天へと伸びる街
マイク「おい...何か見えないか?」ゼロ「まだだよ。出力を上げて!」ジン「すでに限界を超えてる。装置が壊れるぞ」ゼロ「いいんだ!どうせこれはもうここ以外で使うことはない!」ジン「どうなっても知らんぞ...」マフラーが赤熱し、出力がさらに上昇。発信器と転送装置の間の空気がプラズマ化し青紫色に発光する。ゼロ「頼む...持ってくれ...」マイク「おいおいおい!まずいぞ!ゼロ!後ろ!後ろ!」バチッ!振り向くと絶縁ケーブルの接続口から火が出ていた。接続口と居住衛星の外を交互に見る。羽織っている服を脱ぎ、ポケットから水ボトルを取り出し、キャップを外す。一瞬躊躇うが、そんなことをしている場合ではない。服を水で湿らせ、固く絞る。そして火元に被せる。向こうはどうだ?もう完全に向こうが見えている。あと少しだ!マイク「こんなチャンス、二度とねえ!おれはいくぜ!Yeah!!!」ゼロ「おい待て!まだダメだ!」 マイクがスキッドフレームに乗り、スロットルを全力にして進む。ゼロ「光は優先されないだけで、転送機能はまだ生きてる!」マイクが転送機をまたぐ。しかしその向こうにはマイクは映らない。向こうに飛ばされた。届くわけもなく伸ばした自分の腕だけが視界に残る。また守れなかった。ジン「...放っておけん。俺が追う!お前はお前のことをしろ!」そういって、ジンも向こうへと消えていく。まだ終わってない。そうだ。ジンの言う通り、今僕にできることをするんだ。手元をもう一度見る。火はほとんど収まった。どこが破損した?ゼロ「...くそっ、ほとんど焼けこげてる。基盤ごと交換しないと。でもそんなもの、ここにあるはずない...どうすれば...」いや。まだだ。振り向いて足場の端まで行き、手すりを掴む。何か方法があるはず。探せ。何かを。考えているうちに少し振動が弱くなったように感じる。急げ。スキッドフレーム?だめだ。電子部品の塊だが、修理するには足りない。それにこれの電力源だ。エネルギーが足りなくなる。スーツから外すか?いや、この緊急の場面で致命的な部分を傷つけたら...考えたくもない。なにか、何かないのか?...!そうだ!色々持ってきていたマイクの荷物!あの中に確か基盤があったはず!もしかしたら互換性があるかもしれない!急げ!マイクの持ってきていたリュックを掴み、立てる。ゼロ「...重っ。どんだけ詰め込んでるんだ。」リュックを開け、中身を掻き出す。歯ブラシ、トイレットペーパー、栄養食、寝袋、弾丸...くそっ、さっき見えてたやつはどこいったんだよ!いろんな荷物の隙間から、基盤の角がチラッと見えた。ゼロ「これだ!引っ張れ...!」取り出した基盤は、まさに必要としていたものだった。ゼロ「これなら元に戻せる!」基盤を脇に挟み、再び破損箇所へと戻る。まずい、転送装置が対応し始めている。向こうが戻っていっている。ドライバーを持つ手が震える。元の基盤のネジを外し、素早く配線を差し替える。ディスプレイのエラー表示が少しずつ消えていく。機械が再びうなり始める。ゼロ「...よし。」空間のノイズが一気に広がり、まるでガラスに亀裂が入るように世界が歪み始めた。ゼロ「今だ!」階段を二段、三段飛ばしで下っていく。ノイズが最大になったところでスキッドフレームに跨がる。ケーブルを引っこ抜き、エンジンを吹かす。送信器の電源が切れ、HUDが復活する。ゼロ「ありがとう。」猛烈に加速し、亀裂を跨ぐ。音が消える。風も消える。体が宙に浮いたような感覚。ゼロ「越えた!」まずい、かなり上だ。止まれるか?強い衝撃と共に着地し、それと同時に思い切りブレーキを握る。ハンドルを切り、ドリフトで停止する。周りを見る。薄暗い巨大な空間。何百メートルも続く配管。天井を走る超高圧送電線。無数の冷却ファン。保守クレーン。ゼロ「ここは...保守空間か。マイクとジン、どうやって探そう...」HUDを見るが、やはり居場所は表示されない。電波が転送されて中に閉じ込められるからだろう。保守を探索しに、闇へ消えていく。体に衝撃が走る。マイクがスキッドフレームから転げ落ちる。後からジンも転送され、着地する。ジン「...はあ。大丈夫か。」マイク「ああ、平気だ!」ジン「お前は馬鹿なのか?何で突っ込んだんだ。」マイク「まあ、過ぎたことは仕方ねえっていうし、もう良くね?そういやここどこだ?ゼロはどこ行った?」二人は辺りを見渡す。一面に砂と照りつける日の光のみがある。ジン「(通信機で)ゼロ!」ジン「通信も切れてる。...おそらくここは反対側の境界だろう。ゼロはポータルの向こうの本来の空間にいる。」マイク「なんだよそれー、反対側ってことは、すごい離れてるってことかよ?...まあいいか、とりあえず向こうとか行こうぜ!」マイクが指差した先は、高層ビルが並んでいる、この居住惑星でも珍しいオンラインの地区だ。ジン「辞めておけ、危険だ。」マイク「じゃあこれはどうだ?俺が向こうに行って、ジンはここで待っておくんだ。」ジン「(ため息をつく)...お前を一人にしたらそれこそ危険だ。着いていくよ。」マイク「そうと決まればさっさと行こうぜ!」マイクはスキッドフレームに跨り、飛ばす。マイク「Yeahh!!!」ジン「全く。いつもこうだ。」その街に近づくたびに、サイズが想像を超えていく。まだ大きく、まだ煌びやかに。そこから漏れる光でさえ、オフラインゾーンの何倍も明るかった。数十メートル先に、もう街が見えている。マイク「...壁とかあると思ったんだが、何もないんだな!これじゃあいくらでも入れるぜ?」汚く汚れた土に頑丈に舗装されたコンクリートが「あちら側」と「こちら側」の境目をを作り上げていた。スキッドフレームを陰に隠し、歩いていく。そして足がその境界を越えた時、彼らは自分たちの地域がオフラインになる前に戻れた気がした。




