小鳥遊リョウ 十九歳
夏祭りなんて柄じゃないのに、悠にせがまれると断れない。
悠とショウ、俺と涼子で夏祭りダブルデートをする事になった。
俺と涼子は、なぁなぁに始まった割に長く続いていた。
でもいい加減マンネリしてきていて、大学で知り合った男に取られそうになっている。
その空気を知ってる悠が、マンネリ打破に!と力強く提案してきたのだ。
「涼子ちゃんの浴衣姿、楽しみね」
待ち合わせ場所に最初に着いたのは俺だった。次が悠。うす紫色の淡い浴衣で、儚げな雰囲気がいつもの悠と違った。
「何色の浴衣着て来るのかな?」
俺は適当に相槌を打つ。
「リョウくんもカッコいいよ、似合ってる、浴衣」
「あざーす。ショウのが似合うとか言うんだろ、どうせ」
「そりゃ、わたしの、彼氏は、別格ですから」
悠は嬉しそうだ。
「てゆーか、二人、なんでバラバラに家出たの?」
「さぁ、なんか寄るとこあるって言ってたよ」
「ふうーん」
喋っていると、涼子が来た。明るい水色の浴衣がよく似合っている。髪はアップにしたらしい。
「涼子!久しぶりぃ。後れ毛がエロいなぁ」
悠ははしゃいでいる。涼子も悠に会えて嬉しそうだ。
「リョウも浴衣、着たんだね」
「悠がうるせぇから、仕方なく」
程なくショウも合流して、四人で神社に向かって歩いていた。
「ねぇ、ショウ?待ち合わせ前にどこ行ってたの?」
「どこって、別に」
ショウはその問いにびっくりしたみたいだった。
「ふーん、言えないようなこと、してたの?」
悠の声に棘が混じるのを、俺はハラハラしながら聴いていた。
「そういうことじゃないけど」
「じゃあ、どういうこと?」
ショウは悠の声が大きくなるのに、焦っていた。
「悠ちゃん、どうしたの?大きい声出して」
「……わたし、帰る」
「へ?」
ショウは突然のことに唖然とした。
俺は思わず、早足で踵を返した悠の腕を掴んで引き止めた。
「離して」
悠は泣いていた。そして俺の腕を振り払うと、走り去った。
「ちょ、悠ってば!わたし、悠見てくる」
涼子は人混みに消えた悠を探しに二人から去っていった。
俺はショウに向き合って低い声でこう言った。
「奪うなんて言わないけど、泣かせ続けるなら、俺、あいつのそばから離れねぇから」
そして悠を追って走り出そうとした俺を、兄貴が止める。
「僕が行く。悠ちゃんは僕の彼女だ」




