小鳥遊悠 二十三歳
面会時間は十四時から十八時迄、それでもショウは毎日面会に来てくれた。
フレックスタイム制を利用して朝早くに出社して、夕方十七時半ごろ顔を見せてくれる。
わたしは先日、子宮を全摘した。その辺りから、精神的に脆くなった気がする。
治療に終わりが見えないのも、あるかもしれない。
けれど、ショウとの三十分で泣くわけにいかなかった。
わたしが泣き暮らせば、ショウの今後の人生に支障が出るだろうとわかっていた。
代わりに支えになってくれたのが、リョウの存在だった。
夜中に泣き声で電話してから、弱音を吐きやすくなった。
消灯後。寂しくなると聞きたくなるのはショウの声で変わりないのに、わたしはリョウに電話をかける。
「……もしもし?」
「リョウくん、わたし。今平気?」
ガラガラと戸が開く音がする。ベランダに出たのだろうか?
「平気だけど。なんかあった?」
「リョウくん、わたし……」
電話した理由を問う。けれど答えはなかった。
「ショウに出会えて良かった。でも出会わなかったら良かった。そればっかり考えちゃうの」
「うん、そう」
「ねえ、夏祭り、楽しかったね。四人で行ったやつ」
「ん?そんなことあったっけ」
「あったよ、浴衣着てさ……」
わたしはあの日の自分の情緒不安定さを思い出す。
「あの日が、初めてだったんだ」
「なにが?」
「ショウとエッチしたの。浴衣着直すの大変だったんだから」
薄むらさき色の、トンボ柄の浴衣。ショウは紺の縦縞の浴衣。今でも覚えてる。
二人きりになって、甘く指を絡めて歩いて、適当なホテルに入って、息をするのも忘れて抱き合った。
なんで今になって思い出すんだろう。
もうこの身体には不要な感情なのに。
「わたしもう、誰にも抱かれずに死ぬのかな」
「兄貴がいるだろ」
「もう身体は女じゃなくなったのに?」
ポロリと涙が溢れる。
「悠はずっと、女だよ」
「リョウくんには、わかんないよ」
沈黙が落ちる。
「……ごめん、八つ当たり」
「いいよ。好きなだけ当たれよ」
「リョウくんはずっと、優しいね」
「だろ?」
「ありがとう、リョウくん」




