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あなたの為に、ビジュを良くしてる訳じゃない  作者: 櫻木サヱ
あなたの為にビジュ良くしてる訳じゃない

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29/32

言葉にした本音

放課後の教室は、普段よりも静かで穏やかだった。

カーテン越しに差し込む夕陽が、机や椅子をオレンジ色に染めている。


つかさは窓際の机に座り、教科書を閉じた。

今日は特別な日ではないけれど、心はどこかそわそわしていた。


「桐谷、まだいたのか」

背後から聞き慣れた声がして振り返ると、れんが立っていた。

「うん、ちょっと残ってた宿題を片付けてたの」

「そうか……俺も少し話したいことがあって」


二人の距離は自然に近く、互いを意識しながらも緊張感のない空気が漂う。

つかさは胸が高鳴るのを感じながらも、少し照れくさそうに微笑む。



教室の隅で、まこや木嶋がちらりとこちらを見て笑っている。

「二人きりで話してる……また仲良しだな」

「うるさいな……」

つかさは小さく頷きながらも、心の中ではまこたちの視線も気になってしまう。


れんは軽く肩をすくめ、真剣な顔でつかさを見つめる。

「桐谷、俺は……」

つかさも少し息を飲む。


「……れん?」

「ずっと言いたかったんだ。俺は、桐谷と一緒にいたい。これからも、ずっと」


つかさは心臓が跳ね、言葉が出ない。

「私も……同じ気持ち」

小さく、でもはっきりと答える。

二人の目がしっかりと重なり合い、これまでのすれ違いや距離感が一気に収束する瞬間だった。



夕陽が教室を包み、二人の影を長く伸ばす。

手を握るわけでもない、肩を寄せるわけでもない。

ただ互いの気持ちを伝え、理解しただけで、胸の中には確かな温かさが広がった。


「これからも、一緒にいられるんだね」

つかさがつぶやくと、れんは微笑む。

「ああ、絶対に」


教室の片隅には、文化祭の名残が少しだけ残っている。

その空間で交わされた二人の想いは、まるで静かな祝福のように、日常の中でそっと輝きを放っていた。



帰り道、二人は肩を並べて歩く。

風がやさしく吹き、落ち葉が舞い上がる。

「明日からも、一緒にいられるね」

「もちろんだ」

小さな声のやり取りだけで、二人はお互いの存在を確かめ合う。


すれ違いや誤解を乗り越えた関係は、もう揺るがない。

日常の中で育まれた絆は、これから先も、二人をそっと支え続けるのだろう。


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