誤解の向こう側
放課後、校舎の廊下は少し静かで、夕陽の光が窓から差し込んでいた。
つかさは教室で、今日の授業のノートをまとめていた。
しかし、気持ちは落ち着かず、何度も時計に目をやる。
「……れん、まだ来ないな」
つぶやきながら、つかさは窓の外を見やる。
約束の時間を少し過ぎていたが、心配よりも不安が少しだけ胸に膨らむ。
その時、教室の扉が開き、れんが走り込んできた。
「ごめん、遅れた!」
「ううん、大丈夫……」
つかさは少しほっとして笑うが、れんの顔を見ると汗をかいていて、息が上がっている。
「どうしたの?」
「ちょっと部活の後片付けで……」
れんは苦笑いしながら、つかさの机の横に座った。
「じゃあ、宿題やろうか」
「うん」
⸻
二人でノートを広げて勉強を始めるが、途中で小さなトラブルが起こる。
隣の席のモブ男子が、れんの注意を引こうと話しかけてきたのだ。
「おい、これも教えてくれよ」
つかさは一瞬、胸がざわつく。
(また他の人と……?)
れんはすぐに応対するが、つかさの心には小さな不安が残る。
その感情を隠そうとするあまり、つかさは少し冷たく返してしまう。
「わかった、じゃあ自分でやるから」
つかさの言葉に、れんは少し戸惑った表情を見せる。
「桐谷……?」
「大丈夫、気にしないで」
だが、れんの目には少し寂しさが映っていた。
互いに大事に思っているのに、すれ違いが生まれる瞬間だった。
⸻
宿題が終わり、二人は教室を出て帰ろうとする。
歩きながら、つかさは勇気を出して話しかける。
「れん、ごめん……さっき、少し意地悪だったかも」
れんは少し笑いながら、肩をすくめる。
「いや、俺も少し誤解してた。桐谷の気持ちを考えずに怒ってしまった」
互いに誤解を解き、素直な気持ちを伝え合うことで、胸のざわつきは次第に温かさに変わる。
「……やっぱり、私たちって、少しじれったいね」
つかさがつぶやくと、れんも笑う。
「でも、その分、互いの気持ちは確かにわかるんだな」
手をつなぐわけではない。
肩を寄せるわけでもない。
それでも、互いの存在を感じるだけで、心は穏やかに満たされる。
⸻
帰り道、二人は歩きながら自然に話し続ける。
小さな誤解や不安があったとしても、それを乗り越えた後の安心感は何にも代えがたい。
「これからも、こうやって一緒にいられるといいな」
つかさが小さくつぶやくと、れんは笑顔で頷く。
「ああ、絶対だ」
夕陽が長く影を伸ばす中、二人の距離は少しずつ確実に近づいていった。
小さなすれ違いも、互いを思う気持ちがある限り、二人をさらに強く結びつけるものになる。




