名もなき反逆者たち
あの空が青かった時代を、僕は知らない。空は、トライレガシー電力部門「ヴォルタ・バイオニクス」によって汚された。この企業は、今から200年前、プラジオイドリアクターを開発した。革新的技術に世界が絶賛した。しかし、羨望と拍手の裏で、大量の有害物質、三窒化タングステンプラジウムが空気中へと放たれていった。その空気を吸うと、体が徐々に結晶へと置き換えられていく。そして、最後は体が完全に金属に置き換えられて死んでしまうのだ。トライレガシーか。そういえば、僕らの出会いも、三社連合がきっかけだった。あれは8ヶ月前、ちょうどアレクサンダー・クレイフォードから、その子ヴィクター・クレイフォードへと経営権が移譲されたときだった。トライレガシーは、大量のライフトークン、合計で全体の50%を失効させる、オプティマカットを実行した。通話越しに毎日笑い合った友人、親、自分さえも彼の指先一つで、電気、食料、水、全てを失い、もはや酸素を自由に吸う権利すらも失った。抵抗したものは、全て銃殺された。やがて抵抗をする人はいなくなった。しかし被害を受ける地域の声は届かず、ますます差が広がっていく。その日も、目の前でライフトークンの執行が告げられようとしていた。そして、見せしめに1人の子供に銃口が向けられた。助けたいが、なにをすることもできない。戦闘が苦手な僕が、あんなのに突撃しても何が変わると言うのだ。それに、ここを制圧したとしても、ライフトークンの失効は止められないんだ。でも。ここの人々は貧しいんだ。もしもライフトークンまで止められたら...すぐにでも死んでしまうかもしれない。でも僕が死んだら元も子もない。ここは空気になるんだ。目立たないように... 足は震えていた。前に出る理由は一つもなかった。それでも、気づいたら飛び出していた。世界を敵に回した瞬間だった。そしてこう叫んだ。ゼロ「や、やめろ!」マイク「ガキに手ぇ出してんじゃねえ!」ジン「童に刃を向けるな。」声が重なった。何だこいつらは、命が惜しくないのか?マイクは敵を薙ぎ倒しながら突撃していき、ジンは音を立てずに背後から切り倒していく。私はトライレガシー護衛ドローンにハックを仕掛ける。しかし、攻撃を命令する手が止まる。だめだ。押せない。僕にはこいつを、人を殺す覚悟が...ない。攻撃できずにためらっていると、敵が肉薄してきた。死を覚悟し、目を瞑った。生きている。よかった。ジン「何をぼんやりしている。死ぬぞ。」そうだ。ここはあそことは違うんだ。覚悟を決めないと。やがて、敵は全て倒れた。2人に目をやる。なんだ?このモヒカン男は。アサルトライフルはアキンボで持つものじゃないだろ。それになぜ笑顔なんだ。戦闘をしたと思えないほど、モヒカンは整っている。それにこっちも。こっちは...紙媒体で見たことがある。侍か?なぜこんな時代遅れな見た目をしている。剣なんかよりも、銃を持った方がよっぽど強いだろうに。マイク「お前ら、強えじゃないか!」ゼロ「...君たちは?」ジン「名前など気にしている場合ではない。離れるぞ」三人が肩を並べてその場から走り去っていく。後ろから、増援部隊が来るのが見える。もはやこれ以上戦闘しても、何にもならない。必死に逃げていると、街が光を失っていく。ホログラムも、ネオンも、街灯も、信号さえも。結局、ライフトークンを守ることはできなかった。マイク「...くそ。あんなに必死に助けたのによ...あのガキ、後何日生きられんだよ。」はっとした。ライフトークンを失うと言うのは、文字通り命を失うと言うことなのか。まだ甘かった。人は戦って死ぬんじゃない。この世界では、生きる権利を失うだけで死ぬんだ。ジン「どうしたのだ。こんなところで」まどろみから意識が引き戻された。ゼロ「なんだジンか。びっくりしたよ。ちょっと眠れなくてね。空を眺めていたんだ。僕が生まれる前、もっと昔は、何が見えていたんだろうね。」ジン「愚問だ。ここはアーク・ワン。居住衛星だぞ?空には虚像の空しか見えるわけがない。」ゼロ「.....地球ならーーいや、気にしないで」そうこうしているうちに、いつの間にか眠っていた。




