100/144
第99話「もうひとりじゃない」
老猫が来た。
(……ここ、しってる)
ミナはもう迷わない。
「こんにちは。どうしましたか?」
自然に診察が始まる。
年齢相応の変化を確認。
「このままで大丈夫ですよ。前も来てますよね」
猫が目を細める。
(……だいじょうぶ)
「この場所、好きみたいです」
飼い主が驚く。
「そうなんですか?」
「はい。安心してる感じが伝わります」
サクラギ先生は診察室の隅で見ている。
声は出さない。
診察が終わる。
ミナが自然に言う。
「ありがとうございました」
扉が閉まる。
ミナが振り返る。
「どうでした?」
「君の診察だったよ」
サクラギ先生は静かに言う。
「いつからですか」
「最初から」
ミナは少し笑う。
「気づきませんでした」
「気づかなくていい」
窓の外。
明日は100話。
ミナは、もうひとりで診察室を回せる。
静かに、確実に。




