↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臆病・口下手・不器用と三拍子揃った俺だがこの奇妙な異世界には負けたくない  作者: Deadfool


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/188

80話 失態


 「あ」


 気がついた時には、既に俺はテーブルの上に身を乗り出していた。

 テーブルの上に並べられたジョッキや皿をひっくり返してしまったが、今はそれどころではない。

 アレキサンダーの顔と襲い掛かる金色の刃の間に自分の手を強引に捩じ込む。

 手のひらに広がる焼けるような激痛に歯を食い縛る。

 俺の手をズタズタに裂いた刃を握り込み、そのまま地面に叩き付けた。

 店の床に罅が入るが、尚も全力で抑え付ける。

 未だに意思を持ったかのように蠢く金色の刃に自分の魔力を流し込むことで、何とか支配権を自分に引き寄せようとする。

 銀色の刃が金色に変わったのを見るに、恐らくアレキサンダーが俺の話を聞いて試しに自分の魔力を送り込んだのだろう。

 しかしそれが何らかの要因で暴走した。

 であれば俺が彼女以上の魔力を流し込む事で押さえ込むしかない。

 すると金色の刃は徐々に黒く染まり、ようやくその動きを止めた。

 

 拙い


 なんとかアレキサンダーに傷を負わせる前にこいつの沈静化には成功したが、状況は最悪だ。

 『統率者』が残した手掛かりである銀色の刃。

 こいつが魔力伝導率が高い代物だと言う話をしたのは他でもないこの俺だ。

 それを聞いたアレキサンダーが試しに自らの魔力を流し込んだ結果、銀色の刃は金色に変色して彼女に襲い掛かった。

 俺が彼女を嵌めたと考えられても仕方ない条件が揃ってしまった。

 俺に彼女を殺す動機が無くとも、相手はそうは考えないだろう。

 人族の英雄である俺が魔族の第七段階冒険者である彼女の命を狙う理由など、いくらでも出てくる。

 

 クソッたれ


 思わず自らの失態を毒づく。

 潔白を証明すべく、情報提供を行ったと言うのに結果的に自らを追い込む羽目になってしまった。

 俺のやること成すこと、全てが裏目に出る。

 しかし、今はこの手のひらに伝わる激痛よりもこの状況をどう乗り切るかを考えなくては。


 「これは」

 「おいっ!」


 考えもまとまらないうちに弁明をしようとしたが、それもアレキサンダーに腕を捕まれたことによって遮られた。

 

 も(・)う(・)全(・)員(・)殺(・)し(・)て(・)『(・)境(・)界(・)の(・)森(・)』(・)奥(・)地(・)に(・)で(・)も(・)逃(・)げ(・)込(・)む(・)か(・)?(・)


 意図せず思考が良くない方向に向かう。


 「動かすな!あぁ、クソが。血が止まらねぇっ…!!」

 

 は?

 

 呆ける俺を他所にアレキサンダーは自らの腰布を裂き、それで血塗れになった俺の患部を締め付けた。


 「おい、ムラマサ!ロボ!どっちか上級のポーションは持ってねぇか!?」

 「『龍の恩恵(ドラゴンギフト)』」


 ロボがアイテムボックスを探っている間にムラマサが魔法を発動する。

 緑の光に包まれると同時にわずかに温かみのようなものを感じた。

 すると先程までの痛みが嘘のように引いていく。

 思わず固く巻き付けられた布を解き、傷口を確認するとそこには傷一つ残っていなかった。


 「わしのとっておきの回復魔法じゃ。パーティーメンバー以外に使うのは数百年ぶりかの。英雄殿、貴重な体験ができたな!」

 

 そう言ってカカカッと笑うムラマサを他の二人が信じられない物を見るような目でみていた。


 「ムラマサ、それは」

 「ロボよ、相変わらずお主は不測の事態に弱いのう!」

 

 ロボが何か言いかけたが、彼女の肩をバシバシ叩くムラマサによって遮られた。

 何か俺に聞かれると不味い話なのか?

 いささか気にはなるが助かったのは事実だ。


 「ムラマサ、助かった。アレキサンダーさんもありがとう」

 「さんも礼もいらねぇよ。気持ち悪い」

 「なに気にすることはない!わしが勝手にやったことじゃからな!!」


 アレキサンダーは吐き捨てるように、ムラマサは機嫌良さそうに言った。


 「ディアボロ様、申し訳ありません。私は何もできませんでした…」


 ロボは耳を垂れながら沈痛な面持ち浮かべている。


 「先程の怪我は俺が勝手に突っ込んでできたもの。それに原因である銀色の刃をこの場に持ち込んだのは俺だ。正体不明の『統率者』が残した得体の知れない物体を軽々しく扱った俺の失態だ。謝るのは俺の方だ」


 三人に頭を下げる。


 「俺の軽率な行動によってあわや大惨事になるところだった。本当にすまない」

 

 この言葉は本心だ。

 

 危(・)う(・)く(・)俺(・)の(・)ミ(・)ス(・)で(・)彼(・)女(・)ら(・)を(・)殺(・)し(・)か(・)け(・)た(・)の(・)だ(・)。


 「謝罪なんかいらねーよ。それよりさっきのブツの調査は魔王軍の『研究室』に任せた方がいいんじゃねーか?」

 

 アレクサンダーが鬱陶しそうに手を振る。

 まぁ、最初からそう簡単に謝罪が受け入れられるとは思っていなかったので想定内の反応ではある。

 それは仕方ないとして。


 「『研究室』?」


 聞いたことのない名前だ。

 魔王軍にそのような場所があったのか。


 「確かにモンスターについて調べるならあそこが適任でしょう。最初からそこに持ち込むべきでしたね」

 「目の前にあの『統率者』の一部が差し出されたのじゃぞ?実際に手に取り調べるなと言う方が無茶じゃろ」


 そんな場所があるならもっと早く教えてくれよ。

 そしたら俺も手探り状態で頭を悩ませずに済んだかもしれないのに。

 とは言え、その『研究室』とやらで『統率者』の謎が全て解き明かされるなんてことはないだろう。

 他人任せにせずに、俺は俺で調査を続けよう。


 「そういえばディアボロ様はまだ『研究室』とは面識がありませんでしたね?」


 ん?

 

 研究室って場所じゃないのか?


 「にしてもあの変態はなかなかくたばらんの」

 「そもそも元がくたばってるようなもんだろアレは」


 ムラマサとアレキサンダーの口から不穏な言葉が漏れる。


 「魔王軍特殊幹部『研究室』人造人間フランベルジュ。モンスターの生態系の調査や薬品、装備のメンテナンスなど魔王軍において幅広く研究を任されている、少し変わった人物です」

 

 

 


 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。