↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臆病・口下手・不器用と三拍子揃った俺だがこの奇妙な異世界には負けたくない  作者: Deadfool


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/188

64話 統率者


 「ディアボロ様、調査部隊により『境界の森』における本格的なスタンピードの発生が確認されました」


 ヴェリルから『毒蛇御殿』に呼び出された次の日の夕方、少しの間席を外していたロボが部屋に戻ると同時に口を開いた。

 彼女は部屋を出る時に来ていたメイド服から銀色の毛皮が使われた動きやすそうな軽装備に変わっていた。

 彼女のいつもと違う様子から嫌な予感はしていた。


 ようやく来たか。

 

 前回の予兆から随分間が空いていたのでこのまま来ないことを祈っていたのだが現実は甘くない。

 とはいえ俺自身も祈りはしたが、何もせずにやり過ごせるとは毛ほども思っていなかったわけだが。

 

 「すぐ出るのか」

 「そうしていただけると」


 俺は腰掛けていたソファから立ち上がり軽く体をほぐす。

 昨日、ヴェリルからサーシャの護衛依頼の成功報酬として決して少なくない額の報酬を受け取ったのでその使い道を考えていたのだが、俺にはそんなに暢気している余裕はないらしい。


 「状況は?」

 「移動しながらご説明いたします」

 

 そう言ってロボが俺を先導する。

 恐らく以前と同じ転移部屋に向かうのであろう。


 「既に先遣隊としていくつかの冒険者パーティが戦闘に参加しています。他の冒険者たちも現在行っている依頼を中断し、1度冒険者ギルドに戻り状況説明を受けてから順次現場に向かうことになっています」

 「今確認されている中で一番高危険度のモンスターは?」

 「そうですね……」


 俺の質問にロボは僅かに顔を顰める。

 俺がこの世界に召喚される前からスタンピードの脅威は回を重ねるごとに増している事は把握している。

 その傾向から行くと今回のスタンピードもあまり良い状況ではないのだろう。

 ただ、今は少しでも情報が欲しい。

 それともそこまでの状況はこちらまで伝わっていないのだろうか。


 「まだ接触したわけではありませんが、正体不明のモンスターがスタンピードのモンスター達を統率しているとの情報が挙がってきています。さらに統率されているモンスターの中には第六危険度のタイラントバジリスク、クリムゾンベアー、ヴァジュラなどが確認されています」

 「本来であれば第六危険度のモンスターを統率する事は最高危険度の第七危険度のモンスターでも不可能なはずなんだがな。正体不明と言う事はヘルへヴンは今までそのモンスターと接触した事がないということか?」


 モンスターの危険度は過去にそのモンスターと接触した人物からの情報を元に設定される。

 ただし情報の精度が重要視されるため、一定人数の接触状況がなければ危険度の設定はできない。

 あまりに接触人数が少ないとその情報に信憑性がないからだ。

 このシステムの利点は情報の精度が上がる事だが、欠点はどれほど相手が危険なモンスターであっても接触した人物が少なければ危険度の設定が行われずその危険性が周知されない事だ。

 ましてや第六、第七危険度のモンスターたちは戦闘になれば生還する事すら難しくなるため、必然的に低危険度モンスターよりも高危険度モンスターの方が詳細な情報が少ない。

 しかしそのようなモンスターでも危険度設定はされずとも情報としては残される。

 正体不明のモンスターと言う事は、接触者が今までいなかったのか、接(・)触(・)者(・)が(・)誰(・)一(・)人(・)生(・)還(・)し(・)て(・)い(・)な(・)い(・)かのどちらかだ。


 「はい、ですが高危険度のモンスターである事は間違いないかと」

 「今までスタンピードのモンスターたちが統率されていたような例はあったのか?」

 「スタンピードのモンスター自体が何者かに統率されているのではという話は今までも挙がっていました。高危険度のモンスターが他の種の高危険度のモンスターと行動を共にすることなど通常ではありえませんから」


 低危険度のモンスターであれば他の種のモンスターと行動を共にすることはあるが高危険度のモンスターは通常そんな事はしない。

 連中は他の種のモンスターと手を組まなければならないほど弱くはないからだ。


 俺にとっても未知のモンスター。

 

 事前知識があり、弱点、習性、対処法まで把握しているモンスターですら実際に相対すれば背筋が凍り、恐怖に襲われる。

 命のやり取りなど、俺のような平和な国からやって来た凡人には到底慣れることは出来ないだろう。

 既知のモンスターですらこのざまだ。

 未知のモンスターの相手など本来なら絶対に断りたいところだが俺の立場上、そうも行くまい。

 そんな事に頭を悩ませながらも俺はロボにその内心を悟られないように努める。

 いや、ロボだけではない。

 このヘルへヴンの全員、この異世界の誰に対しても俺自身が持つ『弱さ』は隠し通さねば。

 ただでさえ危うい俺の立場が更に悪化する事は目に見えている。


 「その未確認モンスターの相手を俺に任せる、と?」

 「申し訳ありませんが、そうなります……」

 

 ロボの耳がわずかに垂れる。

 彼女が何に対して気落ちしているのかは分からないが、これで俺の地獄行きが決定したわけだ。


 こんなわけの分からない場所で訳の分からないまま死んでたまるかよ。


 その考えだけが今の俺を支えている。


 「先ほどディアボロ様には未確認の相手をしていただくと申し上げましたが、魔王様曰く他のモンスターも余裕があれば遊撃のような形で戦闘に参加して欲しいとの事です」


 転移部屋の設定を行いながらロボの言った言葉を頭の中で反芻する。

 

 要するに全部やれってことだろ。


 ロボが扉を開き、そこを潜り新たな戦場へと俺は歩を進めた。

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。