三十一 証【別視点】
エルドナーレ殿のところへ行くというリュミを室外まで見送って、戻る。
彼女は気が利く。
恐らく、一人で帰るといえば私たちの手を煩わせると考えただろう。
まったく、出来た女性だ。
……私には、もったいないほど。
「……ユールって」
部屋へ戻れば、そこには含みのある笑みを浮かべたリクが待つ。
気持ち悪い。
「なんだ?」
「いやーー? ベタ惚れなんだな~って」
「っうるさいぞ」
「一目惚れってほんとにあるんだな~」
こいつは昔からとぼけた様子で核心を突く。
言われなくても、そんなことは分かっている。
「リュミネーヴァさま、ぜったい自分が選ばれたの。魔力が強いから、ってだけだと思ってるじゃん」
「それは」
言い返せない。
私は魔族の感覚を、そうでない者に上手く表現する術を知らない。
「だいたい、学校で使うくらいの魔力。ちょっと休息すればすぐ回復するでしょ」
「まあな」
「リュミネーヴァさまのことダマしてるんだ~」
「違う」
違う、……のか?
本当に?
「そんでそんな自分がイヤなんでしょ~」
「……お前は、バカに見えてやはり鋭いな」
「ちょ、それって褒めてるの!?」
「そういうことにしておけ」
吸魔。
それは魔族にとって生きていくのに必要なこと。
この身に宿る闇の魔力。
それが、他の魔力を欲する行為。
「どういう説明したのか知らないけどさ。吸魔の必要性は分かってたけど、意味は知らないって感じだったね」
「……言っていない」
「えーー!? なんでーー!?」
「……何故だろう、な」
自信がないから?
それとも。
「……リュミネーヴァ様の、枷になりたくない、とか?」
「お前は本当に頭が回るな」
魔族でない者の愛情表現を知らない。
彼らからすれば、この行動はその眼にどう映るのだろうか。
「まぁまぁ、でも。オレ、すごい良いことしたでしょ?」
「そうだな、それに関しては褒めてやっていい」
「いつも褒めて!?」
「さてな」
「ひどいなーー。ピンときて咄嗟に測らせてもらったのに」
指輪。
そんなもので、彼女を。
彼女の心を繋ぎとめられるとでも……?
「でもさ、オレが吸う訳ないのにあんなことしてさ。魔族以外の男にもそうなわけ?」
「……悪いか?」
「独占欲~」
「うるさい」
闇の男神は、自身と光の女神だけを愛した。
その心というのは、魔族ではない者からすると危険だろう。
「大体さ、いくらユールの魔力が強いからって、リュミネーヴァさま以外のもらったの魔法師団の一回だけだろ?」
「エルドナーレ殿もグスタフ殿も知ってはいるだろうが……。わざわざ、リュミには言わないだろうな」
「オレが女ならそんなに愛されたらオチるって~。だって」
彼女を想うと、本能が働く。
それは、心が求めてこそ成り立つ。
闇の本質、他の魔力を奪うという機能は妬みや憎しみから。
だが、そもそもそれ以前に。
「吸魔が魔族の求愛行動だって、そんなの毎日愛してるって言われてるようなもんじゃんね~」
闇の男神は、光の女神だけを愛した。
この闇の力は、愛しいという感情にすら反応する。
一瞬にして自分の心を奪った、その姿。
愛する者を前にすると、揺らぐのだ。




