二十三 共通点
「なんと! ヘルラビットにそんな習性が!」
「であれば、みかけたら地面にも注意ですね」
「ええ。敵に背中をみせ、逃げるフリをして地面に穴をあけ誘い込む。足をとられた隙に反撃されます」
「巣穴を掘ることは確認されていたが、罠のような使い方もおぼえているのか。賢いな」
(ちょっと。……さっきまでの空気、なんだったの?)
一応、私の意志を確認した父と兄は。
心の底からという訳ではないだろうが、ユールとの婚約に了承した。
『リュミを泣かせたらどうなるか』というエルお兄様の言葉の続きが気になる。
どうなるんだ。いったい。
いったん落ち着いたとはいえ、まだまだ緊張しながらの晩餐。
そこででた話題から、この三人には意外な共通点があった。
(まぁ、魔のレ・ローゼンですからね。魔法とか魔物とかの話、そりゃ興味あるよね)
かくいう私も、将来はこの力を国防に役立てたいと考えていたほどだ。
興味がないといえば、嘘になる。
だがユールはいくら闇の魔法がつかえるとはいえ、守られる側の人間だ。
そんなに戦闘経験、豊富なんです?
「ん? あぁ、魔族はつよいからね。心配いらないよ」
「いえ、心配してたわけでは……」
「なんだ、残念」
エスパーですか?
まるで最前線で戦っているような口ぶりに、思わずユールの顔を凝視してしまった。
それに気付かれ、考えていることも大体あてられた。
「いやはや、やはり魔物の知識は魔皇国には敵いませんな」
「そんなことは。地脈の影響で、ほんの少し他国より経験があるだけですよ」
「……地脈が?」
魔物の数と関係しているの?
「魔物も時を重ねるごとに知能をつける。魔力が豊富な場所に集まるのもむりはない」
「大人しい魔物もいるんですがね、どうしても好戦的な魔物も多い」
「魔力が高い者が多い魔皇国であれば、なおさらでしょうね」
そうか。魔物が、多いのか。
私のこの力を役立てるのは、なにもエレデア王国だけではなかったのだ。
(またひとつ、ユールとの婚約に意味を見出してしまった)
「……ところで、ユールティアス様」
わざとらしく咳払いをする兄は、どこか父に遠慮している。
「その、リュミにはもう、吸魔を……?」
「ええ、すでに」
(あ)
途端。
さきほどまでの和気藹々とした雰囲気がうそのように、空気が凍てついた。
主に父グスタフの周りで。
空気を読むことに長ける給仕をしていた者たちは、我先にと次の料理を取りに行った。
いや全員で行かなくても……。
「ご心配には及びませんわ、お兄様、お父様。魔族の特性をおうかがいしたうえで、自分で決めたことです」
「リュミ……」
ええ、腹をくくりましたよ。
もう「誰が結婚なんかするかーー」なんて喚きませんよ、ええ。
魔皇国に関しては正直、想像もつかないけれど。
ただ、学生生活もあと二年はある。
この地を離れる前に、思い出をたくさん作り、自分の力を生かせる場所へ赴く。
うん、わるくない。
「父上」
「……分かっておる」
兄が取り成せば、幾分か空気が和らぐ。
まぁ、娘自身がそう言うのだ。
むしろ、婚約破棄という令嬢としての不名誉な傷を最小限に抑えてくれた人物。
彼らもユールを無下にはできないのだ。




