紹介します
相変わらず人気のない公園のベンチに腰を下ろす。
珍しく、彼女の姿はまだなかった。
「――――…やあ、久しぶり」
彼女がやって来たのは、それから数分後。
のんびり歩きながら、へらりと笑った。
「久しぶり」の言葉に、少しだけ胸が痛む。
彼女は僕が来ない間もずっとここで待っていたのだろうか。
こんな寂しい場所で、1人で。
「…ごめん」
「ん?何が?」
「ここに来れなくて、ごめん」
「やだなあ気にしなくて良いのに。
たまには忙しい時だってあるよ。
私に君を束縛する権利なんてないんだしさ」
だから謝らないでよ。
本当に気にしていないように言うから、余計に僕は申し訳なくなってしまう。
そんな僕の心情を察したのか、彼女は「困ったなあ」と眉を下げて笑った。
「謝る代わりにさ、少し付き合ってほしいところがあるんだ」
「付き合ってほしいところ…?」
「うん、私の大切な人に会ってもらいたいの」
大切な人。
彼の事…だろうか。
「…分かった。
行くよ」
「ん!」
鼻歌混じりの彼女に連れられて到着したのは、
「…ここ?」
「そうそう。
ほら、早く早く」
何故、古書店へ…
もう営業時間も終わっているのに、彼女はドアを開けて中へと入ってしまった。
「おやヒムロ君。
いらっしゃい」
店主の温かい笑みに出迎えられる。
全く分からないまま、「どうも」と頭を下げた。
「ねぇ、ここが君の来たかったところ?」
「え、そうだよ。
で、この人が私が君に会ってもらいたかった人」
彼女が手で指し示す先には、店主しかいなくて。
「…は?」
「この人、私のお祖父ちゃんなの」
「!?」
店主の孫が彼女!?
ならつまり、今まで僕が貰っていた差し入れは、
「君、が…?」
「…うん。
ずっと黙っててごめん。
結果的に君を騙す形になった。
…だから、これでおあいこにしよう」
「…孫が世話になっているようだね。
お礼に美味しいお茶でもお出ししよう」
「ありがとうお祖父ちゃん。
――――…大丈夫?
ボーッとしてるけど」
大切な人に会わせたいと言われれば、恋人だと思うだろう。
「恋人?
いないよそんなのー。
…でも、」
「…でも?」
「好きな人ならいるよ。
とっても、優しい人なんだ」
彼女から差し出される飾り気のない地味なシャープペンシル。
「私は、君にもう1つだけ隠している事がある。
…私は以前、君に助けられたんだ」
あれは高校受験の時だったかな。




