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4話 不穏な空気


 『Truth story』は最初にキャラメイクをした後、それぞれ異なる特徴を持つ六英雄の中から一つを選択し、選択した英雄として主人公がその世界に召喚されるシステムである。

 例として挙げるなら俺が選択した『黒曜の英雄』は戦況に応じて変形する鎧『エンドレスダーク』が装備として与えられ、さらに闇系統の魔力適正を与えられる。

 それぞれの装備と魔力適正に応じた素材を集めて強化したり、スキルを成長させながら冒険を進めるのがあのゲームの醍醐味だったはずだ。

 しかし気になることがある。


 「質問よろしいでしょうか」

 「許す。言ってみろ」

 「俺以外の六英雄は何人ですか?」

 「お前以外の全員。つまり五人だ」


 そんなはずがない


 召喚できるのは六英雄の中の()()()()だったはずだ。

 はっきりと覚えているわけではないが俺を召喚した神官の話によると、彼女らの魔力では六英雄のうち一人を召還するのがやっとだということ、さらに英雄を召喚するために必要な触媒である『女神の涙』は1つしかない上に召喚後に英雄の体内に取り込まれる。

 なので先代の英雄が死んだ時、体内に取り込まれた『女神の涙』が神殿に再出現したときにまた一人ずつ異世界から英雄を召喚し、その英雄が死んだらまた次の英雄をと言ったシステムだったはずだ。

 実際、俺はゲームを進める中で一度も他の英雄を見ていない。

 

 (嘘をついている、可能性は薄いか?メリットが無いように思える)

 

 それに戦いが進めばそんな嘘あっさりバレる。

 

 なら、ファンタズムにいる俺以外の六英雄は偽者……?


 分からない。

 レイラが言うには戦況が変わったのはおよそ数百年前。

 俺が召喚されてから魔王を倒すまでにかかったゲーム内での期間は分からないが、数百年間、英雄が五人もいたならとっくにヘルへヴンは滅ぼされていそうなものだが……。

 一人ずつ時間を空けて召喚したにしても数百年も持つわけが無い。

 そもそも前提として『女神の涙』が1つしか存在しない以上、複数の英雄が同時に召喚されることはありえない。

 

 (やはり偽者の線が有力か?)


 ならなぜ魔族は押されている?

 英雄以外にも戦力になる奴らはいた。

 ファンタズムの冒険者ギルドが誇る『獅子奮迅』『一刀両断』『疾風迅雷』らは確かに強力だが英雄ほどの影響を与えることはできないだろう。

 それができるならわざわざ英雄なんて召喚せず、彼女らが戦えばいいだろうし。

 俺以外の英雄が偽者だとしても戦局を変える程度には手ごわい相手だと思っていたほうがいいだろう。


 「どうした?怖気づいたか?」

 

 俺の()()から声が聞こえてきた。

 声からして俺にハルバードを向けてきたイザベラだろう。

 別にこれはイザベラが天井に張り付きながら声をかけてきたとか、そんな愉快な話では勿論ない。

 

 「儀式は魔力を注ぎ込んだ者の影響を強く受ける。魔族である我々が召喚したんだ。当然召喚されるのは魔族の英雄だと思ってたんだがなぁ?」

 「思惑が外れた訳ですか」

 「ああ、全くもってその通りだ。しかも男か。エヴァの矢を防いだあたり魔力があるのには驚いたが」

  

 そう言ってイザベラは俺の顔を覗き込む。

 赤い肌に額から伸びる巨大な一本角、その相貌はギラギラと俺を睨み付けていた。

 確か彼女はオーガの中で極稀に現れる突然変異種、ハイ・オーガだったか。

 通常のオーガより大きく、2m近くある俺よりもはるかにデカい。

 先ほどより幾分頭は冷えたようだがその瞳には強い憎しみの色が浮かんでいる。

 

 てか知らんわ。

 

 イザベラが言うように確かにこの世界では儀式に限らず、魔道具なども魔力を注いだ者の影響を強く受けることは俺も知っている。

 だが、だからと言って『魔族が魔力を注いだのだから当然、英雄召喚で魔族が召喚される』とはならんだろ。

 前例でもあるのか?

 

 「イザベラ、今回の英雄召喚。我々と同じ魔族の英雄が召喚される可能性がかなり低いことはわかっていたはず」

 「……チッ」


 エヴァの横にいたフードを被った褐色の女性が口を開いた。

 

 「それを分かった上で召喚は行われた。お前も同意したはずだ」

 「わかってるよ!」


 分かってたのかよ。

 とは言え、『理解』する事と『納得』する事はまた違う問題だからな。

 他の幹部たちの手前、同意はしたが納得はしていないと言うことか。


 「魔王様!やはりこいつは今すぐここで処分すべきです!!」

 「落ち着きなよイザベラ。我々の都合で彼を呼び出したのに『期待した魔族の英雄じゃなかったんで処分します』なんて、あまりにも横暴過ぎやしないかい?」

 「ですが相手は人族ですよ!?仮にこいつを戦力として利用できたとして、裏切らない保証がどこにあると言うんですか!?六英雄全てがファンタズム側に揃ってしまいかねない、そうなればッ……!」


 イザベラに同調する魔族も騒ぎ出す。

 本人がいる前で利用するとか言わないほうがいいぞ。

 実際俺もなかなか気分悪いし、そんなこと言ったところで余計裏切りのリスクを高めるだけだろ。


 「騒ぐな」


 レイラの一言により先ほどまで騒がしかった玉座の間が静まり返る。


 「この男の扱いは私が決める。異論は認めん」

 「……分かり、ました」


 それを聞いてイザベラはまだ何か言いたげであったがその場に跪く。

 さすがは魔王。

 その調子でしっかり手綱を握っていて欲しい。


 「ここでは騒がしい。場所を移すぞ」

 「そういうことだから、皆は元の持ち場に戻ってくれ」


 そう言ってカミーラが指を鳴らすと、レイラとカミーラ、そして俺の足元に魔方陣が浮かび上がる。

 どうやら転移魔法らしい。


 「ああ、そうだ。これから彼の扱いを決めるけど、どんな結果になってもそれは魔王様の決定だから」


 カミーラは転移する前に周囲を一瞥し、静かに微笑んだ。


 「逆らうことは決して許されない。私に()()なんて面倒なこと、させないでくれよ?」

 

 

 

 

 

 


 

 


 

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