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臆病・口下手・不器用と三拍子揃った俺だがこの奇妙な異世界には負けたくない  作者: Deadfool


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59話 不気味な生き物


 「ではこの村の人々が凍え、飢え死にするのを黙ってみていろと?」

 「そんなにこの村が救いたいのであれば、サーシャ様がしたいようにすれば良いではありませんか。その気になれば村の一つや二つ、救えるだけの力があなたにはあるはずです」

 「それは……」

 「商人としての立場上、情に絆される訳にはいきませんか?安心してください、あなたのその選択は正しい。であれば今回のような事もあるのだと、貴重な経験ができたと、成長の糧にする事があなたにとっての最善です」


 サーシャは先ほどからロボの言葉に反論できずにいる。

 ロボが言っている事は正論だし、ある意味サーシャがそのことを一番理解しているからこその今の状況なのだろうが。

 これで『ヴェノム商会』との間に余計な軋轢が生まれたりしたらどうするつもりなのだろうか。

 ロボが言っている事が正論だとサーシャが理解していても今の彼女は決して愉快な気分ではないだろう。

 その程度は俺にもよく見て取れる。

 相手を論破する事が目的であれば正論で捲くし立てるのもありかもしれないが、今俺たちがすべきは冷静な対話であるはずだ。

 ロボの口調自体は丁寧だがその内容は非常に攻撃的だ。

 

 いったいどうした、俺より遥かに社交的なお前がこの状況でサーシャへの対応を間違えるとはらしくない。

 しかしロボの表情はサーシャとは対照的にいつもの無表情。

 

 であれば今のこの対応もサーシャの反応を予測した上でのものなのか?


 とはいえこの流れは非常によくない。

 ロボと『ヴェノム商会』の関係は正直どうでもいいが、仮に両者が争うようなことになった際にその飛び火でやけどするのは御免だ。

 俺は不安要素は可能な限り摘み取りたい性質なんでな。


 「サーシャ様、一つお願いがあるのですが。よろしいでしょうか」

 

 俺が小声で話しかけると、全員がこちらに視線を向けてきた。

 『サーシャ様に』って言ったんだから関係ない連中はこっち見るなよ。

 ただでさえ気まずいな過去の場にいるんだからこれ以上余計なプレッシャーをかけないで貰いたい。


 「なんですの?護衛の件であれば心配せずともちゃんと再契約いたします。と言うよりそもそもあれはあなたが一方的に依頼の破棄を申し出ただけであって、私はそれを受理していませんわ」

 

 俺に不機嫌そうな顔を向けながらもサーシャ嬢は寛大な処置をとってくれる旨を伝えてくれた。

 しかしそうじゃない。

 いや、それはそれで滅茶苦茶ありがたいんだが俺が言いたい事は別件だ。

 

 「素材の買取をお願いしたい」

 「……何の素材の買取をお望みですの?」


 先ほどまでの不機嫌そうな表情から一転して、サーシャの顔はまさに熟練の商売人のような目つきで俺を射抜いてきた。

 元の世界では中学生くらいの容姿の彼女だが、まとう空気はそこいらの少女が纏うようなものではない柔らかな物ではない。

 ヴェリルの教育の賜物だろうか。


 「今この状況での商談と言う事は、もちろんそれ相応に大きな話だと思っても?」

 「あなたにとっての『大きな話』の基準は分かりかねますので何とも言えませんが、悪い話ではないと思います」

 「聞きましょう」

 「タ(・)イ(・)ラ(・)ン(・)ト(・)バ(・)ジ(・)リ(・)ス(・)ク(・)6(・)6(・)体(・)分(・)の(・)素(・)材(・)の(・)買(・)取(・)を(・)お(・)願(・)い(・)し(・)た(・)い(・)」

 

 あたりが静まり返る。

 が、俺は気にせずそのまま続ける。

 でないと周囲の空気に飲まれてしまいそうだ。


 「さすがに素材の採取よりも標的の討伐が目的だったため、希少部位への損傷もあるでしょうがそこは腐っても第六危険度のモンスター。66体もいればそれなりの量の素材は採取できると思います」

 「66、体……?」

 「ディアボロさん、まさか、あなたはあの時のタイラントバジリスクを、全部?」

 「どうやってあの大群を……」

 「いや、ハッタリに決まってる!」

 「だが彼が今、この状況でハッタリかける意味があるのか?」

 「人族が考えてる事なんか分かるわけがないだろ!?」


 先ほどまでの静寂が一変し、火がついたようにドワーフたちが騒ぎ始める。

 静かにしろよ、俺が今用があるのは目の前にいるラミアのお嬢さん唯一人だ。


 「なぜ、それを今?」

 

 さすがはヴェリルの娘、いやこの言い方は彼女に失礼だろう。

 さすがは次期ヴェノム商会代表。

 周囲の熱気に流される様子などまるで無い。

 あくまで、冷静に、俺を値踏みするような視線を送りながら訪ねてくる。


 「その素材を売って得た金を、全額この村に見舞金として送ろうと思いまして」

 

 再び場が静まり返る。

 

 「……あなた、正気ですの」

 

 先ほどと違うのは、サーシャも若干の戸惑いを見せているところ。

 まるで理解できない、自分とは別種の生物を見るような目で見つめてくる。

 

 実際、彼女たちと俺は別種の生き物だから今の彼女の対応は至極当然なわけだが。


 「はい、少なくとも自分では正気のつもりですよ」

 「ディアボロ様、一体何を」


 本気で理解できないと言った様子のロボを手で制し、サーシャとの会話に割り込ませまいとする。

 本当はこんな偉そうな真似はしたくなかったのだが、今は彼女に黙っていてもらいたかった。

 幸いな事に彼女は大人しく引き下がってくれた。

 

 ありがたい。

 

 後で何を言われても構わないが、今はそのまま大人しくしていてくれ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ロボルートに入りそう。 楽しみ。 [一言] 更新ありがとうございますですw
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