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臆病・口下手・不器用と三拍子揃った俺だがこの奇妙な異世界には負けたくない  作者: Deadfool


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5話 その裏の意図


 転移先は執務室のような場所だった。


 「とりあえずそこにかけてくれ」

 「ディアボロ君。君は紅茶とコーヒー、どちらがいい?」

 「ではコーヒーをお願いします」


 俺が指されたソファーに腰掛けるとカミーラはメイドに飲み物を用意するように言って、俺の向かい側にレイラと並んで座った。

 相談役が主と一緒に座って良いのか?

 

「彼女は私の幼馴染だ。公の場ではある程度の体裁は保ってもらうが、このような場では必要ない」


 俺の疑問を見透かしたかのようにレイラが答えた。

 どうやらここは公の場ではないらしい。

 ならプライベートってことか。


 え?俺プライベートの中で扱い決められるの?


 正直かなり不安だが、玉座の間で晒し者みたいな扱いを受けるよりかは幾分マシかと考え直す。

 アウェーどころの話ではなかったからな。

 

 「まず、我々に敬語は不要だ。私はお前を配下にするために召喚した訳では無い」

 「は?」

 「お前が魔族の英雄であれば一番良かったが、今更そんなことを言っても仕方が無い。そもそも魔族の英雄が召喚される見込みはかなり薄かった。だから私はお前を配下ではなく『協力者』として召喚した」

 「協力者?」

 「そうだ。お前がどのような世界から来たのかは分からんが、お前は人族だ。魔族に召喚されたからと言って何の利もないのに人族に敵対はできないだろう?」

 「つまり働きに対して報酬を払うと」

 「もちろん他の配下たちにも報酬は払っている。だがお前は唯一人、魔族の中にあって人族と敵対してもらわなければならん。それなりの報酬は用意しよう」

 「その分しっかり働いてもらうけどね」


 カミーラが紅茶を味わいながら釘を刺してくる。

 気がつくと俺とレイラの前にもコーヒーが置かれていた。

 

 「では報酬の話といこう」

 「俺はまだ何もやっていないが?」

 「ああ、だがまずは魔族側に協力する報酬を決めておかないとお前もやる気が出ないだろう。それに更に目標を設定し、それが達成できればさらに報酬を追加する」

 「随分と高待遇だな」

 

 正直驚いた。

 魔族側の人族に対するヘイトは相当な物だと思われるがこの高待遇は嬉しい誤算だ。

 正直、魔道具か何かで無理やり従わせる…みたいな手法を警戒していた。

 一度はこの世界を制覇した俺だ。

 そんじょそこらの魔道具やスキル、魔法は通用しないと考えたいが…。

 今回はイレギュラーが多過ぎてあまり当てにならないかもしれない。

 それを過信して痛い目を見るのは御免だ。

 

 「ではディアボロ、お前は最初の報酬として何を望む?」

 「………」


 どうしよう。

 吹っかけ過ぎたら初っ端から相手の心象を悪くするだろうし、かといって安くこき使われるのも避けたい。

 その前にまず確認しておくか。


 「質問が」

 「許す」

 「こちらではどんな通貨を使っているのかが知りたい」

 「ああ、そこから説明しなくてはな」


 そう言うとレイラは黒い渦のような物を出現させ、そこから四枚の硬貨を取り出し、テーブルの上に置いた。

 

 「価値が高い物から白金貨、金貨、銀貨、銅貨だ。銅貨10枚で銀貨、銀貨100枚で金貨、金貨1000枚で白金貨だ。贅沢をせずに暮らせば金貨10枚でだいたい1年は食べて行ける」

 「なるほど」


 人族側の通貨と価値もデザインも同じだ。

 気になることは色々あるが今は置いておこう。


 「では、今後の俺の生活を保障してもらいたい」

 「今後、と言うのは?」

 「そのままの意味だ。俺が生活に不自由しないように一生、生活の面倒を見てもらいたい」

 「……」


 言っていて滅茶苦茶恥ずかしいが別にふざけている訳では無い。

 この世界での寿命は内包する魔力に比例する。

 なので正確には把握していないが六英雄である俺も相当な魔力を有しているため、天寿を全うするのがいつになるのかが読めない。

 一括で報酬をもらっても死ぬまでに使い切ってしまうかもしれないため継続的な収入が欲しいのだ。


 「一生面倒を見る。と言ってもお前が生活するのにどれだけの金がかかるのか判断ができない」

 「そんな贅沢をするつもりは無い。額はそちらに任せるし一括で払うよりも当面の出費は抑えられるのはそちらにとっても悪い話ではないだろう。それに」

 「それに?」

 「俺(・)が(・)死(・)ね(・)ば(・)そ(・)れ(・)以(・)降(・)の(・)出(・)費(・)は(・)な(・)い(・)」

 「……なるほど」


 この交渉で少し向こうの出方を見たい。

 ここで本当に必要最低限、もしくはそれ以下の報酬を提示されれば相当軽く見られていることになる。

 この場合、問題なのは彼女らが『相手を軽く見ている』以上に『手放すべきでない戦力に不信感を与えるほどの阿呆』だと言う事。

 まだ完全に事態を把握している訳では無いが、今の戦況はかなりよろしくない。

 それは人族嫌いな魔族が六英雄の人族に頼らざるを得ない点からも読み取れる。

 そんな状況で阿呆の下で戦うことなんてできない。

 勝ち馬に乗る性分とまではいかないが、俺は上役の無能で死ぬのは御免だ。


 「いいだろう。1年につき白金貨1枚、これでどうだ?」

 「引き受けた」


 すごい、太っ腹。

 しかし、これだけの報酬を受け取るとなるとそれ相応のプレッシャーもかかる。

  

 「まあ、彼にやってもらうことと現状を考えたら妥当かな?金庫番たちには私から話しておくよ」

 「これは前払い分だ。今後はそうだな…」


 レイラが先ほどテーブルの上に置いた白金貨を俺の前に滑らせて俺の背後に眼をやる。


 「ロボ、今後の彼の世話はお前に任せる」

 「かしこまりました。魔王様」

 「ディアボロ、彼女はメイドのロボだ。今日からお前の身の回りの世話をする。この城にお前の部屋を用意してある。何か聞きたいことがあれば彼女に聞け」

 「初めまして。これからディアボロ様の身の回りのお世話をさせて頂きます。ロボでございます」


 背後から現れたメイド服の女性が俺に向かって礼をした。

 艶のある銀髪のウルフカットから伸びる二本の耳、顔には黒い刺青のような文様があり右目が金、左目が赤のオッドアイ。

 

 ワーウルフか。


 確か、魔法はあまり得意でない代わりに凄まじい身体能力を持ったヘルへヴンでも指折りの強力な魔族だったはずだ。

 

 「ロボ、ディアボロを部屋まで案内しろ。ディアボロ、また何かあれば呼ぶ。それまで部屋で待機していろ。必要な物はロボに言え、用意させる」

 「かしこまりました」

 「わかった」

 

 そして俺はロボに先導され、その場を後にした。


 

 

 


 

 


 

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