表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それでも異世界は輪廻っている  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一部 ゲームから出られなくなった俺を助けてくれたのは、キモデブ悪役令息と犬耳幼女メイドだけでした

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

110/114

第110話 裁判2


「はい、精霊だけでなく、生きとし生けるもの全ての魂が狙われておりました」


 アルの言葉に4人の精霊女王たちは厳しい顔になる。


「そのようなこと、決して許せぬ! この二人を厳罰に処すように」


「心得ております」


 水の精霊女王ウィンディーナの言葉に応えるアルに俺はどうしても言わずにいられなかった。



「意義あり! プラムはともかくカイルは……まだガキで被害者だ。厳罰は厳しくないか?」


 すると裁判官席の中央にいるエリーちゃんがニッコリと笑った。


「いぎをみとめます。リアンはそのりゆうをこたえて」


「まず今ここにいるカイルは、このゲームが悪魔の侵攻であることを知らなかった。なんどもリセットを繰り返していることがその理由です。リセット1回ごとに20年も寿命が縮まるなんて知っていたら絶対にしません」


「寿命20年? どういう意味だ⁈」


 カイルが焦ったように聞いてくるが、今やっているのはお前の弁護なんだよ。黙ってろ。


「しかも彼は4回もリセットしています。プラムと共犯なら1度目でその行為を止めるでしょう。ですが彼女はそれを止めることはなかった。そこにいるカイルの魂も悪魔に捧げるつもりだったからです」


「なるほど」


「確かに同等の扱いとは言えませんね」


「何も知らされていなかったということか……」


「愚行を起こすものなど、どうでもよかったのであろうな」


 精霊女王たちが口々に自分の意見を述べ、俺の意見に納得してくれたようだ。



「それと彼のプレイスタイルについてです。彼はこの悪魔のゲームの元になった『レジェンド オブ フラワーヒロイン ファンタジア』の正規版をプレイ済みなのですが、この世界に来てからはてんで話になっていません。戦闘は覚束ない、モンスターに対して怯える、女性の扱いにも慣れていないので、いつも虚勢を張っています。それとゲームにはアシスト機能というものがあり、戦闘訓練を受けていなくてもそれなりに動けるのですがその機能を使いこなせていません。

 その様子になんとなく見覚えがあるんです。俺のゲーム仲間に2つ年上のヤツがいるんですけど、15歳以上になって生体コンピュータに切り替えた時に対応速度に慣れずうまくいかなくなったんです。今まで10の力で振ればよかったのが、変更後10で振るとバランスを崩してぐちゃぐちゃになるんです。それとそっくりなのです。

 つまり今のカイルの中身は15歳になったばかりの子どもというわけです」


「15か、16歳はこちらでは成人ぞ。ほぼ大人と見てよいのではないか?」


「俺たちの世界では18歳で成人です。たぶん俺と同じ日本人で今も子どもとして扱われる一般人です」


「こちらの調査でも、彼は15歳の少年であると報告されています」


 アルが精霊女王たちに告げた。そうか、もう正体を掴んでいるんだな。

 とうとうカイルも俺が同じ世界から来たことに気づいたようだ。


「お前もプレイヤーだったのか……だからあんなに動けていたのか?」


「俺はプレイヤーじゃない。まごうことなきアカウント乗っ取りを受けた、ただの被害者だよ。プラムのせいでな」


 俺が答えると彼は黙ってしまった。自分が知らずに従犯になったことに気が付いたのだろう。



「今ここにいるカイルは共犯ではなく魂がプラムに狙われており、未成年であることは認めよう。だがリセットによる混乱と魔素の利用は、この世界に対するテロに他ならない。そのことを精霊女王たちは問題視されておられる。それは厳罰に値する。その点についてはどうするのだ?」


 どうしても厳罰が必要ってことだね。聞いてきたアルは多分どちらでもいいはずだけど、精霊女王たちが納得しないといけないってことか……。


「俺たち人間は長生きしてもせいぜい100年なんです。カイルはすでに15歳、さらにリセット4回で80年の寿命を費やしています。つまり彼はあと5年未満しか生きられません。

 彼はこの世界のことをゲームだと思い込み、憧れの女性である狼精霊エリカとの交際を楽しみにしていました。ですが実際には彼は彼女に嫌われ、たった1度だけ抱き着いたけどそれもすぐに殴られて拒否されました。つまり80年の寿命を費やした結果なにも、いや憧れの女性に嫌われただけだった、全くの無駄だったのです。そのことは彼に深い後悔と悲しみを与えることでしょう。

 精霊女王の皆様、あとたった5年ですが、彼に改悛の時間を与えてみてはどうでしょうか? 自分の愚かさを後悔しながら生きていくんです。それに彼にはもう未来がない。たとえ5年の間に他に好きになった人がいても、その恋を成就することはできません。年齢的に子孫を残すことも出来ません。

 カイルはもうすでに厳罰に処されているのと同じなのです」


「あと5年? 俺、後5年で死ぬのか? ウソだろ、ウソだと言ってくれ!」


 カイルが自分の置かれた状況に気が付いてむせび泣く。

 嘘じゃないから、言えねぇよ。ただ100歳以上生き延びる寿命ならもう少し長生きもありえるけど。さすがに遊びに寿命80年も費やしたって後悔しかないよな。


「アルよ。それは厳罰になるのか?」


「なると思います。子が親より先に死ぬことをこちらの宗教の1つである仏教では逆縁といい、産んでくれた親や周囲の人に対して深い哀しみを与える行為です。

 本来ならそれは本人が意図して起こることではないため、罰ではありません。

 ですがたまたまの巡り合わせで寿命が短く生まれてしまった子どもたちとは違い、彼は自分の愚かな行為によってその逆縁になってしまったのです。それは魂を穢す行為であり、次の転生の機会を得るには非常に長い時間をかけて浄化されることになるでしょう。

 それに今のまま彼に死を与えると、プラムの後ろにいる悪魔に彼の魂は吸収され力となってしまいます。たった5年分ですが、それでも力には違いありません」


「ならばこの者に対しては今のままでよいというのか? ちと甘いのではないか?」


 火の精霊女王サラマンドラが不平を述べた。やはり納得してくれないか……。



「では彼に呪いを与えてください。この先逆縁を与えてしまう家族や友人に尽くさなければ、死ぬまで不幸な目に遭い続けるというのはいかがでしょうか?

 そうですね、例えば重篤な痛みの伴う病にでもなってもらいましょう。5年間ずっと痛みに苦しみ、そして体が動かせないもどかしさ、口が利けず自分の意見や気持ちを伝えられない無念さを味わってもらうのです」


「我としては条件なしでその呪いを与えてよいと思うが……」


「ですが彼の家族や友人には罪がございません。逆縁はこの者だけの罪なのです。最後の5年間ぐらい尽くして罪を償う機会を与えても良いでしょう」


 協議の結果カイルへの罰は死ぬまでの期間、家族や周りの人に優しくしないと重い病気になるという呪いが与えられることになった。4人の精霊女王たちによってなされた後は、彼は消えてしまった。このゲームからログアウトし、元の体に戻っていったのだ。


お読みいただきありがとうございます。


一応本文内にも書いておりますが、このお話では親より先に子が死ぬから罪になる訳ではありません。なぜならほとんどの死にゆく人は、わざと先に死んでいくわけではないからです。


カイルも寿命が縮むことを知らなかったとはいえ、1千万もする怪しいゲームに叔父に誘われたからと軽い気持ちで身を投じています。そのことにより異世界に多大な迷惑をかけたことが罪なんです。

結果寿命のほとんどをすり減らしたことが罰であり、それによって悲しみを与える人に短い間でもせめてもの償いをしたらどうかという話にしました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ