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臆病・口下手・不器用と三拍子揃った俺だがこの奇妙な異世界には負けたくない  作者: Deadfool


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78話 痕跡


 「さて、それでは場も温まってきた事じゃし、そろそろ英雄殿が戦った『統率者』について色々聞かせてもらおうかの?」

 「ムラマサ、まさか先ほどのアレが謝罪だとは言いませんよね?私がこの場を設ける前にあなたに何と言ったか、覚えていますか?」

 「言うだけ無駄だぜ。こいつが真剣に誰かに謝ってるところなんて、数百年の付き合いで見たことが無い」


 数百年て。

 いったいあなた方はおいくつなんですかね。


 「英雄様はさっきのこの馬鹿の謝罪、ご不満か?だったら納得するまで俺とロボで袋叩きにしてもいいぜ?」

 「いらん。さっきので十分だ。これ以上その件に関して、俺から掘り下げる事はない」

 「そうかよ」


 アレキサンダーが俺の返答を聞いてつまらなそうに鼻を鳴らす。

 彼女とて積極的にムラマサに俺に対する謝罪を促したい訳では無かったのだろう。

 というか絶対何かしらの理由をつけてムラマサをボコボコにしたかっただけだろ。

 よく数百年も付き合ってこられたなこいつら。


 「わしは最初から分かっておったぞ!英雄殿があのような些事にいつまでも執着するような狭量な人物ではないとな!よかったの英雄殿、今の振る舞いにわしの好感度がほんの少し上がった気がするぞ!」

 「……」

 「……」


 上機嫌で大笑いしているムラマサは楽しそうだが他の俺を含めた三人の空気はまさに氷点下である。

 ロボは顔に貼り付けたような笑みを浮かべているが同時に額には青筋が浮かんでいるし、アレキサンダーもげんなりした様子でジョッキを空にしていた。

 全体的に人付き合いが苦手な俺だが、その中でも更に苦手な相手がいる。

 

 話を聞かない奴。


 こういう手合いは自然災害のような物だと思っている。

 抵抗は無意味、ただ通り過ぎるのを待つのみ。


 「……本当に申し訳ありません」

 「謝罪は受けた。この話はそれで終わりだ」


 何故ロボが謝る。

 話が堂々巡りになるだろうが。

 彼女に悪気は無いのかもしれないがこの流れは拙い。

 このままだと俺がいつまでも帰れない。


 「もういいだろ、英雄様がいいって言ってんだからよ。さっさと本題に移ろうぜ」

 「そうじゃぞロボ、英雄殿も困っておるではないか」


 ありがとうアレキサンダー、ムラマサは少し黙れ、頼むから。


 「そう、ですね。では」


 そう言ってロボはアイテムボックスから巻物(スクロール)を一本取り出し、テーブルの上に広げる。

 それと同時に何を言われるでもなくアレキサンダーとムラマサがテーブルの上に散乱したジョッキや皿を片付けた。

 スクロールからは立体的な『統率者』の画像が現れる。

 生気を感じさせない白い肌に現実離れした美しい容姿、そして頭上に浮かぶ神々しい光輪。

 あんなもの、一度見たら忘れることはできない。

 随分鮮明な画像だがなんだこれ、俺が見たことない魔道具か?


 「これはアレクと一緒に戦っていた冒険者の一人が記録していた物です。この中で『統率者』を直接目にしていないのはムラマサだけですか?」

 「なんじゃ、わしだけ仲間外れか?」

 「来るのが遅いんだよ。のろま」

 「偉そうに、聞いたぞアレク。お主、単身で『統率者』に突っ込んでおきながらろくな傷も負わせられずに返り討ちにあったそうではないか?」

 「そこの英雄様が割り込んで来なけりゃ倒せてたっつーの」

 「ほぼ死んでましたけどね」

 「ロボ!お前はどっちの味方なんだ!!」


 だからなんでそうすぐに喧嘩を始めるんだよ。

 

 「まずは情報の共有を。まずは俺から。結論から言うと俺も『統率者』の正体は分からなかった」

 「あ?英雄様は実際あいつを倒したんだろ?何で分からねーんだよ」

 「これは単純に俺の経験が浅いだけかも知れないが、ア(・)レ(・)は今まで俺が討伐してきたモンスターたちとは異なる点が2つ」

 「何だ?」

 「その名の通り高危険度のモンスターまでも統率する能力を持つ点、そして死骸すら残さずに光の粒子となって地面へと吸い込まれていった点」

 「ふむ……」

 

 ムラマサが首をかしげる。


 「一応聞いておくが、その『統率者』とやらは実態はあったのか?」

 「あぁ、その点は間違いねぇよ。あたしもそれは確認してる」

 「であればその『光の粒子となり地面に吸い込まれた』という点も気になりますね」

 「あとは『統率者』の破損箇所を見た限りそもそも生物なのかも怪しかった」

 「破損?」

 「傷口からの流血、さらに切断面からも筋肉のような物は確認できなかった」


 破片か何かを回収できていればもっと上手く説明できるのだろうが、生憎それらも光の粒子となり地面へと消えた。


 「まるで自動人形(オートマタ)みたいじゃの」

 

 ムラマサが俺と同じ感想を口にした。

 やはり魔族からしても先ほど述べた特徴は自動人形(オートマタ)を連想させるのか。


 「はっ。自動人形(オートマタ)が肉弾戦で俺と渡り合えるわけねぇだろ」

 「特徴的には近いと言っただけじゃ戯けが」

 「あとは」


 俺はアイテムボックスから『統率者』が残した唯一の手がかりである銀色の刃の欠片をテーブルに置く。


 「なんじゃ?これは?」

 「金属片のように見えますが……」

 「『統率者』の体の一部、もしくは装備の一部だ。なぜかこれだけがあの場に消えずに残っていた」


 これが何かの手がかりになればいいのだが。


 

 

 

 



 

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