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四十四 相応しき者③

「ーーユール様?」


 先ほどからご令嬢方に質問責めだったユール。

 突然こちらに走ってくるもんだから、びっくりする。


「はぁはぁ……、アストンが……」

「アストン?」


 ユールの護衛。

 影の様に従う彼は、今もどこかで見守っているだろう。


「…………いや、何でもないよ」

「?」


 あれか? ご令嬢方をかわすには、婚約者の横に居ろってアストンが助言した?

 だったら仕事ができる男だな、アストン。


「彼女に、なにか……言われなかったかい?」

「やはりお知り合いなのですね」


 エメラルダ嬢。

 時代が時代であれば、国の長のご令嬢。

 今は……、ユールの一族が治める国の臣下。


(ナレドは独立したいらしいし……関係性、もしかして良くない?)


 だからあんなに魔族がどうの言ってきたのか。

 それならば納得がいく。


「ああ……、彼女はーー」

「ーーユールティアス様の、元婚約者候補ですよ」

「!」


 ユールの……?

 というか、この人。


「……これはアイゼン公爵閣下、この度はご招待いただきありがとうございます」


 ウルムの父、アレム騎士団長。

 現アイゼン公爵家当主だ。


 さすが歴戦の騎士だけあり、精悍な顔つきと、屈強な体つき。

 額に走る傷が、過去の激闘を物語っている。


(ユールの……元、婚約者候補……?)


 あれか、属国が下手なことをしないようナレドの者と政略結婚的な?

 たしかに彼女の魔力は、一般より遥かに大きく、なにより澄んでいた。

 研がれた心地よい魔力というのは、それだけで素晴らしい。

 魔力を供給する意味でも、彼女が魔族の花嫁であるのは相応しいだろう。


 ……あれ? じゃあ、なんで私になったんだ?

 絶対に私である必要は、ないってこと……?


(別に? 過去がどうとか、関係ないけど!)


 断じて、ユールの過去の女性が気になる訳ではない。

 婚約がなくなったことに、政治的意図があるならば、ナレドと魔皇国の関係性というのは思っている以上によろしくないのでは?


「お久しゅうございます」

「ああ、リュミネーヴァ嬢も。息災でなにより」


 今のところ、敵意のようなものは感じない。

 彼は歴戦の戦士だ。


 きっと、敵を欺くのも上手なことだろう。


「ユールティアス様」

「……すまない、少し席を外してもよろしいか?」

「もちろんです、()()()()()催しですから」

「?」


 アストンがなにやら慌てた様子でやってきた。

 お偉いさんからの呼び出し?


「……時に、リュミネーヴァ嬢」

「なんでしょう?」


 二人きりは若干気まずい。

 この人、国のために真面目なだけで悪い人ではないんだけど……。

 ちょっと苦手なのよね。

 

「なにやら、魔法師団は魔道具の開発に忙しいとか」


 キターー!

 早速、ぶっこんでくるね?

 この様子だと、兄は外部に進捗状況をもらしてないな?


「……魔族の皆さまと、協力して取り組ませて頂いているそうです。(わたくし)も、微力ながらお手伝いが出来ればと思っております」

「なるほど。……さすが魔将。魔族に媚を売るのに、忙しいと見える」


 はあああああああ!?


(そ、そんな直球に言う!?)


 これが父や兄なら、まだ騎士団長と渡り合える地位がある。

 さすがにここまで言われることはないだろう。

 私が言い返せないのを分かって、普段のストレスをここでぶつけているに違いない。


(腹立つ~!)


 そう言われることにもだけど!

 立場がある者は、時に窮屈だ。

 勢力の相関図を考慮して、言葉を慎重に選ばなければならない。

 自分だけならいいが、自分の後ろにあるもの。

 それを背負っての発言となる。


 つまり、アイゼンの、騎士団の総意はこうだぞ。と言われたも同じ。

 

 そのことがなによりも、腹立つーー!


(かと言って、売られた喧嘩を一々買ってたらキリがない)


「ーーまぁ! 我らエレデアの者は、他国に頼らずともその力で立っていけますわ。……ですが、光の魔法ともなれば、別。……そうでございましょう?」

「……ふん」


 ここは、エレデアの誇りを尊重しつつ、魔道具の有意性を説く。

 これでいこう!


「ローゼンの者は理解に苦しむ」

「褒め言葉として、受け取っておきますわ」


 うん、……勝手な予想だが、悪い人ではない。

 ただ、自分たちの手で国を守りたい。


 つまり、ナレドのようにエレデアが魔族の属国になるのを恐れているだけなんだろうな。

 だから他国の介入を良しとしない。


(第二王子派寄り、というよりは。……ただ魔族に対して思う所があるだけ?)


 ウルムと同様。

 彼自身、苦悩しているのだろうか。


「……気を付けろ」

「え?」

「ナレドの私兵に、気を付けろ」


 ナレドの……私兵!?


「ーーそれって」

「では、楽しんでいってくれ。……失礼する」

「ちょっ」


 口下手ですか!?

 ……いや、待てよ。

 言いたいけど、()()()()


 ちょっと腹立つけど、目的が同じとはいえ、彼は他国の介入を好まない。


(つまり、魔族もあれだけど、ナレド公国が入ってきている現状も良く思っていない……?)


「……ままならないなぁ」


 むずかしい。

 

 きっと、目指す先はそう大差ないというのに。




ご覧いただきありがとうございます。


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