空を喰らうもの
ゼロが異変に気づいた瞬間、空気が「鳴った。」彼らが解放したばかりの透明な酸素が、上空の一点へと猛烈な勢いで吸い込まれていく。汚染された黒い瘴気が渦を巻き、その中心に虚空の形が浮かび上がる。 ゼロ「空気が...吸われている?」 マイク「くそ!せっかく解放した空気が!」 バリバリと空間が裂けるようなノイズとともに、ステルスが剥がれ落ちる。そこには、未だかつてないほどの規模の艦があった。パナケイアという社名が目を引く。ゼロ「トライレガシーの医療部門、パナケイアだ!」
巨大な吸気口が赤く点滅し、空気が吸い込まれていく。 マイク「おい....嘘だろ!せっかくみんなが息を取り返したっていうのに...」 地上の人々は、束の間の平穏を味わえたというような表情で再びヘルメットをつけ、重苦しい日常に戻った。あぁ、こうも簡単なものなのか。変革が、元あった形に戻るのは。 ジン「...空から落ちてきたか、エアリッパーだ。欲深いことだ。」 マイク「知ってるのか!?ジン!」 ジン「...かつて私が切り捨てたものたちの絶望を、あれが吸い上げるのを見た。...逃げるぞ、今の私たちには、あの恐怖の重さに勝てぬ。」 マイク「嘘だろ!お前何もしないでこのまま尻尾巻いて逃げろって言うのか!?下見てみろよ!俺たちはあいつらを助けるために来たんだぞ!」 ゼロ「そうだ...勝てなかったとしても、戦おうともせず、無理だと決めつけて尻尾を巻いて逃げることだけはしたくない。いくよ!」 ジン「...命令なら従う。」 マイク「Yeahhhh!!」 マイクの叫び声を皮切りに、私たちも後に続いていく。マイクの弾丸が空気を裂く。しかし、弾はなんともないように装甲に弾かれてしまった。ジンがマイクのバイクに飛び乗る。マイク「うぉわ!おい!危ねぇだろ!」ジンは気に求めず、刀をゆっくりと鞘から抜く。刃が青白い光を帯び始め、やがてぬき切ったというところ、敵との間合いが潰れる。青白い残像が、敵を横断する。艦は両断される...はずだった。ジン「刃が通らない。」何をしても、気にも留められない。艦にとって、私たちは排除すべき存在にすらなれないのだ。艦はただ、絶対的な自然の摂理のように、酸素が元あった場所へと帰っていく。やがて、吸気口が格納される。そして、再びステルスを纏い始め、方向を変える。マイク「おい!逃げていくぞ!何してんだ急ぐぞ!」ジン「...もういいだろう。実力ははっきりした。足掻いても、無駄なのだ。」ゼロ「あれは...落とせる。」マイク「本当か!」ゼロ「今じゃない。でも、いつか必ず落として見せる。」 私たちはその場を後にする。




