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それでも異世界は輪廻っている  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一部 ゲームから出られなくなった俺を助けてくれたのは、キモデブ悪役令息と犬耳幼女メイドだけでした

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第105話 魔王との戦い1


 魔王への階段は動いた玉座からするすると上へ向かっていた。幅はとても狭く、人1人がやっと通れる程度だ。太った時のアルでは詰まって動けなくなってしまう。

 俺たちがその階段を駆け登ろうとしたその時、カイルから待ったがかかった。


「待ってくれ! この階段を上がったらすぐ順に攻撃がくるんだ。相手が死ぬような即死魔法を放ってくるんだよ‼」


「即死魔法⁈」


 それでは軽率に上がることは出来ない。

 最初に上がろうとしていたのはこのパーティーのリーダーであるアイリスだが彼女が死ねばゲームオーバーだ。当然勇者であるカイルもそうだ。だからと言って俺も死にたくないし、チェリーだって幸せな結婚が待っている。


 どうしよう……前回はアルがサッサとあがって、すぐに魔王を瀕死の状態にしていた。それから俺に止めを刺させたけど、クリアにはならなかった。全然参考にならない。

 俺がそんな物思いにふけっている間、チェリーがいい質問をしてくれていた。


「カイル、あなたはどうしてそんなことを知っているの?」


「言っただろ。俺にとってはこの世界はゲームなんだって。つまりゲーム上では何度も魔王を倒しているんだ。だから即死魔法の後の行動も全部わかってる」


「それって魔王の倒し方を知っているってことだな?」


 俺の疑問にカイルは頷いたが、困ったように眉をひそめた。


「知っているけど……最初に上がるのはプラムじゃないとダメなんだ。魔王の即死魔法に対応するには『聖女の祈り』が必要なんだよ。チェリーじゃ彼女の代わりは出来ない」


「『聖女の祈り』……」


 それはカイルの言う通りだろう。チェリーが魔法陣を起動させているうちに即死魔法で死んでしまうからな。それでもこちらにはステルス状態の大聖女様がいる。

 まだ俺の首にくっついているモリーに出来るか聞いてみると、もちろんと返ってきた。ちなみにアルは聖女ではないが聖者の称号があって、同じように祈るだけで即死魔法を回避したんだそうだ。勇者だったり聖者だったり精霊術士だったり、一体いくつ称号があるんだよ!



 それで俺が一番に名乗りを上げようとすると、先にモカがクマーと鳴いて前に出てきた。


(リアン、あたし……聖女ごっこしたい!)


(聖女ごっこ?)


(あたしね、自分の庭の中だけなら魔法が使えるんだけど、外は物理と身体強化だけなんだよね。スキルがあるから何とかなるけどさ。とにかく普段は地味な訳)


 モカが地味? そんなこと思ったことないけど。魔法使わなくてもすごく強いし。彼女にはシークレットガーデンという特別な空間魔法があって、その広大な庭の中でなら無敵なのだ。でもそんなチートの力なのにあまり使えなくて持て余してる感は確かにある。


(うん。それで?)


(たまにはね、聖女ムーブかましてみたいつーか。わかるでしょ? ヒロインっぽいことしたいの! エリーや伯父さまがいたら全然できないもん)


 ああ、エリーちゃんもアルも、できる限り子どもたちに危ないことさせないからな。つまりモカはステルス状態のモリーの祈りを使って、聖女の振りをするってことだ。

 うーん、俺にとっては命懸けの真剣な戦いなんだけど、モカやモリーにとっては何度もやっている魔王戦だし……まっいいか。


「みんな、聞いてくれ。モカ様が俺たちのために、精霊として聖なる祈りの力を使ってくださるそうだ」


 みんな、ぬいぐるみのようなモフッとした小さなクマにまじまじと目を見開いていた。


「こんなに小さいのにそんなことも出来るのか……?」


「なんてこと、モカ様、誠にありがとう存じます」


「ありがとうございます!」


 カイルの懐疑的な言葉をよそに、アイリスやチェリーはすぐさまお礼を口にし、いいってことよとモカは鷹揚に頷き胸をポンと叩いていた。聖女モードとはこんな感じなのか? なんとなくもう少し清楚で穏やかでひたむきで、使命感に燃えていて……。なんかちょっと違うずっと元気すぎる気がするが、彼女がご満悦なら問題ない。



 モリーが俺の肩からモカの頭の上に飛び移り、彼女たちは階段を上がっていった。次は俺だ。これは外せない。もし何らかのことでモリーが姿を現しても俺が上がり切らなければ他の人に見られる心配がないからな。


 その後はアイリス、カイル、チェリーである。もし(万に一つもないけど)モカや俺が倒れてもアイリスが攻撃してくれるし、チェリーの魔法陣は起動するのに少々時間がかかるからだ。カイルが逃げないようにするって意味もあると思う。チェリーは彼のことを全く信用していない。


 モカが階段を上がりきり、俺も頭の先を出して目線だけ送ると床が白黒のチェッカーになっている以外は何も置かれていない広い部屋の中央に魔王が立っていた。そして禍々しい赤黒い光をモカに向かって放っていた。これが即死魔法か。

 確かに俺ではよけきれないな。ガントレットの下でエリーちゃんの肉球スタンプがわずかに光って、魔法の効果を打ち消している。どうやら即死魔法が俺の方にも少し効いているようだ。


「リアン、どうして上がらないの?」


「俺の体にも即死魔法が少々影響が出てるっぽい。アルフォンス様から頂いた護符が反応している。だからみんなはまだ上がらない方がいい」


「そんな! あなた、大丈夫なの? モカ様は?」


「俺は大丈夫だし、モカ様は絶好調で元気に動いている」


 そうなのだ。モリーは即死魔法を『聖女の祈り』でただ消し去るのではなく、浄化魔法を乗せて呪い返ししたのだ。つまり俺に即死魔法が効いたのは呪い返しの反動のせいなのだ。

 モカがてへぺろってしている。どうやらこのアイデアはモカが出したようだ。

 うん、慎重なモリーがそんな真似するとは思えない。次に上がったのが他のメンバーだったらどうすんだよ!



 スタンプの光が収まり即死魔法の効果が消えたので俺たちは階段を上り切った。そこには魔王をボコボコにするこぐまの姿があった。エリーちゃんの「モカはらんぼーなの」と言う言葉が頭をよぎる。

 いやこの魔王は魂のないシステムなのだ。ダンジョンだけはゲームと同じ仕様だからモカが危ないクマな訳ではない……と思う。


 ただどんなに攻撃しても魔王は何度も自分を蘇生する。即死魔法で瀕死になったのにすぐ復活したのだ。アルは一体どれだけ攻撃して俺に止めを刺させたのだろう?


「カイル、この後どうなるんだ」


「魔王は自動回復のスキルがあって力技だけでは倒せない。ただ魔力の源である魔石を聖属性魔法で塗り替えてしまうと自分の体と相容れないから蘇生が止まるんだ」


「その魔石はどこにあるんだ? 体の中か?」


「いや、床のどこかに隠しているんだ。このチェッカー模様はそのありかを隠すためのものなんだよ」


お読みいただきありがとうございます。

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