十 情報不足
「はああぁぁ」
「お嬢様、お疲れですね」
「まぁ、ね」
そりゃ、お疲れにもなる。
私がこの世界で欲しいのは、安寧。
攻略キャラ……、ひいては男性との接触を極力なくし。
自身の得意な魔法を生かした将来設計を立てたい。
そのために静かで有意義な学校生活を夢見た訳だが。
序盤から脆くも崩れ去っている。
なんで?
(どのタイミングで婚約破棄なのかも聞いておけば良かったな~)
ゲーマー兼オタクとしての拙い知識であれば、序盤で悪役令嬢がなにかをやらかすか、それ以上にヒロインと親密になるかで発生するのが一般的だろう。
が、私はやらかす予定もないので、ヒロイン頼みの現状。
(シンシアの行動を見てても、今のところ誰か一人に偏ってないし。それに……)
光の魔法の使い手。
その存在は稀有な訳だが、だからといって幼少から魔法について英才教育を受けている貴族の者には及ばない。
原作では真面目に自身の成長を育む姿が攻略キャラの心をうった訳だが。
どういう訳か、この世界のヒロインはやる気がない。
ウルムとペアになったあの授業も、結局ユールティアスをずっと見ていて進まなかったそうだ。
そもそもいきなり大声をあげるような子じゃなかったんだけど……。
「では、何かあればお呼びくださいませ」
「ええ、ありがとう」
帰宅後、着替えなどを手伝ってくれていたフレアが部屋をでていった。
「乙女ゲームの世界とはいえ、現実。かといって登場人物はしっかり原作通りで、一応のテンプレってものはある。……むずかしいのね」
楽に考えていた訳ではないのだが、やはりプログラムではない以上、イレギュラーというものは多々発生する。
その最たる存在、ユールティアスが目下の悩みの種だ。
「原作では在学中にセラフィニ魔皇国と開戦、ユールティアスが留学する暇なんてない……と」
エレデア王国と魔皇国の関係性は、対等にみえて実は危うい。
「そもそも魔族という存在は、魔皇国にある魔力スポット……地脈が関係していて、セラフィニは魔石の輸出国」
主に魔道具に使用される魔石は、魔力が凝固し結晶化したもの。
それゆえ、魔力が強い魔物から獲れることもあるが、基本的には地脈に近い鉱山などから見つかることが多い。
「鉱山か」
入学の一年前を思い出す。
屋敷に直接持ち込まれた任務。
あれは、魔皇国との国境近い、魔石が微量に採れる街で起きた魔物の騒ぎ。
「開戦の理由だけでも分かったらなぁ」
恐らく裏ルートも完備した世界線にいる以上、もはや攻略キャラにだけ目を光らせれば良い訳ではない。
どう考えても敵将なビジュアル、次期魔皇帝がこちら側にいるということは、相手の動きが読みづらいということだ。
それでいて、こちらの主な戦力。
シンシアや攻略キャラたちの動きは相手に筒抜け……と。
「……お兄様に聞いてみようかしら」
魔皇国の情報。
現状の我が国との関係性。
そして。
「リュミって愛称教えたの、絶対エルお兄様よね……」
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