第109話 裁判1
法廷にいるって言っても、俺は本物の裁判所なんか行ったこともない。ドラマで見たことのある程度だ。奥に裁判官席があって、訴えた側の検事席と訴えられた側の被告と弁護士の席。そして中央には証言台がある。そして俺がいるのは傍聴席だ。つまり裁く側でも裁かれる側でもないってことだ。
しばらくすると被告席に拘束衣姿のプラムと、縛られてはいないものの怯えた様子のカイルが座った。キョロキョロと首を回して俺がいることに気が付いた。
「リアン、お前もここに呼ばれてきたのか?」
「魔王に止めを刺して、気が付いたらここにいた。お前は何か聞いているのか?」
「今から俺たちの罪を裁くからって、俺なんもしてねぇ」
「俺にそう言われてもな……」
俺の中では段々このカイルは被害者に思えるんだが、きっと何かやらかしているんだろう。
プラムは何も言わない。いや言えないのだ。口に猿ぐつわをつけられているからだ。すごく意外な姿で驚いた。エリーちゃんやアルがそういうことをするとは思えなかったからだ。
しばらくたって奥の扉が開き、エリーちゃんと4人の精霊女王たち、最後にアルフォンス=レッドグレイブの太った姿のアルが入って来た。
「なんでお前が!」
立ち上がったカイルが指を差して声を上げると、中央の裁判長席に座ったエリーちゃんが一言述べた。
『せいしゅくに』
その声は普段のエリーちゃんの声ではなかった。何か逆らうことのできない重みがあった。『神言』で命じたのだ。そのおかげかカイルが口を閉ざしたと同時に、いつの間にか現れ兵士タイプの精霊に抑えられ座らされた。
アルがとうとうと彼らの罪を読み上げる。まるで本物の検事のようだ。
「これから異世界への不正侵入および歴史改ざん及び殺人の罪にて、被告人であるプレイヤーネーム『プラム』と『カイル』を裁きます。以下プラムとカイルと呼びます。
この2人はソルダム社の『レジェンド オブ フラワーヒロイン ファンタジア』の不正ソフトを使って、異世界からこの世界を不正侵入しました。そして北部地域に瘴気をまき散らし、魔王城を発生させ大量の住民を殺戮しました。またゲーム内キャラクターと同名の多くの女性たちの尊厳を踏みにじる行為を行い、善良なる住人を殺害に至っております。さらにリセットと称する時間操作を行い混乱に至らしめ、精霊と他の生物たちが共存するこの世界の秩序を乱しました。
罪名『異世界騒乱罪』、『異世界侵略罪』、『殺人罪』」
「俺はそんなことやってない! ただゲームをプレイしただけだ‼」
「被告人は静粛に。まだそなたに話してよいとは言っておらぬ。これ以上勝手に話す様ならそなたも拘束する」
カイルの叫びに精霊女王の1人フィオレンティーナが冷たく命じる。
「検事アルよ。続きを話すがよい」
「かしこまりました。まずプラムは元の世界でこの世界をモデルにしたゲーム『レジェンド オブ フラワーヒロイン ファンタジア』の不正ソフトを悪魔との契約によって手に入れました。契約内容は正確ではありませんが、プレイヤーを1人連れてくることでゲームをプレイさせ、終了と同時にその命を悪魔に捧げていたようです。
プラムは被害者に自分と共にプレイすればゲームの女性キャラクターを弄べると言葉巧みに誘い出し、高額でレンタルしました。そして主人公と類似点の多いカイルという実在の少年の魂を殺害。その肉体にプレイヤーたちを憑依させ数々の犯罪を起こしていました。殺人、強盗、暴行、結婚詐欺など数多ございます」
それを聞いてカイルは顔を青ざめさせた。
「えっ? カイルが殺されている……? この体が犯罪を……?」
だがアルは取り合わないし、精霊兵士に肩を押さえらただけだった。
「その中にこの世界の命運を握る1人の少年の殺害も含まれておりました。現在私が憑依しているアルフォンス=レッドグレイブ少年です。彼はこの世界に生まれる最後の精霊術士となり、精霊女王と人間との間を取り持つ役目がございました。
今現存する精霊術士たちは精霊の力を彼らの気まぐれに助けを請うことによって行使されています。ですが彼の力は精霊を顕現させ会話することを可能にしていました。彼の死はこの世界と精霊たちとの絆を断ち切ることであり、これからの精霊たちの衰退を招くきっかけとなるものでした。
それは悪魔に精霊たちを吸収させるための罠だったのです」
アルフォンスくんにそんな重大な役割があったなんて……。でもゲーム内でも精霊が呼べるのは彼とチェリーともう1人だけ。そして彼以外は精霊の力を借りての一時的な戦闘だ。メイドにするために常時顕現させるなんてそんな力はない。
それを聞いてカイルは呆然としているし、口を塞がれているプラムは睨むだけだ。本来の裁判なら弁護士による異議申し立てがあるんだろうけど、この裁判においてはいないので何も言えない。
「つまりこの世界を滅亡させるきっかけであり、侵略行為であったのだな」
「左様でございます」
精霊女王シルフィーナが2人を睨む。
「人間同士で争うことは世界にとって好ましいことではないにせよ、我らが介入する必要はないと思っていた。だが同じ時を何度も繰り返し行われ、この世界の魔素がいたずらに消費され過ぎていた。それもすべて我ら精霊を狙ったものということだな」
「はい、精霊だけでなく、生きとし生けるもの全ての魂が狙われておりました」
お読みいただきありがとうございます。
裁判内容はかなり適当で弁護士もいないなんちゃって裁判ですが、雰囲気を楽しんでいただけたら幸いです。よろしくお願いいたします。




