三十七 ガーグイル①
「久しぶりの感覚だな」
「あら」
ガーグイルの魔石はライエンや高位の者用らしい。
しかし、その身を覆う竜の鱗は火と水属性を半減させる効果を持つという。
つまり、お得な素材が豊富な魔物。
と同時に、火と水の魔法はほぼ通用しない。
それゆえ、私、ユール、アストンでガーグイルの討伐に向かう訳だが。
魔法学校では許可されていない、生徒の帯剣。
万が一に備え、ユールが剣をたずさえている。
さすが次期魔皇帝。いや、元ラスボス。
本当、さまになるな。
「リュミネーヴァ様、魔物が現れた際は、後ろにお控えください」
「ええ、ありがとうアストン」
いつもは陰ながら見守るアストンも、今日ばかりは大々的に守ってくれるらしい。
おそらくなのだが、帯剣している魔族を良く思わない者もいる。
それらに配慮して、いつも静かに見守っているのだろう。
「そういえば……」
出発前。
諜報部で依頼の詳細を聞き、今は魔法師団で魔物の位置を確認しているところだ。
「その、魔族の方は……、この国で……。なにか、不自由はございませんか?」
さすがにいきなり、「差別にあってませんか!?」とは言いづらい。
かと言って、濁しても解決に向かう訳ない。
こういうのは、いったいどう言えば正解なんだ……。
メーアスは話術の心得がありそうだから、こういうことは得意だと思うが。
「……リュミはやさしいね」
「へ?」
どこが? という疑問を口にする前に、ユールの手が頬を包む。
そんなに魔力がほしいの?
「ええと……どうぞ?」
「!? あ、いや……」
背の高いユールを見上げる形で了承の意を示せば、その手を引っ込め、更には顔を背けられた。
なんだ?
「……リュミネーヴァさまって魔性の女だよね~アストン」
「自分はなにも言いませんよ、リクヴィール様」
「?」
なんだっていうんだ。
魔力が欲しい感じ出してたから、了承しただけなのに。
違うなら違うと言って欲しい。
「……我々はね、自分の力をよく知っている。だからこそ、本当に怖いのは他人ではなく、自分なんだ」
「ユール様……」
「怖がられるのには慣れてるからね~。なにもしなくても、力がある。っていう事実だけで人は恐れるんだよ」
「そう、ですか」
当人たちがそう言うのだ。
今のところ、私にできることはそう多くない。
まして三大公爵家の一員の自分が、アイゼン公爵家や騎士団に物申すことはできない。
ならばせめて、自分だけは。
恐れよりも、敬意をもって接しよう。
その姿を多くの者に示そう。
今の自分にできることは、それくらいだ。




