表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/188

13話 カミーラ

カミーラ視点


 「借り1つ、だな」


 レイラのその呟きに私は唇を噛む。

 私の言動によって彼の不信感が増したことは確定だろう。

 

 「ごめん、レイラ。今回の件は私の責任だ…」

 「馬鹿を言うな。言ったはずだ『私たちの落ち度』だと」

 「でも」

 「……あの問いかけを投げられたのが私であったとしても、即答できなかったと思う」

 

 この執務室にディアボロを呼び出した一番の目的は、彼の働きを労う事だった。

 ロボからの報告によると彼は初めての実戦であったにもかかわらず、第五危険度のモンスターを含む大群をほぼ1人で討伐したらしい。

 急にモンスターと共に黒い渦の中に消え、戻ってきたときにはもう全て終わっていたため彼の戦い方、スキルなどの情報をロボから得られなかったのは残念だが、彼は初陣としては予想を遥かに上回る働きをしてくれた。

 あの『吹き零れ』も本来は、長期戦を覚悟して挑む物でありその中で彼の情報が少しでも得られれば、と思っていたのだが、そちらは不発に終わってしまったのだが…。


 私はそんな予想以上の働きを見せた彼を糾弾するような真似をしてしまった。

 

 最悪だ。


 いくら六英雄の召喚やスタンピードの苛烈化により余裕が無かったとは言え、そんなものは言い訳にならない。

 魔王相談役が聞いて呆れる。

 彼が言葉を濁した時点で話を切り上げ、あとは労いの言葉や追加報酬の話を済ませて彼には早く休んでもらうのが最善だと分かっていたはずなのに。

 

 欲をかいたか。


 『もしかしたら彼は、我々が知らない現状を好転させるような情報を既に握っているのではないだろうか?』


 そう思うと冷静ではいられなかった。

 そこまで彼から情報を欲していたにもかかわらず、彼の『いざと言うときにお前たち(魔族)(人族)からの情報を信じ切れるのか?』と言う問いに沈黙で答えた。

 我ながら酷く矛盾している。


 「私たちは焦り過ぎた」

 「そうだね。彼から情報を引き出すより先に、まずは信頼関係を築かないと」

 

 しかし、これは口で言うほど簡単なことではない。

 先ほどの件がなかったとしても、最初に彼に対して壁を作ったのは我々魔族だ。

 異世界からたった一人で召喚された彼を取り囲み、魔族は殺意と憎悪で迎えた。

 

 こちらの一方的な都合で召喚したにもかかわらず。

 

 彼に落ち度は一切ない。

 むしろ報酬を約束しているからとは言え、よくあれだけのことをされてまだ協力関係を保ってくれているものだ。

 

 「一番最悪の展開は、ヘルヘヴンを見限った彼にファンタズムの六英雄と合流されることだ」

 「考えたくもないね」

 「何か彼を繋ぎ止められるものが欲しい」

 「それは報酬とは別に、ってことだよね?」

 

 今後、ファンタズム側にディアボロの存在が知られれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ファンタズムがどのような条件で彼を誘うのかまでは見当が付かないが、あの国が『人族の国』である時点でヘルへヴンよりも魅力的に映るはずだ。

 だからこそ報酬以外に彼をヘルへヴンに繋ぎ止められるような『楔』が欲しい。

 しかし今のところ、そのような物は考えつかないのが現状だ。

 『実利』によってだけではなく、彼の『感情』もヘルヘブンに結び付けておきたい。


 「誰か、ディアボロ君が好みそうな女を宛がってみるのはどうだろうか?」

 「……お前は何を言っているんだ?」


 自分で言っておきながらこれはないと思う。

 1,000人に1人しか生まれない男性は女性に比べて異性への関心が非常に希薄だ。

 むしろ低いと言うより忌避してさえいる。

 男女比の差が顕著なため、大勢の女性が1人の男性に集中して大きなトラブルが頻発しており、酷い時には死人が出る場合もある程だ。

 同性愛が盛んだと言ってもその中でも「そもそも男性と接する機会がないため愛情がより身近な同性に向かった」という者が非常に多い。


 「どこの男が女を宛がわれて喜ぶんだ」

 「だよね……」

 

 女性に積極的な男性など絵物語に描かれるような空想上の生物に過ぎない。

 それ以前にこれは決して彼自身の問題ではないが、このヘルへヴンに人族である彼と恋人関係になれそうな者が居るとは考え辛い。

 このヘルへヴンには『逃したくない者は、愛と言う名の鎖で雁字搦めにしろ』なる格言も存在するが、この状況ではそれも無理だろう。

 『任務』としてなら近づけそうな者たちは居るが、彼にかかれば容易く見破られてより印象を悪くするだけで終わってしまう。

 仮に彼を心の底から愛せる魔族の女性を用意できたとして好みはどうする?

 

 『君はどんなタイプの女の子が好きなんだい?』


 とでも聞くつもりか? 

 学生の恋愛話じゃあるまいし、そんなこと聞けるわけがないだろ。

 

 考えれば考えるほど深みにはまっていく。


 「……ヘルへヴンの町並みを見せるのはどうだろうか?それで彼にこの国が守るに値する場所だと思ってもらえれば御の字だ」

 「それはいい案かもしれないけど、絶対彼にちょっかい出す馬鹿はでてくるよ?」


 私は自分のことを棚に上げる。


 「だから『見せる』と言ったんだ。確か宝物庫に『千里眼(サウザンドアイズ)』あったはずだ。それを彼に貸して町並みを見てもらう」

 「それで伝わるかな?」

 「完全に無駄にはならないはずだ。彼自身が自ら町に赴きたいと言うならそれでもいい。ただその際、変に顔を隠したりはしないほうがいいだろう」

 「『黒曜の英雄ディアボロ』を知ってる奴も居ると思うけど、特に『吹き零れ』の討伐に参加した冒険者たちから見た目が広まってるかも」

 「それでもだ。あとでバレた方が拗れて面倒なことになる。と、思う…。それも最終的には彼の判断に任せるが」


 レイラにとっても苦肉の策なのだろう。

 本来彼女は情に訴えかけるような作戦は嫌う。

 確実性に欠けるからだ。


 余裕が無いのはお互い様か。でも……


 今は打てる手は全て打ったほうがいい。


 それに


 「さすがにロボ(孤狼王)の前でそんな馬鹿な真似をする命知らずはいないだろう」


 

 

 

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ