19話 再会
「久しぶりだね」
「そうだな」
俺は今、町の冒険者ギルドの一室で以前の『吹き零れ』の際に言葉を交わしたオーガとそのパーティメンバー達と向かい合って座っている。
どうやら彼女たちは装備の新調、アイテムの補充などが他のパーティよりも早く終わったために今後もスタンピードの対応を共にするであろう俺と話がしたかったらしい。
俺もロボと町に出てから一週間ほど待機命令が出されていたのだが、この話を伝えて来たのがロボだったためにこうしてやって来た。
「お前のことはディアボロ、って呼んでもいいのか?それともディアボロ様?」
「ディアボロでいい」
「ならよろしく頼むなディアボロ。あと自己紹介がまだだったよな?あたしはオーガのレド。このパーティー、『暁の傭兵』のリーダーで重装歩兵を務めてる」
そう言って彼女はニッっと笑った。
他のメンバーは互いに顔を見合わせていたが、レドは隣に座っていた比較的軽装で金髪ショートのエルフ女性を小突く。
彼女は少しためらいを見せたが、意を決したように俺の眼を見て口を開いた。
「エルフのアーネだ。『暁の傭兵』でシーフを担当している。…ヒーラーを担当していたダイアナとは同郷だった。彼女のこと、感謝している。ありがとう」
「気にするな」
そこからは他のメンバーも順番に自己紹介をしてくれた。
「兎人のラビス。一応、狂戦士。よろしくねー」
白いロングヘアーに真っ赤な目の兎人のラビス。
「……魔人のバラン。剣士」
黒髪ストレートを後ろに結んだ魔人のバラン。
そして最後の一人、彼女の肩までかかる栗色の髪からは二本の立派な角伸びており、背が高く体格もいい。
しかし目尻は若干垂れており、気弱そうな雰囲気を醸し出している。
「ダイアナさんの代わりにヒーラーとして新たにこのパーティーに加わりました。ミノタウロスのカロア、です。精一杯、頑張ります……」
彼女が、ヒーラー?
ミノタウロスの特性上魔法の適正はそれほど高くないはずなのだが。
「そんなに緊張しなくていい。カロアは、自分ができることを確実にやってくれればいい」
「……必要以上に緊張することは無い」
「あ、ありがとうございますっ」
カロアは一週間前の『吹き零れ』から新たにパーティーに加わったという話だが、その割には随分と他のメンバーと打ち解けているように見える。
「彼女とは、パーティー加入前から顔見知りだったのか?」
「ん?ああ、カロアは最近冒険者登録をした新人で、あたしたち『暁の傭兵』が教官を務めてたんだ」
話を聞いてみると、この冒険者ギルドでは冒険者の実力を段階で評価しているそうだ。
ギルドで初めて冒険者登録したときに『第一段階』の文字が刻まれた『ライフタグ』が支給される。
依頼をこなし、その実力が評価されるとさらに『第二段階』、『第三段階』と昇級していき、最終的に『第七段階』を目指すらしい。
昇級するごとに受けられる依頼難易度の上限も報酬も上がっていくため、多くの冒険者が最高到達点である『第七段階』を目指す。
しかし現在の『第七段階』冒険者はたったの5人。
正確には把握できないほど存在する大勢の冒険者がいる中でたったの5人。
その数字から『第七段階』への道がどれほど困難なのかが容易に理解できる。
そして冒険者ギルドは新人冒険者の教育のために『第三段階』以上の冒険者に対して、教官を依頼することにしている。
一般的に
『第一段階』駆け出し冒険者
『第二段階』経験はある程度積んでいるが、まだ先輩冒険者の補助が必要な冒険者
『第三段階』必要な基礎知識、技能を修得した一人前の冒険者
『第四段階』パーティーを組まず単独での冒険が可能な冒険者
『第五段階』スタンピードなどの大規模な討伐戦への参加が許可された冒険者
『第六段階』ギルドからのみならず国からも依頼を受けることができる冒険者
『第七段階』冒険者の中の頂点で魔王軍幹部『五本指』にすら匹敵する冒険者
というように見られている。
『暁の傭兵』は全員が『第五段階』冒険者であったため、たまたまギルドで知り合った駆け出しのカロアの教官役を買って出たらしい。
だから以前から彼女らは顔見知りだったのだそうだ。
「カロアと同じようにその制度であたしたちは昔、ロボさんから手ほどきを受けてたんだ」
「そうだったのか」
「ロボさんは当時もすごかったけど、今やこのヘルへヴンにたった5人しかいない『第七段階』冒険者なんだぞ?」
『暁の傭兵』のメンバー全員が尊敬の眼差しをロボに向ける。
マジかよすごいなロボ。
そもそも彼女は冒険者だったのか?
「今は冒険者としてではなく、一人のメイドとして魔王様に御仕えする身です」
「にしてもロボさんは本当に変わりましたよね!口調だって前はもっと」
「レド?」
「す、すみません先生!」
「少し喋り過ぎる所は、まだ直っていないようですね」
怖い。
レドも先ほどまでは『ロボさん』って呼んでたのに、思わず『先生』って呼んじゃってるし。
ロボは今俺の後ろに立っているのでその表情は窺えないが、よっぽど恐ろしい表情を浮かべていたのだろう。
身長が2mを軽く超えているレドが縮み上がっていた。
にしても、ロボはもうこの時点で自分がただのメイドではない事を隠す気無いだろ。
「自己紹介が終わったのだからそろそろ本題に入ったらどうですか?」
「そうですねでは……」
レドが姿勢を正し、俺の目を見る。
これは、厄介ごとの匂いがするぞ。
「ディアボロ、しばらくあたしたちとパーティを組まないか?」
どうしよう、話の流れが全く読めない。




