三十八 ガーグイル②
「あら、かわいい」
「「……かわいい?」」
王都セントエレデアより馬車を走らせ四十分ほど。
翌日は休みのため、夕方に差し掛かる時間だがガーグイルの討伐へと赴く。
とはいえ、なるべく早く終わらせたい。
問題の場所にはたしかに川が流れており、一度近くの集落で馬車をとめる。
徒歩でその源流へと向かいながら歩くと、より魔力が強まる感覚があった。
その道中。
イノシシよりは大きいものの、魔物としては小型なサイズ。
大きめのうりぼう? が出てきた。
「魔物相手はひさしぶり……ねっ!」
相手に敵意がなければスルーしようとしたが。
明らかに敵意剥き出しで、その眼は闘志に溢れ、足元は今にも駆けださんとする。
好戦的な魔物は、危険。
で、あれば。
先手必勝!
『風の矢!』
威力よりも早く繰り出すことを重視。
詠唱を破棄すれば、相手はたまらず後退して避ける。
「ちょ、リュミ。さがってーー」
「リュ、リュミネーヴァ様!?」
「逃がさないわよ!」
火属性の魔法では川を沿うように存在する木々に燃え移る。
ここは、風。もしくは。
『土の壁!』
土の魔法で、まずは退路を断つ。
鳴き声をあげ、狼狽えたところをーー。
『緑の刃!』
その大地の魔法に応えるように、隆起した土に生えていた草たちはまるで意志を持ったかのようだ。
一つ一つが、刃のように鋭利な物体となり、魔物の命を全方位から奪った。
「ーーふう」
良い運動になった。
久しぶりに色んな属性を同時に使えて、心なしか体と魔力がよろこんでいる。
「リュ……」
「?」
「リューーミーー!」
な、なんで!?
なぜかユールのご機嫌を損ねてしまった。
あれか、ユールも肩慣らししたかった?
そうだよね、普段頭を多く使うだろうから、運動不足だろうし……。
「リュミネーヴァ様」
「……アストン?」
「お力は存じております。……ですが、どうか我々にも。……守らせてください」
「……!」
そういえば。
魔物がでたら、後ろに下がってと言われたな。
いくら強くなさそうな魔物とはいえ、今は一人ではない。
……頼ってほしかった、ということだろうか?
「ご、ごめんなさい」
「いえ、差し出がましいことを申しました」
「はぁ。リュミ、貴女は守られることにもう少し慣れて欲しいものだ」
「えーーっと」
それは、権力者の妻として……?
「ユールティアス様も、言葉が違うのでは?」
「っ」
「……?」
「あーー、その。あれだ」
珍しく狼狽えるユール。
なんだ、どれなんだ。
「……私に貴女を、守らせてくれ」
「ーー!」
まっすぐに見つめられ、直球をぶつけられる。
顔が、顔があつい。
守る?
次期魔皇帝である、どう考えても守られる側のユールが?
なんで?
「まぁ、そこも……貴女の美徳なんだけれど」
真剣だった彼の表情は、またいつも通り。
少し呆れたような、でもどこか嬉しそうな。
不思議な、あたたかい感覚が私の心に芽生えるのを感じた。
ご覧いただきありがとうございます。
モチベーションになりますので、続きが気になって頂けましたら、ぜひブクマ・★評価等の応援よろしくお願いいたします!




