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それでも異世界は輪廻っている  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一部 ゲームから出られなくなった俺を助けてくれたのは、キモデブ悪役令息と犬耳幼女メイドだけでした

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第106話 魔王との戦い2


「魔王は自動回復のスキルがあって力技だけでは倒せない。ただ魔力の源である魔石を聖属性魔法で塗り替えてしまうと自分の体と相容れないから蘇生が止まるんだ」


「その魔石はどこにあるんだ? 体の中か?」


「いや、床のどこかに隠しているんだ。このチェッカー模様はそのありかを隠すためのものなんだよ」


「カイルはその場所がわかるのか?」


「いやランダムで場所が変わるんだ。だから仲間に鑑定ができるヤツを入れてないとダメだ」


 この中のメンバーにそんなことができる人はいない。もしかしたらサリーが成長すればそうなったかもしれないけど、ここにいない人間を当てにしても仕方がない。


「即死魔法のことは教えてくれたのに、どうしてそんな大事なことを言わなかったんだ?」


「鑑定ができるのは冒険者編になってから出会うギルドの受付嬢なんだよ! あとめっちゃ勘のいいカンナってシーフやってる冒険者。どっちかを入れれば何とかなるんだけど、プラムが代わりに出来るからって……」


 ギルドの受付嬢と言えば、マギー(正式名称マーガレット)さんのことか! カンナも一応知り合いだし、知っていれば誘えたのに……。こんなところで攻略情報を知っていないことの弊害が!

 でもあまりに全部わかってやるだけってつまんないじゃん。大体のストーリーで流れを掴んで読み解いていくのが楽しいし、それでデッドエンドになっても本当に死ぬわけじゃないからいいかって思ってた。


「君は完全にプラム頼りだったんだな。でも魔王に誘拐されているのにどうするつもりだったんだ?」


「途中で助けられるって最初思ったんだよ! まさかここまで居所がわからないなんて思わなかったんだ」


 まぁ、誘拐したのは魔王じゃなくてアルだからな。


「それは間違えたらダメなものなのか? 途中で移動するとかさ」


「ゲームではそんなことなかった」


「では床にあるってわかっているだけ楽だな。

 みんな、手あたり次第探そう! 諦めるな!

 モカ様、エリカ様。お二方はもう少し魔王を引き付けてください」



 モカが頷いてくれたので、俺たち4人は手当たり次第に床を壊していくことにした。すると俺の脚に尻尾で叩かれる感触があった。ステルス状態のミランダだ。


(ミラ、シーフなの。さがすのてつだうの)


 そう言えば俺のスパルタダンジョン巡りの時、偵察とか鍵開けとかしてくれてたな。助かる!


(ありがとう、何となくでいいからどこかわかるかな?)


(あっち)


 今俺たちは魔王の居室の入り口に立っている。ミランダの見ている先は、俺の位置から一番遠い部屋の奥だ。そこに行くためには戦闘中(モカが一方的にボコってるだけだけど)のふたりを越えなくてはならない。行きにくい場所だが俺たちを行かせないためにわざとそうしているのかもしれない。


「みんなで同じところを探すよりも手分けしよう」


 そう言ってミランダを連れてモカたちを避けて壁際から奥へ行こうとすると、突然魔王から攻撃を受けた。近くにいたエリカが俺を抱き上げて攻撃を避けてくれる。いや助けてくれるのは有り難いが、お姫様抱っこすることないだろ! そう思ったがエリカは小さな弟として俺を見ているのでただニッコリと笑っただけだった。



「どうやら奥の方にあるみたいだぞ。目は口ほどのものを言うってこのことだな」


 目というか行動だがミランダの読みは当たっているということだ。俺はエリカに抱き上げられたまま目的の奥の壁際へ行った。床をアイリスとカイルは剣で壊していたが、俺の剣ではとても壊せそうにないので魔法をぶつけてみた。

 だが火魔法も風魔法も全然利かない。当たった感触から石というより金属のようだ。だが火魔法ではとても溶けるほどではない。


 俺を守るように側にいてくれるエリカに聞いてみた。


「リカ、この床の黒い部分だけをできるだけ冷たくすることはできる?」


「やってみるべ」


 金属は冷やすと縮む性質がある。隙間や歪みが出来れば剥がすことができるかもしれない。

 彼女は魔力を込めて黒のチェッカー床板を1枚だけ冷やし始めた。ただでさえ寒いのに側に居るだけで凍えそうだ。入ったことないけど業務用の冷凍倉庫の中にいるみたいだ。


 するとしばらくして床板の端が縮んで浮き上がっている。俺はそこに剣を差し込んで、てこの原理で持ち上げてみる。結構重いが身体強化でなんとかなった。


「ここにある?」


 俺の質問にミランダは首を横に振った。すぐさま隣の板を持ち上げる、1枚剝がれれば隣の板の隙間に剣を差し込むのは可能だ。エリーちゃんに剣を打ち直してもらってよかったよ。リアン君の宝であるフレデリカの『火焔』ではこの作業はできない。



 3枚ほど剥がしたらミランダが飛びついたので俺が代わりに掘った。ケット・シーの前足は犬のように掘るのに適していない。それに俺の獣化した姿はポメだからな。掘るのは俺の役目だ。

 ミランダの指図通りに掘り出したら、そこに赤黒く起動中の魔石があった。オドロドロしい。このまま触るのはどうにも気持ち悪い。聖属性魔法で清めて欲しい。


 だが大聖女であるモリーは魔王と戦闘中だし、チェリーはまだ入り口付近で大分離れていて頼めない。これを見つけたのが俺ではなく、カイルやアイリスなら聖剣の浄化作用で消し去れたのに……。そう思ったが俺が何とかするしかない。でも方法が思いつかない。


 仕方なくエリーちゃんにもらったハンカチで魔石を包んで掴むことにした。俺そっくりのポメラリアンの刺繍が入ったものだ。そしてこれをアイリスかカイルの元へ持って行く。こんなもの包みたくもないけど背に腹は代えられない。

 俺はハンカチ越しに魔石を掴むと、心臓がドクンと強く打った。

 ヤバい!


 だがその瞬間俺の手に押された肉球スタンプが強く発光し、掴んでいた魔石がハンカチと共に青白い炎に包まれた。火は全く熱くなく一瞬で燃え尽きた。

 どうやらこの魔石に触れると呪いに掛かるようだ。だが呪いの対象者として俺にかけようとしたとき、俺の心臓の反応に呼応してエリーちゃんの俺を守るという誓いの加護が働いたのだ。


「魔王はもう再生しない! モカ、思う存分瀕死にしてくれ」


「クマー!」


 呑気な鳴き声とともに、心話が(了解)と返ってきた。モリーの返事だ。


「カイルは止めの準備を。アイリス、チェリーはそのサポートだ」


「「「了解」」」



 俺はそのままその場に崩れ落ちた。魔力切れだ。魔石を消滅させたのはエリーちゃんの加護だが彼女自身の力が使えない分、俺の魔力がごっそり持って行かれたのだ。近くにいたミランダとエリカも崩れていたので一緒に力を与えてもらっていたのだ。


 震える手でなんとか腰にあったポーションを取り出すが栓を自力で抜けない。体に叩きつけて割りたいがそれも出来ず、手にした瓶を落として割り、その上に自分の体を何とか乗せる。無駄にした部分もあっただろうが、体にしみ込むようにポーションがじわじわ効いてくる。魔力の回復だ。


 少し体が動くようになったので、ミランダにも俺と同じポーションを渡した。エリカは精霊なのでこの世界のそこかしこにある魔素を利用できるのだが、さすがにこの部屋の魔素は魔王に完全に管理されていた。

 それでエリーちゃんの神力が籠った特別なポーション・キャンディーを渡した。これは俺がやったように割っては使えない。口の中でゆっくり溶けると食べたものに力を与えるものなのだ。俺には強すぎるので絶対に口にしてはいけないと厳命されている。これを食べたら着火したダイナマイトを飲み込んだと同じで、体が力に耐えられなくなり爆発するんだそうだ。リアン君に借りた大事な体を粗末にするなんてできるわけがない。



 人心地が付いたので魔王との戦いを確認すると、魔王は何とかモカ(&モリー)を引き離そうと一番弱いカイルを狙って魔力弾を打ち出しているが、アイリスがそれを阻止している。チェリーは滅多矢鱈に浄化魔法を打ち出しているが、あたったり外れたりしている。今まで方向転換してくれていたミランダが俺の側にいるからだ。

 それでもカイルに打ち出された魔力弾を弾いているので全く無駄ではない。


 こうしてボロボロになった魔王にあとは聖剣で止めを刺すばかりになっていた。


お読みいただきありがとうございます。

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