第111話 プラムの罪1
何の説明もされずに呪われたのはかわいそうだが、カイルは元の世界に戻っていった。でもすぐに死ななかったのだから諦めてもらおう。
次はプラムの番だ。
風の精霊女王シルフィーダが問いかけてきた。
「それでもう一人のプラムとやらはいかがするのだ?」
「こちらは非常に罪深く極刑でよろしいかと存じます」
「わかった」
「しかしながらこの者は悪魔と取引しており、先ほどの少年と違ってまだ寿命が50年弱ほどございます」
「なるほど、ただ殺すだけではより強力な悪魔の糧になってしまうと言うことか」
「その通りです。ですが処分方法はございます」
このままではプラムは何らかの形で処分されてしまう。でも俺は被害者だから知る権利はあると思う。
「意義あり! アル、こいつを助けたいって気持ちは1ミリもないけど、俺はコイツが何をやったか知らないんだ。教えて欲しい」
答えたのはエリーちゃんだった。
「いぎをみとめます。おにいさまはリアンにおはなししてあげて」
「わかったよ、エリー」
どうやらプラムを捕らえている間に、何らかの方法で彼女の記憶を読み取ったようだ。元の世界からの情報と合わせてだいたいの経緯がつかめているらしい。
「悪魔と契約したプラムはまず1人でゲームにログインし、この世界にやって来た。なぜなら自分の依り代となる少女の肉体が必要だったからだ。ゲームストーリー上、南部の村にいることになっていたので適当な少女を見つけ出した。それがアイダだ。その時点で彼女の村とその近在の村が焼き討ちされた。そのどさくさで彼女を誘拐し、憑依してアイダの魂を喰らってしまった。その意識はなかったようだけどね」
そ、そんな……。悪魔に魂を売ったとはいえ、普通の人間だったんだろ? そんなことができるのか?
「1つの体に2つ以上の魂が存在するというのはとても難しいことなんだよ。
よくラノベで憑依された人格と力を合わせて事件を解決したりするけど、実は1つの魂が過去世の記憶を取り戻したことで多重人格状態になっていることが多い。だから事件を解決することで片方の人格が消えて統合されている。
次に多いのが元々の魂がとても強く寛容で、憑依してきた魂を一時的に受け入れている状態だ。今のリアンはこのケースだね。こちらも問題が解決したら元の魂だけが体に残ることになる。
そして元の魂が受け入れていないのに憑依してきた魂の方が強い場合、元の魂を踏みつけ食い荒らしてしまうんだ。これは魂を穢す行為であり、よほどの力がないと出来ない。人間にはそれこそ悪魔と契約していないと出来ないことだ。そしてプラムはアイダの魂を喰ったのだ」
ちなみに最初のログインの時は肉体がない状態だったらしい。不安定で精霊たちに見つかると異物として消されてしまうから、何が何でもアイダから肉体を奪い、顔や体つきをプラムと同じように作り変えたそうだ。ひどいことをする……。
「次に狙ったのがカイルの肉体だ。カイルがいる村はわかっていたため、その村に移住し彼と仲良くなった。言葉巧みに一緒に魔法学園へ行くようにそそのかして冒険者活動をさせることを承諾させる。後はゲーム通りの行動をするだけでいい。
アイリスが言っていたすごい剣士のカイルはプラムの実社会での友人だ。彼はプロゲーマーで年齢を理由に大会出場は引退していた。だがゲーム配信者として侍ジョブで様々なゲームを攻略し人気を博していた。そして現在は行方不明だ」
あっ、それって秋月博人じゃね?
『40過ぎのおっさんだけど侍プレイでやってみた』ってチャンネルだ。たしかどんなゲームでも侍でやるんだよ。俺も見たことある。動物たちと戯れて育成するゲームでも侍ですげーシュールで面白かった。そう言えば1年ぐらい前に全財産を持ったまま、家族に何も言わず行方不明になっていたな。財産狙いのマフィアに攫われたって話だったけど、プラムがやっていたのか……。
「彼はギャルゲーよりもRPGパートが好きでね。魔王攻略だけでは飽き足らずこの世界の全ダンジョンを攻略するという目標を立てた。僕とエリーが暇つぶしでやってたみたいにね。それで選ばれた仲間がまずは当然プラム。次にアイリス、カンナ、ダリア、そしてリアン君だ。彼は自分が使っているカイルの肉体よりも、リアン君のポテンシャルの高さに気づき認めていた。だからこのゲームが何度もリセットされてしまった時に、プラムは君を襲撃したんだ。リセットはキャラの弱体化を産むが、もともと持っている才能は奪えない。カイルではなくリアンの方が勇者に向いていて、なられると困るからだ」
彼は本当にゲームが大好きだったみたいで、回想シーンで冒険者になるところでしばらくアイリスとレベル上げしていたそうだ。リアン君の才能もいち早く見抜き、強い信頼を勝ち取っていたそうだ。当然男の娘にはなっていない。
それにしてもそんなつまんないことが、リアン君への襲撃理由だったのか。彼はなんにも悪くないじゃん。プラムはホント自分勝手なヤツだな。
「少し話を戻すが、プラムとプロゲーマーの彼は最終的に魔王を倒してエンディングまで行った。そしてプラムは彼を殺し、魂を悪魔に献上した。ずっとコンプレックスを抱いていた相手の力が欲しくて自分が魂を喰らいたかったみたいだけど、体が違うのでできなかったんだ」
それってリアフレを殺したってこと?
俺は驚愕の眼差しでプラムを見たが、もはや彼女は人の心を失った悪魔の手先でしかないのだ。
「その後15人ほど犠牲者が出ている。いつも殺す前に友人を紹介させる方式を取っていて、財産を奪ってから殺している。プラムの隠し預金にはざっと12億ほど入っているよ。
だけど後半になってきて危ないゲームがあると噂が飛び交っていてね。なかなか獲物が見つからず、値下げ傾向になっていたらしい。それでも2千万くらいだけどね。それで先ほどのカイルの2つ前のプレイヤーがアイリス推しの男だった。彼は回想編で婚約したばかりのアイリスに無理やりキスをしたアルフォンス君を殺害したんだ。そうして本編に戻ってみるとこれまでの攻略がすべて水の泡になっていた。
結婚相手を失ったアイリスは高級娼婦になったため学園にいないし、彼女絡みで攻略したすべてのヒロインたちに総スカンを喰らったんだ。そしてゲームをリセットして逃げた。もちろんすでに悪魔との契約済みだから逃げられなかったけどね」
「アルがこっちに来たのは次のプレイだね」
「いいや、まだもう1人いる。アルフォンス君のいないこの世界を見たプレイヤーが。それがさっきのカイルの叔父だ。彼はログインしてみたものの本来のゲームとは全く違う状態に異常を感じて逃げたんだ。噂を聞いていたんだろうね。少しでも金を取り返そうと、甥から預かっていたFXで儲けた金1千万を奪う代わりにゲームの権利を彼に譲ったんだ。その間に僕がこの世界の3年前に飛ばされてアルフォンス君に憑依し、元のストーリーに近い状態になった。アイリスは学園にいて最初のプロゲーマーと冒険者活動をした記憶をもっている状態にね。だから最初からカイルへの好感度がMAXで、最後のプレイヤーとなった少年は増長し、何度もリセットを行うことになったんだ」
「なぜプロゲーマーとの記憶だけがあるんだ?」
「正確にはプロゲーマーとキスに怒ってアルフォンス君に制裁を加えた記憶だよ。すごく簡単な理由だ。他のプレイヤーは魔王攻略パートは必要最低限しか触らなかったので、懇切丁寧にプレイしていた彼らの記憶が上書きされることがなかったんだ。それにその方がプレイヤーにとっても都合がよかったしね」
そっか、でもアイリスの一番いいカイルとの記憶が、既婚者との恋愛? 修行? だったなんてちょっとかわいそうだな。
お読みいただきありがとうございます。




