渡せなかった想い
翌日の土曜日、夕方からのバイトを控えて僕は普段滅多に来ない、大学近くのショッピングモールへ来ていた。
友人だったらしい彼のありがたい助言を受け、彼女へのお礼の甘味を購入するためだ。
バイト終わりにすぐ彼女に渡せば、きっと賞味期限の長さなど関係なく彼女はその場で完食するだろう。
あり得る想像に、僅かに口元が緩んだ。
「商品こちらになります。
ありがとうございました」
焼き菓子の詰め合わせを購入し、店を出る。
バイトに向かうにはまだ早い。
同じ階にあるらしいカフェで休憩する事にした。
「――――えー?
絶対こっちの方が美味しいって!!
見てよこのフルーツと生クリームの絶妙なバランス!!」
「アホか!?
量を考えろ量を!!
明らかにクリーム多過ぎだろうが!!」
カフェへ行く道にあるクレープ販売店。
そこで言い合っていたのは、
「…は…」
焼き菓子を渡す予定の彼女と、つい昨日その相談をしたばかりの、彼。
「じゃあ半分こしよう!
私フルーツ生クリームスペシャルにするから、君チョコ生クリームスペシャルにして、半分ずつ食べよう!」
「おー…
ってそれお前が選んだのよりハードル高いじゃねぇか!!
お前食いたいだけだろ!」
「チッ、バレたか」
「あーもう、すんません。
フルーツ生クリームスペシャルとツナサラダ1つずつ」
「何でツナサラダ!?
邪道だよ邪道!!」
「うっせ。
どうせお前甘いの飽きたって言い出すだろうが。
俺の心遣いに感謝しろよ」
ポンと彼女の頭に手を乗せる彼。
仲の良さそうな2人を見ていられなくて、
「ッ…」
僕はその場から逃げ出した。
「――――…ロ君…ヒムロ君?」
「ッ!!すみません、ボーッとしてました」
店主の呼び掛けにも気付かないなんて何をしてるんだ僕は…。
「何だか疲れているようだね。
今日はもう良いから帰りなさい。
後は私がやっておくよ」
「……すみません。
お先に失礼します」
彼女がいるはずの公園を通らずにアパートへ帰る。
彼女に渡すはずだったお菓子は、鞄の中に入ったままだった。




