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それでも異世界は輪廻っている  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一部 ゲームから出られなくなった俺を助けてくれたのは、キモデブ悪役令息と犬耳幼女メイドだけでした

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第107話 魔王との戦い3


「カイル! 魔王に止めを刺すんだ」


 俺がそう叫んだと同時に、今度は突然体にとんでもない重力がかかった。思わず膝と手を突くと床にズワッと魔力が流れていった。何とか手は床から話したが体に掛かる重みで膝が持ち上がらない。床との接地面が多ければ多いほど魔力が流れる。


 見れば他の3人も床に倒れ込んでいる。精霊であるエリカは宙に浮き、モカはいつの間にか装備を纏っていた。エリーちゃんとお揃いの着ぐるみ装備だ。なぜかムササビの着ぐるみで壁や魔王(足を突くついでに蹴飛ばしてダメージを与えている)をうまく利用して飛び続けている。ステルス状態のミランダも小さなリュックを背負い、そこからフワフワしたかわいい白い羽が飛び出ていた。モリーを口に咥えている。どうやら彼女は飛ぶ装備は持っていないらしい。

 エリカが俺の様子に気づいてすぐに助けに来てくれた。さっと持ち上げられ壁際に寄せられる。どうやら魔力を吸い取る仕掛けは床だけで壁は作用しないのだ。


「体を動かせるなら壁際に寄れ、できるだけ床との接地面を少なくするんだ」


「少なくって、どうやって? 全然うごけないよ!」


 この仕掛けは魔力量に比例して重力魔法がかかる仕組みになっているようだ。アイリスに次いで魔力が多く、体力のないチェリーには酷な仕掛けだ。


「リカ、頼む」


 俺の言葉にエリカはすぐチェリーを壁際に寄せてくれた。まっすぐ立たせて、壁を支えにすれば何とか重力に耐えられる。それを見たアイリスは自力で壁に向かっていった。

 ちょうど部屋の中央にいる魔王にとって、皆が距離を取っているのだ。その隙に俺たちから吸い取った魔力で回復しようとしているのだろう。モカが時々蹴り飛ばしてくれていなければすでに復活していたかもしれない。

 だが問題はカイルだ。何とか四つん這いにはなれたが、立ち上がれない様子だ。このままだと彼の魔力が枯渇してしまう。俺は再度エリカに視線を送ると彼女はイヤそうにしていたがカイルを助けに向かい、抱え上げようとした。



 するととんでもないことが起こった。

 事もあろうにカイルがエリカに抱き着いて、彼女の豊かな胸に顔を埋めたのだ。


「おい! お前、何してやがる‼」


 ヤツは俺の言葉を無視して、言い訳するように彼女の胸元で叫んでいた。


「好きです。ずっとずっと推してたんです。あなたと恋人になれるからと思って、こんなクソみたいなゲームを我慢してたんです。俺の気持ちをわかってください」


 だがエリカにとってそれはセクハラ行為以外の何物でもなかったようだ。せっかく助け上げていたのに、そのまま反射的にはたき落としてしまった。

 何だか……身から出た錆には違いないんだけど、少しかわいそうに思えてしまった。

 でもさ、せっかく推しに告白するんだったら時と場合を考えようよ。少なくとも魔王を目の前にした今じゃなかっただろ? いやこの戦闘が終わればゲームが終わるから、今が最後のチャンスなのかもしれない。どちらにせよやっぱり自業自得だな。


 カイルは失神してまた床に倒れ込んだが、エリカはまるで汚れたぞうきんをつまむように2本指でカイルの襟首をつかんで宙を浮いていた。



「カイル、起きろ! 聖剣でないと魔王が倒せない‼」


 だがヤツはピクリとも動かない。だめだこのままいたずらに時間を掛ければ魔王が復活するかもしれない。


「リカ、そのまま宙を浮いて魔王の上にいてくれ。(ミラ、俺をカイルのところまで合流させてくれないか?)」


(わかったのー)


 ミランダは俺の襟首を咥えた。そして肩にモリーをそっと乗ってきたので彼女をポケットに入れた。奇しくもカイルと同じ状態になっているが、扱いは全然違うからな。俺の意図を悟ってか、モカも俺の側を滑空している。


「カイルの聖剣を使って俺が攻撃する。さすがにチェリーの脅し通り、右手を切り落とすわけにはいかないからな」


 俺は意識を失ったカイルの背に張り付き、彼の右手に握られた聖剣をその上から握る。ほぼバックハグ状態だ。そんな趣味は全くないが、背に腹は代えられない。

 それから俺はカイルの剣を魔王に突き刺した。



 ……はずだった。

 ちゃんと心臓を狙ったはずなのに、剣が滑って刺さらなかった。体中の毛が逆立ったようにゾワリとする。魔王がこちらを見て口元だけニヤリとしているのだ。

 魂のない決められたパターンなはずの魔王の表情に、走って逃げだしたいような衝動に駆られる。


 どうして倒せない? ……前の時はゲームをクリアできなくても、少なくとも勝てた。なのにどうして?

 心の中に混乱と恐怖が満ち溢れる。こんなのではダメだ。そうわかっていても相手の存在がおぞましい。


(リアン、落ち着いて! 悪魔は恐怖心を糧にするのよ! 

 今はまだ勇者の剣はカイルにしか使えないんだよ。彼がまだ勇者だから)


 モカの心話が頭に響く。

 そういえば前回はアルが勇者で、俺はプレイヤーになるだろうから倒せるかもしれないってことだった。結局できなくて勇者であるカイルを動かすしかなかった。今それと同じことが起きているんだ。


(どうしたらいいんだ? まさか、殺せというのか?)


(ううん、そんなこと絶対しちゃダメ。そうじゃなくて、彼に聖剣の権利を譲ってもらうの)


(聖剣の権利?)


(そう、カイルの望みはエリカといちゃつくことで魔王退治ではない。だから望みを叶えてあげるの)


(えっ、でもリカはアイツの事嫌いじゃん。それなのに無理やりいちゃつかせるなんて俺には出来ない)


(あたしだってそんなことはしないわよ。でもいい夢を見せるくらいならできる)


(モカはここじゃ魔法使えないだろ?)


(あたしはね。でもエリーからいい夢が見られる枕を貰ってるから)


 彼女は夜すごく寝相が悪いのだという。夢でよく運動しているらしく、それがそのまま寝相に繋がっているそうだ。少しは落ち着くようにといい香りのするポプリの入った安眠枕を作ってくれたそうだ。それで寝ると百発百中素敵な夢が見られるんだそうだ。


(導入だけ何とかすれば、カイルもいい夢見られると思うんだ。例えばリカに膝枕してもらうとかね)


(その導入はどうするんだよ)


 胸よりはましだろうけど、嫌いなヤツを膝に乗せたくないだろ。


(オラ、やるべ。ちょっくら我慢すればいいべ)


(リカ……)


(このままじゃリアンは死んじまうって聞いた。オラ、弟分が死ぬのは嫌だ)


 えっ? どういうこと?

 俺、死ぬの?


お読みいただきありがとうございます。

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