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三十 最適なもの

「! なるほど」

「物理的な身を守るだけならどの属性でもよろしいと思います。ですが、魅了耐性との兼ね合いで、魔道具と魔法、そして自身との融和性を考えた時に……。精神的な意味でも身を守るとイメージしやすいのは、この身を流れる血に近い、水かと」

「たしかに、魔法とはイメージの力だからね。……特に形のない精神の魔法を防ぐには、わかりやすい」


 外側からの脅威というのは分かりやすい。

 だが、精神を侵される。

 それは非常にわかりづらいもの。

 

 で、あれば。

 人間そのものを守る、というイメージがあればいいのでは?

 この体を駆け巡る血液すべてに魔力をながし、魅了を防ぐ。


 ……という安易な考えではあるのだが。

 どうやら受け入れられそう。


「そもそも、水属性は防御や回復といった身を守る魔法に通じていますからね」

「さすがリュミだ」

「ありがとうございます」


 こういうのは専門家の方が先に思いつきそうだけど。

 魔族は強いから、身を守るというよりは、攻撃に特化した魔道具ばかり開発してきたんだろうか。


「あと、もう一つですけれど」

「「?」」

「腕輪もいいとは思うのですが、騎士の方に関しては指輪や首飾りの方がよろしいかと」

「あ~言われてみれば」


 剣を振るう時に重みがあると勝手が変わるかもしれない。

 そもそも重装備であれば、腕をとおせない。


「指輪……か」

「!」

「どうしました?」

「……いや」


 まぁ、たしかにサイズ測るの大変かもだけど。

 それに紐をとおしてペンダントにもできる。


 目立たず軽くて丈夫なもの、がいいとは思う。


「騎士の方々とは意見交換の場がなくてね、失念していたよ」

「そうでしたか……」


 やはり、ウルムの生家であるアイゼン公爵家がトップの騎士団。

 他国の人間には手を貸さないのだろう。


「……うん、水。水か。いいね。魔族にはない発想だ」


 あ、やっぱり元が強いから身を守るってこと考えないんだ。


「となると、これは別の用途につかうとして……。新たに材料を選定しようかな」

「せっかくご用意いただいたのに、申し訳ないですわ」

「いやいや! 試作品だし、それに」

「必要なものが分かれば、私とリュミで用意する。すぐに言うといい」

「助かります、ユールさまっ」


 久しぶりに腕がなる、といったところだ。

 このところ魔法学校での鍛錬の成果を試す場を探していた。

 ……さすがに学校で全力はだせない。


「あ、リュミネーヴァさま」

「はい?」

「ちょっとだけ、いいですか?」

「なにをでしょう」

「少し、お手を」

「手?」


 初めましての男性に手を差し出すのは未だに緊張する。

 だが、悪意のない純粋な申し出には体も従う。


 恐る恐る、手を差し出す。


「ちょっとばかり、失礼を」

「?」


 右手を差し出し、一本一本の指を丁寧に観察し、リクヴィール自身の指でなにやら測っている。

 あれか、魔道具に指輪を提案したから、女性用のサイズを測ってるのか。


「ふむふむ」

「おい、もういいだろう」

「ユールさま心がせまーーい」

「うるさいぞっ」


 どうやら測り終えたらしいリクヴィールは、紙にメモをとる。


「うんうん」

「もうよろしいので?」

「はい、ありがとうございますっ」


 なにやら、にっこり。というか、したり顔。

 まるでなにかを企んでいるかのようだ。


「……?」

「あーー、リュミネーヴァ様。ちょっとユールさまと材料についてお話したいので、お借りしてもいいですか?」

「え? えぇ、どうぞ?」

「私は物か……」

「ついでですので、少しこちらを見学してからお兄様と一緒に帰ろうかと思います」

「リュミ、すまないな」

「いいえ、どうぞごゆっくり」


 忙しい兄と帰れるかは未定だが、今日はユール、その後ろから遠目でアストンが見守る中、歩いてここまで来た。  

 一人で帰る! と言えば、危ないから人を手配すると言われただろう。


(忙しいのはこちらも同じ、か)


 もう少し、自分の力を役立てたいものだ。




ご覧いただきありがとうございます。


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