小鳥遊ショウ 二十五歳
“話しがある
公園でリョウくんと待ってる”
悠からのラインを確認して、僕は不穏なものを覚えた。
リョウが来てる?こんな時間に?
一体何事だろうと思うと怖くて、でも早く安心したくて駅からの道は早歩きになった。
「よ、お疲れ」
リョウは僕を認めると、軽く頭を下げる。良かった、いつものリョウだ。
隣に佇む悠は、いつもと違う雰囲気だった。
いつもは溌剌として、底抜けに明るい悠。その雰囲気が今は澱んでいる。
「悠ちゃん、なにかあったの?」
「ショウ……」
悠の瞳には涙がとめどなく溢れていた。僕は慌ててハンカチを取り出す。
「はい、悠ちゃん」
そのハンカチは、悠が一番最初に僕にくれた贈り物だ。悠もそれに気づいたらしい。
「……わたし、あの……」
「二人ともずっとここに居たの?寒くない?うちに上がろうか」
僕はこの期に及んで話を先延ばしにしたいらしい。それくらい怖かった。
「兄貴。まずは聞いてやれよ」
「……ごめん。悠ちゃん、何かあったの?」
「がんになった」
僕はポカンとした。日本語なのに意味がつかめない。
「子宮がん。転移してるかは、これからわかる」
「子宮がん……」
「子宮は多分全摘だって。子供はできない」
「ちょ、ちょっと待って悠ちゃん。なにがなんだか」
僕は話を止めるのに必死になった。頭が混乱している。
一番問い正したいのは、何故リョウが居るのか、だ。
「そんな目で見るなよ、俺だってなんでここにいるのか、よくわかんねぇよ」
目に出てたらしい。リョウが困惑気味にそう言ってくる。
「他に相談できる人いなくて……」
そして悠は、言い難いことを言う時の表情になった。
「わたしと、離婚して」
「なんでそうなるの?」
「ショウの未来を壊せないよ」
僕は混乱したまま、大切な一言だけ引っ張り出して悠に届けた。
「僕は、悠、きみを愛してる。だから離さない」
そしてリョウの目があるのも忘れて、強く悠を抱き寄せた。




