吐き出せ、その心
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あの最悪の日から1週間以上たって、僕はまだ彼女に会えなかった。
…いや、会わなかったって言った方が正しいか。
何せ僕らの関係は名前も連絡手段も知らない、あの公園のベンチでしか約束出来なかったのだから。
また僕の生活は、大学へ行ってバイトして家に帰って眠る、以前のように戻っていった。
彼の事も、出来るだけ避けた。
授業開始直前に講義室に入り、終わればすぐに退室。
そんな事を10日程繰り返したある日、授業が終わって講義室を出る僕の前に、彼は現れた。
「ちょっと話あんだけど」
「…僕にはないよ」
「良いから。すぐ終わる」
相変わらず強引な彼に、あの明るい笑顔は見られなかった。
「――――…それで、話って何」
人が少ないという理由で連れられたのは、大学の裏側にある小さなカフェだった。
彼が1人で過ごしたい時に良く来る場所らしい。
「何で最近俺の事避けてんだよ」
カフェオレに口を付けながら、彼が言った。
彼の問いは最もだ。
「俺ら友達だろ?
何か言いたい事あるなら言えよ。
俺は何だって聞いてやる。
何だって受け止めてやる。
だから言え、お前が今思ってる事全部」
彼の真っ直ぐな瞳が苦手だった。
…僕の弱い部分も、見透かされそうで。
彼のスキンシップが苦手だった。
…触れたそこから僕の強がっている面が溶け出しそうで。
だけど、彼の誰にでも気さくなところは、嫌いじゃなかった。
「じゃあ、君の言う友達が君の恋人の事を好きだと言ったら、君はどうする」
「…は?」
彼が目を丸くさせる。
「以前話しただろう、気になってる人がいるって。
その人と君が仲良さそうにしているところを見てしまったんだ。
まさか、君と彼女が知り合いで、しかも付き合っているなんて思いもしなかった。
こんな感情、素直に言える訳ないだろう。
だから僕は彼女の事を諦めようとした。
そうして君たち2人の中から僕を消せば、全て上手くいくと思った」
「ちょっ、待て待て。
お前一体何の話を…」
「君に話した次の日だよ。
ショッピングモールでクレープを選んでいただろう」
「クレープ…
って、違ぇよ!!
アイツは彼女とかじゃねぇ!!」
ああもう何でこんな事に…!!
彼が頭を抱えながら呻いた。
「…お前今日アイツと会え。
そんでアイツの口から本当の事聞けよ。
その方が絶対上手くまとまる。
アイツには俺から言っといてやるから、お前はいつものとこで待ってるだけで良い」
良いな!?
絶対来いよ!?
来なきゃ一生付きまとってやるからな!?
カフェオレの代金をテーブルに置き、携帯を耳に当てながら店を出て行く彼。
一体何だったんだろう。
それに、彼女と会えって…
「こんな気持ちで…会える訳ないだろ…」
僕の小さな呟きは、僕の前に置かれた珈琲にしか聞こえなかっただろう。




