揺れる視線
放課後の教室は、静かで落ち着いた空気に包まれていた。
つかさは机に向かい、今日の授業の復習ノートを広げていたが、どうしても集中できず、手元のペンが止まってしまう。
「……れん、まだ来てないかな」
小さくつぶやき、窓の外を見やる。
そのとき、背後から足音がして、れんが教室に入ってきた。
「おまたせ、桐谷」
「ううん、大丈夫。ちょうど待ってたところ」
自然に笑い合い、二人は机を並べて座る。
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宿題を進めるうちに、二人の距離感は徐々に縮まっていく。
数学の問題を解いている途中、つかさがつまずくと、れんが手元をのぞき込み、やさしく教えてくれる。
「ここはこうやるんだ」
「なるほど……ありがとう」
「お互い様だろ」
ほんの少し肩が触れただけで、二人の胸が跳ねる。
お互いを意識しているからこそ、日常の何気ない接触が特別な瞬間になる。
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だが、教室に入ってきたモブの男子が、れんの肩に軽く手を置いて話しかける。
「おい、これも教えてくれよ」
つかさは一瞬、胸がざわつく。
(……れん、他の人と話してる……?)
れんはすぐに肩を払って、つかさに微笑む。
「大丈夫、すぐ終わるから」
その笑顔に、つかさは少し安心する。
小さな嫉妬や誤解も、こうして互いの気持ちを確かめ合うことで、絆が深まることを実感する。
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宿題がひと段落したあと、二人は図書室を出て校庭を歩く。
夕陽が長く影を伸ばし、風が優しく吹く。
「ねえ、れん……」
つかさは少し勇気を出して話しかける。
「ん?」
「これからも、ずっと一緒に勉強したり……遊んだりしてくれる?」
れんは少し驚いた表情を見せたが、すぐに優しく微笑む。
「もちろんだよ、桐谷」
つかさの胸は温かさで満ち、自然に笑顔になる。
小さな誤解やハプニングも、互いを信じる気持ちがあれば乗り越えられる。
二人の距離は確かに近く、少しずつ、これからの未来を感じさせるものになっていた。
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帰り道、二人は肩を並べて歩く。
互いの沈黙は心地よく、言葉にせずとも気持ちを共有できる時間になっている。
「明日も、また一緒に頑張ろうね」
つかさの声に、れんは軽く頷いた。
「ああ、もちろんだ」
文化祭を経て築かれた信頼と絆は、日常の中でさらに育まれていた。
小さな誤解も、ハプニングも、二人の関係を揺るがすことはなく、むしろ距離を縮めるきっかけになっているのだと、つかさは心の中で実感していた。




