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第1話:【初心者向け!】クレイドルオンライン基礎講座


「ゆったりレイカよ」

「まったりマナカだぜ」


「今日はクレイドルオンラインの初心者向けキャラビルドについて解説するわ」

「クレイドルオンライン、知ってるぜ。自由度がめちゃくちゃ高いオンラインゲームだよな?」


「そうね、このゲームは超高性能AI“メアリイ”によって構築、運営されている斬新なゲームよ。だからこそ人間では思い付かないような画期的なシステムが多く組み込まれているの」

「私もこのゲームをダウンロードしてみたが、キャラメイクの画面が煩雑でよく分からなくてすぐアンインストールしちゃったぜ」


「分かるわ。このゲームは1回ゴミ箱にぶち込むのが通過儀礼と言われているのよ。最初は小難しくてつまらなく感じるかもしれないけど、その自由度の高さに惹かれて何度も戻ってきてしまうのよね」

「前置きはこのくらいにして、そろそろキャラビルドの解説をお願いするぜ」


「まず前提として、クレイドルオンラインには経験値やレベルアップの概念は無いわ。その代わりに、“タレント”という要素でキャラを強化できるの」

「出たな、タレント。私もこれで困って辞めたんだぜ」


「タレントは英語で“才能”という意味の言葉ね。本作では“才能値”というコストを消費してタレントを習得することで強くなれるの。ただし才能値はキャラクターの初期作成時に平等に配られる『100ポイントまで』が上限となっていて、この上限を増やす方法は現状では殆ど存在しないわ」

「うーん、要するにこのゲームは努力で強くなれる訳じゃなくて、最初に選んだ才能で全部決まるってことだろ? そこまでは私もなんとなく理解してるんだが、どのタレントを習得すれば良いのかサッパリだったぜ」


「そうね。このゲームは初期キャラメイクの時点で1000種類を超えるタレントの中から自由に組み合わせて選ぶことができるし、ゲームが進むにつれてタレントの種類が増える事もあるわ。だから最初のうちから上限ギリギリまで才能値を使い切ってしまうと、後から新しいタレントを獲得できなくて困ることにもなるのよね。ここの選択を間違うとゲームがつまらなくなって、すぐにゴミ箱行きになってしまうわね」

「最初に選ぶ才能が一番大事だなんて、まるで現実みたいだぜ」


「という訳で、今回は初心者に向けてこれさえ取っておけば間違いない、汎用的で強力なタレントを紹介していくわ」

「お願いするんだぜ」


「まずは【屈強な肉体】ね! 才能値を20消費して獲得できるんだけど、その効果はHPと筋力に大きなボーナスを得るというもの。ハッキリ言って、最強のタレントね」

「そうか? 効果が地味であんまり強そうには見えないが」


「まず習得コストが20と少なめなのが優秀ね。他の強力なタレントは大体コストが25とか35とか重たい上に余計な端数がついてて、才能コストを圧迫するものが多いわ。なおかつ【屈強な肉体】は他のタレントと比較しても得られる効果が格段に大きいわ。これ以上にコスパの良いタレントは存在しないでしょうね」

「まぁ、HPと筋力ってどのゲームでも腐りにくいステータスだし、選んで損はなさそうだぜ」


「そして次に【〇〇の達人】ね。この〇〇には剣や槍など武器種の名前が入るわ。これも才能値20という少ないコストで、武器の適性を高めることができるの」

「武器の適性を高めるとどんな良いことがあるんだ?」


「その武器を装備した時に様々なボーナスが貰えるわ。剣だったら攻撃力が上がるし、杖なら魔法に関するステータスが全部上がるし、ナイフなら握ってるだけで足が早くなるわね」

「うーん。これも強そうだが……ゲームを始める前から一種類しか武器を持てなくなるのはかなり嫌だぜ。せっかく自由度が高いゲームで武器を縛るのはデメリットが大きい気がするぜ」


「これだけは覚えておいてマナカ。キャラビルドというのは基本的に何かに特化した方が強いわ。いくらゲームが自由だからと言ってあれこれタレントを取ってしまうと、器用貧乏なキャラになりがちよ。何よりクレイドルオンラインは仲間と協力することが前提のゲームなの。自分の役割をしっかりと決めておいて、それに徹するのが一番強いわ。少なくとも剣術に特化したキャラを作れば、剣の勝負であなたに勝てる相手は同じ剣術特化ビルド以外には居なくなるんだからね」

「そう言われるとそうだが、最初に言ってた自由度が高いのが魅力って話はどこに行ったんだ?」


「大丈夫、今紹介した2つのタレントを習得してもまだ才能値は60も残っているわ。これだけ余ってれば自分だけのオリジナル要素を入れるには十分よ」

「なるほど……ちなみに私は魔法使いのキャラを作りたいんだが、その場合でも【屈強な肉体】を習得しなきゃダメなのか?」


「その場合は【屈強な精神】という魔法使い版のぶっ壊れタレントが用意されてるわ。運営もこれらを初期タレントとして使うことを想定してそうね」

「初心者お断りなゲームかと思ってたが、意外と配慮があるゲームだったんだな」


「今回の解説が役に立ったって人は、高評価とコメントを是非よろしくね!」




 ──クレイドルオンライン、日本サーバー。

 弱小ギルド『マイン・マイナー』ギルドラウンジにて。


「……なぁこの動画どう思う? このクオリティで4万再生だってさ。言ってること滅茶苦茶だし、投稿者もエアプっぽくないか?」


 耳に小型の無線機を付け、丈の長い軍服を着た黒髪の青年らしきプレイヤーが、和室のちゃぶ台で頬杖を着きながら別のプレイヤーに映像を見せた。


「え〜。うーん。別に間違ったことは言ってないんじゃない? 少なくとも【屈強な肉体】と【剣の達人】さえ習得していれば、キミやボクよりはよっぽど強いビルドが出来上がりそうだけどね」


 そう答えるのは白いフードとマントを羽織り、露出の多いショートパンツを着用した、金髪くせ毛の女性プレイヤーだ。

 2人のプレイヤーの頭上には、同じギルドに所属していることが分かるマークと、プレイヤーネームが浮かんでいる。

 軍服のアタッカーらしきプレイヤーの名前はアイン。

 女性のヒーラーらしきプレイヤーの名前はフィーナだ。


「いくら何でもテンプレ構成すぎるだろ。こんな誰でも思いつく構成にしたら初心者なのがモロバレだし、戦略が単調になりすぎて対策もされやすくなる。PK勢の良いカモじゃないか?」


「このゲームにPK(プレイヤーキル)が無ければこんな構成でも良かったんだけどねぇ。人間と戦うことを想定するなら【屈強な肉体】はやめた方が良いよね。HPなんていくら上げたって負ける時は一方的にハメられて死ぬことが多いし」


「だよな。俺もこんなビルドの奴らと戦って負ける気がしない」


「うーん、どうかな? アイン君のビルドって本当に冗談みたいな構成だから、格下のプレイヤーにもあっさり負けかねないよ」


「変なタレント選んでるのはお前もだろ……」


「まーね、それがこのゲームの楽しい所だもん!」


 フィーナは満足そうな様子で、温和で人好きのする柔らかい笑みを浮かべた。

 この女がまさか野良パーティを組むたびに味方から壮絶なほど忌み嫌われている奇怪ビルドの地雷プレイヤーだとは、誰も思わなさそうな可愛らしい表情と声色だった。

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