドリは止まる場所を探し、

コウモリは音の地図を直し、

カピバラはぬるい水に入り、

クラゲは流れに乗り、

ナマケモノは手の届く距離を、

アルマジロは開くタイミングを、

コアラは安心の形を、

それぞれ見つけて帰っていく。


 診察室はいつも通り回る。


 騒がしいのも、静かなのも、不思議なのも、普通のも。


 全部受け止めて、全部送り出して。


 夕方。


 最後の患者を見送る。


 扉が閉まる。


 静寂。


 ミナが診察室を見回す。


「……100回、全部この部屋で」


「うん」


「フェレットが飛び回ったり、インコがツッコんだり、クラゲがふわふわしたり」


 サクラギ先生は小さく笑う。


「全部覚えてるよ」


「ほんとですか」


「うん」


 窓の外は夕焼け。


 100日分の光が、積み重なっている。


 ミナがぽつりと言う。


「なんか、続いてよかったですね」


「そうだね」


「この仕事も、この場所も、この感じも」


 サクラギ先生は静かに頷く。


「変わらないのが、一番いい」


 診察台の上には、何も残っていない。


 でも、100回分の記憶がある。


 動物たちの声も、違和感も、解決も、日常も。


 全部、この小さな部屋に詰まっている。


「……次は101話ですね」


「うん」


「また何か来ますかね」


「来るよ」


 短い答え。


 でも、確信がある。


 この場所には、いつも何かが来る。


 そして、いつも何かが解決する。


 特別な100回目。


 でも、いつも通りの一日。


 それが、この診察室の形だった。


 夕暮れの光の中、

静かに、今日も終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ