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こちらとしては婚約破棄をご希望です!?  作者: 鈴本奈緒
第2章 ヴィンセント勇者祭までの猶予
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ドクターピートの大きなる仕事

「びっくりしたんですよぅお嬢様。足、真っ赤かですけど本当に大丈夫ですかぁ?」


 ライラはフェシリアの痛む左足首に冷やしたタオルをあてていた。

ノーフォーク公が部屋を去って10分くらいたった頃だろうか、ライラとヘンリー、そして館のメイド達が大量の冷やした水やタオルをもって、走って部屋に駆け込んできた。

随分慌てたのだろう、今見ると容器の中からこぼれた水で床がビショビショだ。


「大丈夫よ。私が怒らせてしまったのだから仕方ないわ。命をとられなかっただけでも良しとしなきゃ」

「お嬢様〜。」

 といってもかなり痛い。立ち上がれる様になるのはまだ先になりそうだ。

(ライラには心配ばかりかけてしまって申し訳ないわ。

 ノーフォーク公は決して私を許していない。館においてどう制裁をあたえるか吟味しているのだろう。でも、そうさせているのは他ならぬ私なのね…)


 ヘンリーが頭を下げ、申し訳なさそうに言った。

「フェシリア様、これは私の責任です。大変申し訳ありません。」


「ヘンリー、頭を上げてちょうだい。あなたは何も悪くないわ。主に館で起きた事を報告をするのは執事の当然の仕事だもの。私、感謝しているの。あなたの主人の顔に泥を塗った私にいつもとても良くしてくれて。ライラから聞いているのよ。いつも、朝食に私の好きなブドウやベリーを用意するように指示してくれている事も。ありがとう。」


「フェシリア様…」

 いつも冷静沈着なヘンリーも目頭が熱くなっていた。

「フェシリア様、有難きお言葉です。私、今まで正直迷いがありました。いいのだろうかと。しかし私ヘンリー、執事として公爵家に勤めて25年今、覚悟を決めました!」

「えっ何の事?」

「いえ、こちらの話です。ねぇ、ライラ」

「ヘンリー様、そうこなくちゃ!イェーイ」

「えっ?」

 何の事か全くわからないが突然ヘンリーが大きな決意を固め、ライラが大喜びしている。フェシリアは困惑した。

「あのー 何の話?」

「あっ 先程呼んだドクターが今着きました。」

 ドクターの馬車が館に着いた音が聞こえると話はそこで終わってしまった。



 ◆◆◆◆◆


「これは悪化してますなぁ」


 でっぷりと太ったドクターピートは額の汗を拭き拭きのんびり話した。

「まぁ、折れてはいません。しかし、絶対安静ですな。

 いいですな。フェシリア殿。二月(ふたつき)は絶対安静!この館で絶対安静!いいですな?」

(急に深刻な顔。私、そんなに悪いのかしら)

「分かりました。ドクターピート。私、二月(ふたつき)ここで安静にしています。」


 ドクターピートは人の良さそうな顔をにっこりさせると

「うんうん。それがいい。今日の夜は足が腫れて熱をもち、寝れないかもしれません。また2〜3日後に診に来ますから。いや〜ホッとした。良かった、良かった。」

 と言い帰って行った。


(結構悪くなっていると思うのだけど、良かった良かったって…ドクターピートは人はいいけれど少しKYなのかしら?)

 などと、フェシリアが考えていると窓の外から音が聞こえてくる。窓際から下を覗いてみると、丁度帰ろうとしているドクターピートとヘンリー、ノーフォーク公が何やら話こんでいる。


(症状の報告かしら…?)

 汗を拭きながら笑顔のドクターピート、神妙にうなずいているヘンリー、ノーフォーク公は後姿なのでこちらから表情は伺えない。すると、ノーフォーク公が振り返って2階にあるフェシリアの部屋の窓を見あげた。

瞬間、先程の恐ろしいノーフォーク公の姿が頭をよぎり、フェシリアはすぐに窓際より身をひいた。


「お嬢様〜!床がびっしょびしょです〜!」

 今頃気づいたライラが声をあげた。

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