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小鳥遊リョウ 十八歳
高校生活最後の大イベント、卒業旅行の帰りの電車内。
俺の肩に頭を預けて、悠は眠っていた。
同級生は全員帰って行き、二人だけが残された。車内は夕焼けに包まれていた。
あたたかなオレンジ色。
悠の髪からいつもと違うホテルのシャンプーの匂い。そしていつも通りの柔軟剤の匂い。
不自然と自然が絡み合う空間。
世界に二人しかいないんじゃないかと思えるほど、綺麗な夕焼けが怪しく揺れる。
肩で感じる悠の体温に、俺はのぼせていた。
それは、ただ一瞬の触れ合い。
キスをした。唇が触れるだけの、優しいキス。
なんの罪もない。誰にも気付かれない、裁けない、俺だけの秘密。
悠は、終着駅まで起きなかった。
「楽しかったね、リョウくん」
そう動く悠の唇から、俺は目が離せなかった。
先程のキスが頭をよぎった。
「またみんなで遊ぼうね」
そう言って俺に手を振る、悠。
手を伸ばせば掴める距離に、その手はあった。
でも掴まない。掴めない。それは兄貴のものだからだ。
今更ながら、自分の侵した罪に俺は静かに侵食されていった。




